障害厚生年金のここがありがたい!
2019.09.05
社会保険労務士が紹介する障害厚生年金のありがたい5つのポイント
オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。
社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。
今回は「障害厚生年金のここがありがたい!」というテーマで、障害厚生年金のありがたいポイントを5つご紹介したいと思います。
障害年金は、障害基礎年金(国民年金)と障害厚生年金に大きく分かれますが、弁護士の先生方や法律事務職員のみなさまとお話していると、意外とこの2つの違いを意識されていない場合があります。
障害の程度を確認した際に「厚生年金加入期間中だったらよかったのですけどね・・・」などと申し上げても、ピンとこない人もいらっしゃいます。
障害厚生年金のポイントをご紹介しながら、できるだけ障害基礎年金との異同もご説明できればと思っていますので、ご参考にしていただければ嬉しいです。
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障害厚生年金が支給されるのはどんな人?
障害厚生年金のポイントを知る前に、まず障害厚生年金はどのような人に支給されるのかを確認しておきましょう。
それは、初診日が厚生年金に加入している間にあるかどうかで判断されます。
初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。
発症した日を基準にするのではなく、初診日を基準にするという点は注意が必要です(知的障害のように生まれながらの障害の場合には出生日を初診日として取り扱う場合もありますが、原則として初めて診療を受けた日が初診日となります)。
たとえば、厚生年金に加入している人が、会社に勤めている間は何となく体調が悪いと思いつつ、忙しくて病院に行けなかったような場合で、退職後に初めて病院に行って診療を受けたという場合には、初診日が厚生年金に加入している間にないことになり、障害厚生年金の対象にならないケースも考えられます(このような場合でもすぐに諦めるのではなく、厚生年金に加入している間に何とか初診日として認めてもらえる日がないか探すことをお勧めします)。
この他にもいわゆる保険料納付要件も必要となりますが、これは障害厚生年金だけでなく障害基礎年金にも共通しています。
ありがたいポイント1 障害厚生年金には3級・障害手当金の制度がある
障害厚生年金最大の特徴は、3級と障害手当金の制度があることです。
障害厚生年金は、障害の重さによって1~3級と障害手当金に区分されています(重い方が1級)。
これに対して、障害基礎年金(国民年金)は1級と2級しかありません。
つまり、障害厚生年金の1級・2級に該当した場合には、併せて障害基礎年金の1級・2級が支給されるのですが、障害厚生年金の3級や障害手当金に該当した場合には、障害厚生年金(3級・障害手当金)だけが支給されるということです。
これは裏を返せば、障害基礎年金しか該当しない人(初診日が厚生年金の加入期間にない人)が3級や障害手当金相当の障害を負った場合には、障害年金はまったくもえらえないということを意味します。
この違いは大きいです。
たとえば、交通事故などで下肢の3大関節の1つに人工関節をそう入置換することになったような場合であれば、障害年金の等級は3級に該当するのが原則です。
そうすると、被害者が障害厚生年金に該当する人(初診日が厚生年金の加入期間にある人)であれば、3級が認定されて障害厚生年金が支給される可能性が高いのですが、障害基礎年金しか該当しない人の場合(初診日が厚生年金の加入期間にない人)には、3級では障害基礎年金が支給されないので、より重い2級以上に該当するかどうかが問題になってきます(2級以上に該当しなければ障害年金はまったくもらえないということです)。
なお、人工関節=3級というイメージが強いですが、機能障害の状態などによっては2級以上に認定される場合もありますので、諦めずにしっかりと確認されることをお勧めします。
ありがたいポイント2 障害厚生年金は初診日が65歳以上であっても可能性あり
障害厚生年金は、初診日が厚生年金に加入している間にあるかどうかで判断すると先ほど述べましたが、厚生年金は原則70歳まで加入できますので、その期間内に初診日があれば障害厚生年金を受給できる可能性があるということです。
これに対して、障害基礎年金(国民年金)の場合には、原則として、少なくとも65歳までに初診日がなければいけません(65歳以上でも国民年金に任意加入している場合や2号被保険者になっている場合には例外的に障害基礎年金の対象になる場合もありますが、このようなケースでは65歳以上の時点で老齢年金の受給期間を充たさないことが前提ですので、現実問題としてはこのような場合に障害年金の保険料納付要件をクリアできるのかはかなり厳しいところです)。
つまり、障害年金がもらえる可能性のある年齢が障害厚生年金の方が有利になっているということです。
もっとも、65歳以上の厚生年金加入期間内の初診日の場合、老齢年金の受給資格を有している人については障害基礎年金の支給はありません(つまり、この場合、1級や2級に該当しても、障害基礎年金は支給されず、障害厚生年金だけが支給されるということです)。
また、年金には1人1年金の原則がありますので、老齢基礎年金と障害厚生年金は併給できません(これに対して、例外的に障害基礎年金と老齢厚生年金は併給できます)。
ですので、このような場合には老齢基礎年金や老齢厚生年金の額と障害厚生年金の額を比べてみることになるでしょう(また、受給額だけでなく、老齢年金は課税対象ですが、障害年金は非課税なので、この点も考慮することになります)。
ありがたいポイント3 障害厚生年金には配偶者の加給年金がある
次に障害厚生年金の支給額についてみていきましょう。
支給額に関する障害厚生年金のありがたいポイントとしては、配偶者の加給年金があります。
障害厚生年金の支給額を簡単に説明すると、
【1級】(報酬比例の年金額) × 1.25 + (配偶者の加給年金額)
【2級】(報酬比例の年金額) + (配偶者の加給年金額)
【3級】(報酬比例の年金額)
のようになります。
このように、1級と2級には配偶者の加給年金が認められています(残念ながら3級にはありません)。
この配偶者の加給年金は、障害年金の受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されるものです(その配偶者が障害年金を受給している場合など一定の場合には支給停止になります)。
配偶者の加給年金の額は2019年4月現在で年額224,500円です。
これに対して、障害基礎年金(国民年金)の場合には子の加算が認められています。
ところで、この配偶者の加給年金に関して、「自分は独身だからあまり関係ない」と思われた人もいるかもしれません。
しかし、この配偶者の加給年金は、受給権取得時に対象となる配偶者がいる場合だけでなく、受給権取得後に婚姻して、新たに対象となる配偶者が生じた場合でも、手続きをすればもらえるようになります。
そのような場合には、手続き忘れのないようにご注意ください。
ありがたいポイント4 障害厚生年金には300月みなし制度がある
支給額に関する障害厚生年金のありがたいポンイントはまだあります。
それは300月みなし制度です。
前述のように、障害厚生年金の受給額は「報酬比例の年金額」が基本です(1級の場合には報酬比例の年金額は1.25倍で計算されます)。
この「報酬比例の年金額」の計算は少し複雑なので省略しますが、年金額計算の基礎とされる被保険者期間が長ければ長いほど年金の金額は多くなるのが原則です(障害認定日(原則として初診日から1年6月経過日)の属する月後の被保険者期間は年金額計算の基礎とはされません)。
逆にいえば、障害認定日の属する月までの被保険者期間が短い人の場合、それほどの金額にはならないということです。
そこで、この300月みなしが効いてきます。
これは、被保険者期間が300月未満の場合は、300月とみなして計算する制度です。
300月=25年です。
極端な例でいえば、仮に1ヶ月しか働いていなくても、その間に初診日があれば、25年間働いたものとみなして障害厚生年金の「報酬比例の年金額」を計算するということです(この場合にはもらえる金額は300倍になるということです)。
なお、障害手当金の場合には「報酬比例の年金額」の2年分が一時金として支給されます(一時金というのは、定期的・継続的にもらえる年金とは異なり、1度しかもらえないという意味です。簡単に言えば、一括払いということです)。
これに対して、障害基礎年金(国民年金)の場合には、被保険者期間に関係なく、一律の定額制です。
2019年4月現在の障害基礎年金の額は、年額で1級975,125円、2級780,100円です(対象となる子がいる場合には子の加算もあります)。
ありがたいポイント5 障害厚生年金には最低保障額制度がある
支給額に関する障害厚生年金のありがたいポンイントはさらにあります。
それは最低保障額制度です。
この最低保障額制度は障害厚生年金の受給権者が障害基礎年金(1級・2級)をもらえない場合(主に障害厚生年金3級や障害手当金の場合)に認められています。
その額は、障害基礎年金2級の3/4に相当する額とされ、2019年4月現在年額585,100円です(障害手当金の場合はその2倍の1,170,200円が最低保障額です)。
一般的に、若いころの給与や賞与は安く抑えられていることが多いので、300月みなしで計算したとしても、障害厚生年金の額が障害基礎年金2級の額の3/4にすら満たない場合もあります(若い人だけに限りませんが)。
障害基礎年金がもらえる1級や2級の人であればまだいいのですが(2019年4月現在の障害基礎年金の額は、年額で1級975,125円、2級780,100円)、そうでない人であれば障害厚生年金だけではもらえる金額が少なすぎるということもありえます。
そこで、障害基礎年金をもらえない人(主に障害厚生年金3級や障害手当金の人)に関しては、最低保障額を設けて救済をしているというわけです。
さいごに
以上「障害厚生年金のここがありがたい!」というテーマで、障害厚生年金のありがたいポイントを5つご紹介いたしました。
この他にも、障害厚生年金3級の場合には、精神障害などの場合に就労していても比較的認められやすい傾向もあり、これもありがたいポイントの1つです。
繰り返しになりますが、障害厚生年金がもらえるかどうかは、初診日が厚生年金加入期間内にあるかどうかで判断されます。
ですので、会社の健康診断で引っかかった場合や、心や体に不調を感じた場合などには、できるだけ速やかに医療機関を受診されることをお勧めします(受診時には確定的な診断が出ていなくても、後になってその日が初診日と認められることもあります)。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事がみなさまのお役に立てれば幸いです。
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