健康保険「被扶養者」について考えてみた【新社会人】

2017.04.30

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今回は、健康保険の「被扶養者」について考えてみたいと思います。

新社会人さんは、入社と当時に、会社の健康保険に加入したと思います。

病院にかかったときの医療費が3割の自己負担ですんだり、病気やケガで仕事ができずに給料がもらえない場合に傷病手当金がもらえたりするという制度です。

この健康保険では、本人(加入してる本人のことを「被保険者」といいます)の保険事故のほか、一定範囲の家族の保険事故についても保険給付が行われます。

この家族のことを「被扶養者」といいます。

主な被扶養者の範囲としては、配偶者(事実婚を含む)、両親や祖父母、子、孫、兄弟姉妹などで、本人によって生計維持をされている人です。

とてもざっくり言ってしまえば、「本人が生活費の大半を出している家族」というイメージです。

ここでは、詳しい被扶養者の範囲や認定基準については触れませんが、詳細は全国健康保険協会のホームページをご参照ください(健康保険組合の場合にはそちらで確認してください)。

本人との同居が必要かどうかや、年間収入がいくらかなど細かく設定がされています。

余談ですが、2016年9月までは、本人の兄弟姉妹のうち、兄姉は同居が必要で、弟妹は同居が不要という、なんとも不思議な要件があったのですが、10月からは、兄弟姉妹はすべて同居は不要となりましたのでご注意ください(もし、別居の兄姉に生活費を援助しているようなケースがあれば、被扶養者になるかどうか検討してもいいかもしれません)。

さて、この「被扶養者」になった場合、どういうメリットがあるのでしょう。

それは、保険料です。

最初に確認しておきたいのですが、原則として、被扶養者が増えたとしても、本人の保険料が上がることはありません(この点は、意外と誤解が多いところです)。

たとえば、妻と子、両親の4人を被扶養者にしたとしても、誰も被扶養者にしなかった場合の保険料と変わりはないのです。

この場合、もしも、本人の妻が被扶養者にならないのであれば、妻は自分で会社に勤務してその会社の健康保険に入るか、国民健康保険に入るかしないといけません(それは両親も子も同じです)。

自分で会社の健康保険に入る場合でも、国民健康保険に入る場合でも、それぞれ保険料がかかります。

その保険料を払わなくてよくなるのです。

国民健康保険料は住んでいる市区町村によって計算方法が違いますので、一概にいえないのですが、仮に1ヶ月5000円だったとすれば、1年で6万円の保険料を払わなくてよくなります(これはかなり少なく見積もったものです)。

しかも、医療費の自己負担などでは、国民健康保険と同じサービスを受けることができるのです。

また、被扶養者が配偶者の場合、国民年金の第3号被保険者(厚生年金に加入している人の配偶者で扶養されている人)となれば、国民年金保険料も払わなくてよくなります(保険料は払わなくても、将来の国民年金は全額ちゃんともらえます)。

国民年金保険料は現在1ヶ月約1万6500円ですので、1年で約19万8000円の保険料を払わなくてよくなるのです。

仮に30歳~60歳まで30年間、妻を被扶養者として、1年で25万円程度の保険料を支払わなくてよくなった場合、その総額は750万円となります。

被扶養者の経済的メリットはかなりのものです。

繰り返しますが、本人の保険料は健康保険も厚生年金もどちらも上がりません。

では、誰がその分を負担してるのだろうと素朴な疑問が出てきます。

それは、他の被保険者です。

この点については、独身者や、共働きの夫婦(夫婦とも被保険者になっている人)などの立場からは、不公平ではないのかという議論があります。

ですので、この制度がいつまで続くのかは不確実なところもあるのですが、少なくとも現状ではすぐに変更される予定はないようです。

筆者も被扶養者制度の恩恵を受けていない人の一人なのですが、個人的には「お互いさま」の精神は大切なものだと思っていますので、殊更反対するつもりはありません(ただ、利用する際は、善意の支え合いの制度であることを考えて、正しく使ってほしいとは思っています)。

このように被扶養者制度は、労働者にとってとても有難い制度ですので、使える人は有効に使っていただきたいと思っています。