厚生年金に入っていれば障害厚生年金はもらえますか?【年金の常識12】
2020.03.01
障害厚生年金の受給について社会保険労務士が解説
オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。
社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。
第12回目の質問は、どのような場合に障害厚生年金がもらえるのかについてのものです。
障害厚生年金には障害基礎年金にはない3級があったり、最低保障額制度があったりと働く人たちにとってありがたい制度が満載されています(障害厚生年金の特徴については、こちらの記事をご参照ください)。
どのような場合に、障害厚生年金がもらえるのかは気になるところではないでしょうか?
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質問「会社員として厚生年金に入っています。先日、人工関節置換術を受けたのですが、障害厚生年金(3級)はもらえますか?」
回答:手術日に厚生年金に加入していても、必ずしも障害厚生年金の対象になるとは限りません。初診日が厚生年金の被保険者である期間(加入してる期間)であれば、障害厚生年金の対象になりえます。
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障害厚生年金がもらえるかどうかは初診日次第です。
初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。
障害厚生年金をもらうためには、少なくとも、厚生年金に加入している間に初診日がなければならないのです(他にも、障害の程度の要件や保険料納付要件などがあります)。
一般的にいうと、病気やケガは、①発症・受傷→②医師の診療→③治療(手術など)といった流れになると思います。
これらの流れのうち、障害年金で大切なのは、②医師の診療を初めて受けた日である初診日なのです。
この初診日を基準に色々なことが決まっていきます(保険料納付要件や障害認定日などが初診日を基準に決まります)。
次の(図1)をごらんください。
このケースでは、最初は学生で国民年金(第1号)に加入し、その後就職して厚生年金に加入、そして結婚後被扶養配偶者として国民年金(第3号)となり、再就職して厚生年金に加入したという年金の加入歴です(未納期間はありません)。
図1にはありませんが、手術は④から▲請求までの間に行われたとお考えください。
そして、現在は▲請求のところというイメージです。
そうすると、手術も障害年金の裁定請求も厚生年金の加入期間中に行われているので、障害厚生年金がもらえそうに思えます。
しかし、前述のように、障害厚生年金がもらえるかどうかは初診日で判断します。
だとすると、この人の初診日が②や④にあればいいのですが、仮に①や③にあった場合には、厚生年金加入期間に初診日がないため、障害厚生年金の対象外になってしまうのが原則です。
そして、人工関節置換術については、障害の程度は3級とされることが多いので(2級以上もありえなくはないのですが・・・)、初診日が②や④にあれば障害厚生年金3級が望めますが、①や③では無年金になる可能性が高いのです(国民年金の障害基礎年金には1級と2級しかないので、3級では何ももらえないのです)。
もっとも、①や③を初診日とした場合、手術までにかなりの時間を要しているので、その場合には、①や③を初診日として本当にいいのかを争ってもよいかもしれません(個別具体的な事情によりますので、一概にはいえませんが)。
この「初診日を基準とする」という考え方は客観的なのですが、ときに一般の人の常識的な感覚とずれてしまうこともありえます。
たとえば、会社勤めの間に心身に不調を感じていたものの、忙しくて病院に行けなかった人が、会社を辞めて初めて病院に行って病気が見つかったようなケースでは、障害厚生年金がもらえない可能性が高いのです。
心身の不調を感じている人が会社をお辞めになろうと考えている場合には、厚生年金に加入している間に病院に行っておかれることをおすすめいたします。
この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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