毎月の給料が変わっても厚生年金保険料や健康保険料が変わらない理由
2018.03.03
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社会保険労務士の徳本博方です。
平成30年2月25日(日)、大阪市の本町で定例勉強会を開催しました。
テーマは「20代・30代シングルのための社会保険基礎知識」でした。
筆者はこういう社会保険の基礎知識をご説明する機会には、給料明細や源泉徴収票を正しく読めるようになることを目標にするのですが、その際に皆さまが厚生年金保険料や健康保険料がいつどうやって決まるのかを意外とご存じないことに気づきます。
そこで、今回は厚生年金保険料と健康保険料がいつどうやって決まるのかを簡単にご紹介したいと思います。
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現役社会人の皆さまの中にも「給料の額に比例して決まるんだろうな」と漠然と思っておられる人は少なくないのではないでしょうか(筆者も人のことは言えず、この仕事をする以前は詳しい知識はありませんでした)。
そう思っていらっしゃる人は、もしお手元に給料明細がある場合には、直近の何ヶ月分か(たとえば、12月、1月、2月支給分)を見比べてみてください。
時間外手当などで給料の額が毎月変わっていても、控除欄の厚生年金保険料と健康保険料の金額は変わっていないのではないでしょうか(それに対して、同じ控除欄でも雇用保険料や所得税の金額は増減があると思います)。
どうしてそのようになるかというと、厚生年金保険料と健康保険料の金額は、(毎月変動する可能性のある)給料の額そのものに保険料率をかけて計算するのではなく、「標準報酬月額」に保険料率をかけて計算しているからです(標準報酬月額×保険料率=保険料の金額ということです)。
そして、標準報酬月額は、いったん決まれば、毎月の給料が増減しても原則1年間(その年の9月から翌年8月まで)は変わらないというシステムになっています(保険料の計算を簡単にするためと言われています)。
では、標準報酬月額はいつ決まるのでしょうか。
まず、新入社員の場合は入社時に「資格取得時決定」を行い標準報酬月額が決まります。
そして、入社時以降の標準報酬月額は、1年に1度の「定時決定」(毎年7月1日時点で同日前3ヶ月間(4~6月)の給料の額の平均で9月以降の標準報酬月額を決めること)により決まるのが原則です(なお、定時決定の他にも、連続3ヶ月間の給料に著しい高低が生じた際や育児休業や産前産後休業が終わった際などにも標準報酬月額は改定されます)。
これは、①標準報酬月額が変わるときには、厚生年金保険料や健康保険料が変わるということを意味しています。
また、もう一つ、厚生年金保険料や健康保険料が変わる場合があります。
それは②保険料率が変わるときです。
標準報酬月額が同じでも、保険料率が変われば、保険料の金額が変わるのは当然なことです。
もっとも、一般の会社員の厚生年金に関しては、現在(労使合わせて)18.3%で保険料率が固定されていますので、②保険料率が変わるときというのは、健康保険の保険料率が変わるときということになります。
そして、協会けんぽの場合、原則毎年3月に健康保険料率の変更があります(この他にも40歳になって介護保険の被保険者になったときにも変更があります。65歳未満の人の場合、介護保険料に相当する額は健康保険料に含めて支払いますので、健康保険料が増えることになります)。
まとめると、厚生年金や健康保険は、①標準報酬月額の定時決定が反映される9月分の保険料(保険料は翌月払いなので、10月支給分の給料から控除)と、②健康保険料率が変わる3月分の保険料(4月支給分の給料から控除)の1年に2回のタイミングで変わる(それ以外では原則固定されている)ということになります(なお、ちょっとした豆知識ですが、毎年4月に子ども子育て拠出金の保険料率も変わるのですが、これは事業主さんのみが負担するものなので、会社員の皆さまの給料から控除されるものではありません)。
このように原則として固定された保険料は、毎月いくら払うかの見込みが立てやすいという利点がありますが、仮に一時的に給料が減っても、決められた保険料を支払わなくてはいけないという欠点もあります。
極端な例でいえば、保険料が免除されない個人の都合で休業した場合、仮にその月の給料が0円であっても、標準報酬月額が変わらないなら、決められた保険料は支払わなければならないということなのです(その場合は保険料分は持ち出しになることもあるでしょう)。
いわゆる日給月給制や時給制等で基本給が固定されていない給与形態の場合には、特に気を付けたいところです。
以上、厚生年金保険料と健康保険料がいつどうやって決まるのかを簡単にご紹介しつつ、給料の増減にかかわらず保険料が変化しない理由をご説明いたしました。
社会保険の正確な知識は、税金の正確な知識と同じくらい大切なことだと思います(独立起業を考えている人には特に大切なことだと思います)。
「税金も社会保険料も給料から天引きだから、あまり関心がない」という人も、少し意識して給料明細を見てみることから始めてみてはいかがでしょうか。
少し宣伝になりますが、筆者は、ときどき社会保険の無料勉強会をやっています。
今回の勉強会では、起業を目指す人の参加があったので、起業者のための社会保険の知識(個人事業の場合と会社を立ち上げた場合の違い)や、人を雇った場合の社会保険の知識(強制適用の要件や事業主負担)についても概要をご説明いたしました。
興味のある人はお気軽にお問合せいただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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