ファイナンシャルプランナーが成年後見に関わる理由

2017.10.25

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

ファイナンシャルプランナーの徳本です。

今回は、ファイナンシャルプランナーが成年後見に関わる理由を、筆者の経験を通じて考えていきたいと思っています。

 

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筆者は、成年後見を専門に扱う法人の事務局を担当しています。

その法人では、弁護士と社会福祉士が協働して、財産管理と身上監護のバランスのとれた成年後見サービスを行っています。

その法人には、他にも司法書士や税理士といった専門家も参加しており、各専門家がそれぞれの得意分野で協働する体制を実現しています。

そのような専門職の中で、ファイナンシャルプランナーはどのように関わっていけるのでしょうか。

ファイナンシャルプランナーの専門分野は、お金に関することが中心になりますので、財産管理分野での活動が中心となります。

しかし、本人の生活の質を高めるための身上監護分野も、お金がなければ満足なサービスを受けることはできませんので、財産管理の適正化が身上監護の質の向上に繋がることは異論のないところだと思います。

 

では、具体的にどのようなことができるのでしょうか。

まずは、財産や家計に関する書面の作成作業があります。

成年後見制度は、家庭裁判所の監督に服しており、本人さんの財産や家計に関する事項を家庭裁判所に報告する必要があります。

たとえば、「財産目録」という書面では、本人の財産(不動産や預貯金、保険などの積極財産と債務などの消極財産)を一覧にして記載しなければなりませんし、「家計収支予定表」という書面では、毎月の平均的な家計収支を予算化して計上しなければなりません。

また、1年間の収支決算として「収支状況報告書」というものを作成し、収支の内容や金額、赤字黒字の別などを把握することもあります。

これらの書面の作成には、家計のプロとしてのファイナンシャルプランナーが活躍する場面はたくさんあります。

 

しかし、ファイナンシャルプランナーの役割はこういった書面作成作業に留まるわけではありません。

これらの書面を作成する過程で、家計の問題を正確に把握し、適切な改善策を講じることにこそ、ファイナンシャルプランナーが成年後見に関わる意義があると思っています。

特に、若い世代の障害者さんなどで、これからのライフイベントに応じたファイナンシャルプランを考えなくてはならない人の場合には、ファイナンシャルプランナーの腕の見せどころでしょう。

いわゆる「親亡きあと」と言われる問題は、できるだけ早い段階で様々な想定を行い、柔軟性のあるファイナンシャルプランを講じておく必要があります。

たとえば、これからのファイナンシャルプランに必要となる金額を算出し、親からの資産承継が必要な場合には、弁護士や税理士と協力してスキームを組む必要があります。

必要な金額がわからなければ、民事信託や遺言の内容も決められないのです。

また、成年後見制度の中でも比較的現有の判断能力が認められる「保佐」や「補助」の場合、在宅での生活を送る人も多いですので、浪費や借金にも細心の注意を払う必要があります。

取消権がある場合、その行使も適切に行わなければいけません(当法人では、この辺りは弁護士の担当分野です)。

最近の傾向では、携帯電話やスマホのゲームなどの有料サービスの使い過ぎが問題になるケースが多いように思います。

このような場合、家計管理の中でファイナンシャルプランナーとして気づいたことを、福祉や法律の専門職と共有して、早期に適切な対応をしてもらうことが大切です。

専門家協働による早期発見、早期対応で、本人さんの判断能力のサポートを行い、経済的な自立に繋げていくことができるのです。

実際に、生活保護を受けていた独り暮らしの知的障害のある人が、保佐人制度を利用したことによって、見事に自立され(生活保護も外れて)、家計も倹約に努められた結果、貯金ができるようになった例もあります。

本人さんの努力が一番ですが、弁護士や社会福祉士といった専門家のサポートなしには、この結果はなかったと思います。

 

ただ、ファイナンシャルプランナーとして、成年後見制度に一つ不満があるとすれば、後見報酬が家計に与える負担の割合が大きすぎるということです。

特に、財産も少なく、家計が収支均衡の人の場合、後見報酬をどうやっても捻出できない人もいます。

皮肉なことに、後見報酬が捻出できないことを一番理解しているのは、家計管理をチェックするファイナンシャルプランナーです。

家計の収支改善だけでは、どうにもならないことが多々あるのです。

その場合には無報酬もやむをえないという結論にならざるをえません(無報酬になったからといって、成年後見サービスの質を低下させることは絶対にありません)。

成年後見に関しては、公的な支援がほとんどないのが現状です。

不当に高額な報酬を求めることはないので、せめて実費や最低賃金相当の実動分は、どうにか公的な支援を拡充してもらえないかと思うところではあります。

 

最後は少し愚痴のようになりましたが、今回はファイナンシャルプランナーが成年後見に関わる意義について考えてみました。

前回の「社会保険労務士が成年後見に関わる理由」とともに、ご参考にしていただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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