ついやってしまう「お金」の悪いクセ3選【行動ファイナンス】

2017.04.23

人は生きていくうえで、たくさんの意思決定をしています。

そして、これらの意思決定は、ほとんどの場合「お金」に関する意思決定でもあります。

大学へ進学した場合と高校を出てすぐに働いた場合のコスト(学費など)と生涯賃金を比べてみたり、家を買った場合と賃貸のままであった場合との損益計算をしたり、お金が意思決定に与える影響は大きいものです。

もちろん、お金だけが意思決定の基準ではありませんが、お金のことをまったく無視して意思決定ができないことも事実です。

なぜなら、お金は計算ができるので、とても合理的な基準になるからです。

ところが、本来、合理的であるはずのお金のことに関して、人は必ずしも合理的な意思決定ができるとは限りません。

現実には、認知上の誤りや、感情や心理が影響して、非合理的な意思決定をしてしまうことがあるのです(それが人なのだからしかたないことですが)。

このような非合理的な意思決定のバイアスのパターンを分析する「行動ファイナンス」という考え方があります。

人には「お金」に関してついやってしまう悪いクセのようなものがあるということです。

今日は、行動ファイナンスの指摘するお金に関する悪いクセを三つほど紹介してみましょう。

自分に当てはまるかどうか考えてみてください。

得するよりも、損する方がずっとイヤ

「損失回避性」というものがあります。

これは、得するよるも、損する方がずっと嫌な感じがするというものです。

たとえば、10万円の株式投資をしたとしましょう。

このとき、1万円の利益が出た場合と、5000円の損失が出た場合とを想像してみてください。

1万円の利益が出た場合の喜びの程度と、5000円の損失が出た場合の悔しさの程度は、どちらが大きいでしょうか。

5000円の損失の方がインパクトが強い気がしませんか。

客観的には10%の利益と5%の損失であれば、前者の方に強い気持ちが働いてもよさそうですが、多くの人の場合はそのようにはならないのです。

このように、利益に比べて損失を過度に嫌う心理的・感情的傾向を「損失回避性」といいます。

損失を回避するクセが強すぎるというのは、臆病になりすぎるということでもあります。

投資など「お金」の判断は慎重に行うべきですが、必要以上の臆病さが出てくるのは、人の悪いクセによるものなのかもしれません。

「朝四暮二」の落とし穴

「朝三暮四」という故事をご存じでしょうか。

昔の中国の偉い人が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという故事から、目先の違いに気をとられて、実際は同じであるのに気がつかないことを意味します。

朝三暮四も朝四暮三も結局は合計で七なのだから、言いくるめられた猿は、愚かかもしれませんが、実際には損はしていません(むしろ早めに多くの利益を確保した分、時間的な利益を得ているかもしれません)。

しかし、人には、目先の小さな利益に目を奪われ、将来の長期的な利益を逃してしまう、あるいは目先の低いコストに目を奪われ、将来の高いコストを見逃してしまうという、悪いクセがあります。

これを「現在志向バイアス」といいます。

たとえば、毎月分配型と累積投資型の投資信託があった場合、複利効果で中長期的には収益が増える可能性のある累積投資型よりも、そういった効果はないけど、毎月目に見えた形で収益がある毎月分配型の方が魅力的に感じられるってことはないでしょうか(もちろん、他の要素もあるので、毎月分配型が絶対に損をするというわけではありませんが)。

また、当面の金利は低く設定されているが、一定期間経過後に高い金利が適用されるローンの方が、長期固定型金利のローンよりも、心理的に借りやすく感じてしまうって場合もあるでしょう。

実際に合理的に計算したうえの判断なら問題はないのですが、現在志向バイアスに影響された判断になっていないか検証は必要です。

気がつけば「朝四暮二」となっていて、猿より愚かで損をする判断になっていないか、十分に気をつけたいものです。

ニセモノの「真ん中」に誘導される危険

人には、与えられた選択肢の中で中間的なものを選ぶクセがあると言われています。

「極端性の回避」と呼ばれるものです。

ハイリスク、ミドルリスク、ローリスクの三種類の金融商品を並べられると、ミドルリスクの商品を選びやすいといったことです。

不動産の物件選びでも、いい部屋だけど家賃の高い部屋、家賃も出せる範囲で部屋のグレードもまあまあの部屋、家賃は安いけどちょっと住みたくない部屋の順番で紹介された場合、たいていは2番目の部屋を選ぶのではないでしょうか。

極端なものを回避するというのは、ある意味当然なことです。

しかし、極端なものを回避した結果が、必ずしも真ん中のものになるとは限らないということには、十分な注意が必要です。

なぜなら、これらは、あくまで「与えられた選択肢」の中での相対的な評価に過ぎないからです。

悪意のある業者が、一番売りたい商品が「真ん中」にみえるように、意識的にその他の「両極端」を選んで、提示してくるということもありえるのです。

まずは、与えらえた選択肢が適正なものかを、ひとつ上のレベルで見極める注意深さが必要になってきます。

そのためには、事前の情報収集をしっかり行って、ある程度の相場勘を養っておきたいものです。

 

今回は、ついやってしまう「お金」の悪いクセを三つご紹介しました。

当てはまるものはあったでしょうか。

「無くて七癖」という言葉のとおり、行動ファイナンスでは他にもたくさんのクセが指摘されています。

まずは、クセを意識するところから始めて、少しでも合理的な意思決定ができるようにしたいものです。