任意特定適用事業所の申出

2018.01.10

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社会保険労務士の徳本博方です。

先日、ある事業所の健康保険・厚生年金(以下「社会保険」といいます)の任意特定適用事業所申出書の提出を行ったのですが、その際に気になったことがあったので、注意点などを書いておきたいと思います。
 

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まず始めに「任意特定適用事業所」の意味について確認しておきましょう。

平成28年9月までは、社会保険の被保険者になれたのは、原則としてフルタイムの正社員やパート・アルバイトでも1日または1週間の労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の概ね4分の3以上である人に限られていました。

これが、平成28年10月から、501人以上の被保険者のいる事業所(これを「特定適用事業所」といいます)では、所定労働時間および所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満であっても、

下記の4つの要件を全て充たす人

1. 週の所定労働時間が20時間以上あること

2. 雇用期間が1年以上見込まれること

3. 賃金の月額が8.8万円以上であること

4. 学生でないこと

については、「短時間労働者」として社会保険の被保険者になることとなりました。

さらに、平成29年4月からは、被保険者数が500人以下の事業所であっても、労使が合意のうえで申出をすれば、「任意特定適用事業所」となり、短時間労働者が社会保険の被保険者になることができるようになりました(もう少し正確にいえば、いったん任意特定適用事業所となった場合には、前記の4つの要件を充たした人は原則として被保険者にならなければなりません。各人の希望で被保険者になる人とならない人を決められるわけではないのでこの点は要注意です)。

 

余談ですが、似たような言葉で「任意適用事業所」(「特定」という文言が入っていない)というのがあります。

これは社会保険の強制適用でない事業所(たとえば、常時使用する従業員が5人未満の個人事業など)が厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けて社会保険が適用されることとなった事業所のことで、短時間労働者とは直接関係のない制度です。

 

 

話を戻しますと、今回行った手続きは、それまで役員のみが社会保険の被保険者だった法人で、1週間の所定労働時間が20時間の従業員を新たに雇うこととなったので、任意特定適用事業所の申出をするとともに、その従業員を社会保険の被保険者にするというものでした。

それというのも、その従業員は前職を辞めてその翌日にその法人に就職する予定だったのですが、前職で社会保険の被保険者だったことから、間断なく被保険者になることを要望していたからです。

そこで、本件ではこのような要望を叶えるために、従業員を雇用し、その従業員と労使合意を結び、その同意書等とともに任意特定適用事業所申出書と資格取得届を提出するという手続きを同日に行うこととしました。

なぜならば、短時間労働者が被保険者となる(資格を取得をする)ためには、その前提として、その事業所が任意特定適用事業所に該当していなければなりません。

そして、事業所が任意特定適用事業所に該当するのは、任意特定適用事業所申出書の受理日なのです。

つまり、任意特定適用事業所申出書が受理された日以降(同日でも可)でなければ、資格取得はできないというわけです。

仮に、就職日の翌日に申出書が受理されたとすれば、資格取得もその日(就職日の翌日)からとなります。

たとえば、1月10日に前の会社を退職し、翌11日に次の会社に短時間労働者として就職した場合、その会社の申出が遅れて12日に任意特定適用事業所に該当したのなら、資格取得は12日からということです。

そのようなことのないように、これらの手続きを同日にやったというわけです。

なお、同じ理由から、この手続きを郵送で行う場合にも、注意が必要です。

郵送の場合には、申出書を投函した日から受理されるまでにタイムラグが生じる可能性があるからです(年金事務所できいたところ、このようなケースでは、郵送はおすすめしないという話でした)。

本件では、任意特定適用事業所となるのと同時に短時間労働者の被保険者の資格取得も行うことができました。

 

任意特定適用事業所の申出は、短時間労働者の福利厚生を充実させることが期待される制度です。

この制度を採用する場合には、手続きのタイムスケジュールを確認したうえで適切に対応できるように注意したいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました。