【バイトがんばってる大学生さん向け】とっくんセンセのお金と仕事 ゆとりの学び舎 その1 「150万円の壁 VS 130万円の壁」
2025.06.10

ボードゲーム系社労士&FPの「とっくんセンセ」こと徳本です。
筆者はおひとりさまサポートの一環として、地元の大学生さんたちを中心にボードゲーム会を開いているのですが、ときどきメンバーの大学生さんからお金や仕事の相談(借金という意味でなく)を受けます。
つい先日もLINEで「聞きたいことがあるんですけど」と連絡があったので、時間の許す限りで通話で相談にのりました。
もちろん個別に相談してもらうのは大歓迎なのですが、せっかくなのでそういった相談事の中でも一般的に有益と思えるものは共有していきたいと思いまして、今回から「とっくんセンセの お金と仕事 ゆとりの学び舎」として役に立つお金の情報を発信していきたいと思います。
今回の相談者はAくん(最近就活も終わりほっとしている21歳の大学4年生)です。
「103万円の壁」って何だったの?

とっくんセンセ、就活も無事に終わったんで、バイトがんばろうって思ってるですけど、いくら稼いだら、親のフヨー外れてヤバいんでしたっけ? 親の税金が上がって迷惑かけたくないんですよ。教えてください

親御さんの税金の関係なんだね。Aくんは「150万円の壁」って聞いたことある? これは2025年(令和7年)に施行されることになってる“特定親族特別控除”っていう新しい控除のことなんだけど

「150万円の壁? トクテーシンゾク・・・」何ですかそれは?
去年は103万円を超えないようにって言われてたんですけど、最近友達に聞くと、「今年は123万円まで大丈夫」っていう人や「188万円までいける」っていう人もいて、どれが本当なのかわからなくなってるんです

制度が新設されるときって、みんなよくわからないままにあれこれ言ってくるから迷っちゃうよね。順をおって解説していくね。
まずは、Aくんのようにその年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人、まあ一般的な大学生ってイメージの人については、令和6年なら「特定扶養親族」といって、年間の合計所得金額が48万円以下の場合、その親御さんなどは63万円の扶養控除を受けることができたんだ

年収で48万円以下!? めっちゃ少ないじゃないですか。103万円でもないし・・・

いやいや、ちょと待ってね。ほんとここ結構わかりにくいよね。ここで注意が必要なのは、「年間の合計所得金額」っていうのはバイト代の「年収」とは違うってこと。ざっくりと説明するけど、「年間の合計所得金額」っていうのは、バイト代の年収から「給与所得控除」を引いた金額って思っていいよ。
で、この「給与所得控除」は令和6年だと最低保証額が55万円とされていたんだ。
なので、「年間の合計所得金額が48万円以下」というのは、「バイト代の年収-55万円≦48万円」ってことだから、この不等式を解くと「バイト代の年収≦103万円(48万円+55万円)」となる。つまり、これは「(大学生の)バイト代が103万円以下なら(親御さんなどは)扶養控除が使える」ってことで、これを「103万円の壁」って言ってたわけ。
「103万円の壁」から「123万円の壁」へ

ああ、それで「103万円」だったんですね。年収48万円かと思って、びっくりしましたよ。で、今年(令和7年)はどうなるんです?

扶養控除の関係でいえば、3つの改正に注目。
まずは、1つめの改正で、そもそもの扶養親族等の所得要件、つまり年間の合計所得の要件が、48万円から58万円にアップされたんだ。
次に2つめの改正は、給与所得控除の見直し。給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円にアップされた。
これらの2つの改正をまとめると、(大学生の親御さんなどが)扶養控除をうけるためには、令和6年では「バイト代の年収-55万円≦48万円」だったものが、令和7年では「バイト代の年収-65万円≦58万円」になったということ。

おお、10万円ずつ上がってる!
ってことは、「103万円の壁」は20万円上がって「123万円の壁」になったってことですか?

そのとおり。Aくんのお友達で「今年は123万円まで大丈夫」って言ってた人がいたと思うけど、それはこのことだと思うよ。
「150万円の壁」爆誕!

なるほど。あれ、でも、とっくんセンセは最初に「150万円の壁」って言いませんでしたっけ?

よく覚えてたね。次に「150万円の壁」について説明するね。
これは3つめの改正に関係する。それは「特定親族特別控除の創設」だ。「特定親族」というのは、「居住者と⽣計を⼀にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者、⻘⾊事業専従者として給与の⽀払を受ける⼈及び⽩⾊事業専従者を除く。)で合計所得⾦額が58万円超123万円以下の⼈」とされている。

いきなり難しくなりましたね。もう少しわかりやすく教えてください。

たしかにそうだよね。うーん、ちょっとざっくり過ぎるかもだけど、ここでは「親御さんなどに養ってもらっている大学生世代の人で、バイト代の年収が123万円を超えちゃった人(最大188万円までぎりぎり入る)」ってくらいで理解してみてはどうだろうか。

ああ、これならわかるかも。「123万円の壁」を超えてもバイト代が最大188万円以下なら親に控除があるってことなんですね。
ん、でも、まだ「150万円」って出てきてないような。

そうなんだ。でも、もうすぐ「150万円の壁」の話が出てくるからね。
この「特定親族特別控除」というのは、控除額が大学生(特定親族)の合計所得金額に応じて段階的に設定されていて、最大63万円から最小3万円まで9段階に分かれているんだよ。で、最大63万円の控除を受けるための合計所得金額は「58万円超85万円以下」とされているんだ。
この数字に給与所得控除の65万円を足してみて。

えーっと、あ、「123万円超150万円以下」! おお、やっと「150万円」が出てきた(笑)・・・で、どういう意味なんでしょう。

ポイントはね、控除額なんだ。控除額63万円って、どこかで出てこなかった? 「123万円の壁」を思い出してほしいんだけど。

63万円か・・・ん、これって「123万円の壁」のときの控除額と同じだ。
わかった。ってことは、バイト代が123万円を超えても150万円以下なら、123万円以下のときと同じ額の控除が受けられるってことですか!

そのとおり! だからこれを「150万円の壁」って言ってるんだよ。ついでに言うと、「188万円」っていうのはぎりぎり「特定親族特別控除」を受けられるバイト代ってこと。ただし、控除額は「3万円」だけど。
「150万円の壁」VS「130万円の壁」 ついに決着か!?

ありがとうございました。なぞが解決しました。150万円を目安にバイト頑張ります!

ちょっと待って。ここはおせっかいかもだけど、社労士として「130万円の壁」のことも言わせて。

また、新しい壁がでてきた(笑) 「130万円の壁」って何です?

これはね、健康保険といった社会保険の壁なんだよ。
Aくんの健康保険は何?

よくわかりませんけど、親の会社の健康保険証持ってますから、親の会社の健康保険に入ってるんでしょうかね。

そうだね。親御さんの会社の健康保険の被扶養者になってるんだと思うよ。だとしたら、現時点(2025年6月)でAくんが150万円を稼いじゃうと、親御さんの健康保険の扶養から外れないといけないかもしれないから、ここは特に気を付けてね。親御さんの健康保険の扶養から外れると、就職して自分の会社の健康保険に入るまではAくんは「国民健康保険」に加入することになって、別に国保料を払うことになるかもしれないから。

え、どういうことですか? 150万円まで大丈夫なんじゃないんですか??

150万円は「所得税」の控除を受けられるかどうかの話で、健康保険の扶養に入れるかどうかとは別問題なんだ。親御さんの健康保険の扶養に入るためには、収入が「130万円の壁」を超えてはいけない(正確には「130万円未満」でなければならない)というルールがあるんだよ。
ただし、130万円の壁を超えるのが一時的なものなのかどうかなど、一概には言えないこともあるから、これは親御さんの会社やAくんのバイト先の会社と相談した方がいいね。まあ、Aくんはこのままいけば来年(令和8年)の4月には新社会人となって、自分の会社の健康保険に入るわけだから、実際の影響は少ないとは思うけどね。

なんか変な話ですね。150万円の壁よりも130万円の壁の方が勝っちゃうなんて・・・

そうだね。そういう問題意識は指摘されていたんだよ。でね、こちらも最近のニュースなんだけど、2025年5月16日に厚生労働省から「19歳以上23歳未満の被扶養者に係る認定について(案)に関する御意見の募集について」というパブリック・コメントの案件が出されたんだ。それによると、19歳以上23歳未満の人については、2025年10月から社会保険の「130万円の壁」を「150万円の壁」に変えようという内容なんだよ。

それは熱いですね。でも、まだ正式に決まったわけではないんですか。

パブリック・コメントの締め切りは2025年6月15日0時0分とされているね。「150万円の壁」に変更されることを前提として、社労士としては状況を注視していきたいと思っているよ。
ただ、「150万円の壁」という言葉は同じでも、税金と社会保険ではそもそも制度が違う以上、適用条件も違っているので、ここは注意が必要。特に親元を離れて暮らしている学生ではない人(フリーターさんなど)の場合は仕送りの額との関係もあるから、「150万円」未満なら親の健康保険の扶養を外れないって単純な話ではない場合もあると思う。

なるほど、複雑そうな話もあるんですね。いろいろ制度が変わっているときなのに、教えてもらってありがとうございました。また相談にのってください。

うん、いつでも相談してね。若い人たちの生活に直結するお金の話は大事なことだからね。
何はともあれ、就活おわってよかったね。バイトも大変だろうけど、ボードゲーム会にも顔出してね。容赦なく負かすから(笑)

(・・・とっくんセンセ、いつも負けてるような?)は、はい、また遊びましょう!
さいごに
と、こんな感じでAくんとの相談は終わりました。
まあ、この「特定親族特別控除」に関しては、原則として、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適⽤されるとのことのようで、年末調整のあたりから本格的に動き出すのかなという感じでしょうか。
社労士としては「130万円の壁」との関係が気になるところではあります。
なお、今回はわかりやすさを重視して、かなりざっくりした表現になっていると思います。
正確な情報源として、国税庁の「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」というサイトのリンクを貼っておきますので、詳しくはこちらをご参照ください。
ここ最近、ボードゲーム会を通じて知り合った若い方(大学生さんや若手社会人さん)から、気軽に相談をしてもらえるようになってきて、個人的には嬉しく思っています。
年金や健康保険って若い人にはあまりなじみのない制度だと思うので、若い人たちへの社会保険リテラシーの普及活動を地道に続けていけたらいいなと思っています。
これにて、とっくんセンセのお金と仕事 ゆとりの学び舎 その1 「150万円の壁 VS 130万円の壁」閉講といたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
<スポンサードリンク>

ボードゲーム系社労士&FP
とっくんセンセ
(徳本 博方)
ボードゲーム系社労士&FP
50代おひとりさま予備軍
「ゆとり・つながり・まもり」の3つの「り」メイクでおひとりさまのシングルライフステージをサポート
ボードゲームで楽しく「つながり」をつくり、キャリア相談・資産形成相談と年金サポートで「ゆとり」を、成年後見で最終的な「まもり」をお届けします
- 資格
- 社会保険労務士
- ファイナンシャルプランナー(2級ファイナンシャル・プランニング技能士・AFP)
- 宅建士
- 経歴
- 一般社団法人萩長門成年後見センター事務局長(現)
- 弁護士事務所パラリーガル(勤務17年以上)
- 山口県萩市出身
- 萩高校、慶応義塾大学文学部
<スポンサードリンク>