アルバイトさんがよく勘違いしている労災の常識5選

2020.02.03

アルバイトさんのための労災保険の常識5選を社会保険労務士が解説

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

労災保険や障害年金といった社会保険手続を中心にお若い方をサポートしている社会保険労務士が、「アルバイトさんがよく勘違いしている労災の常識5選」を解説します。

筆者がお若い方から受ける労災保険のご相談の中から、特にアルバイトをしている人が意外と勘違いしているものを5つピックアップしてみました。
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「アルバイトだから労災保険はつかえない」は間違い

「自分は正社員ではないので、労災保険はつかえないのだと思っていました」と言われるアルバイトの人がいますが、これは間違いです。

労働者を1人でも雇用している事業所は、一部の例外(個人経営の農林水産の一部事業など)を除いてすべて労災保険の強制適用事業となります。

そして、ここでいう「労働者」とは、正社員、契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問いません。

つまり、正社員でなければ労災保険はつかえないということはなく、アルバイトであっても適用事業で働く労働者であれば労災保険はつかえるということです。

 

「個人事業だから労災保険はつかえない」は間違い

アルバイトさんが店長さんから「うちは個人経営だから労災保険には入っていないんだよ」といわれたという話をきいたことがありますが、これは間違いです。

前述のとおり、労働者を1人でも雇用している事業所は、一部の例外(個人経営の農林水産の一部事業など)を除いてすべて労災保険の強制適用事業となりますので、その事業所が会社(法人)であるか個人経営(個人事業)であるかは関係ありません。

ですので、個人事業であっても適用事業で働く労働者であれば、労災保険はつかえるということです。

もしも店長さんがそのようなことを本気で言っているとしたら、従業員が5人未満の個人事業は「厚生年金・健康保険」には入らなくてよい(任意適用である)という話と混同している可能性があります。

早急に労災保険加入の手続きをとるように勧めた方がよいでしょう(事業主にペナルティーが生じる場合もあります)。

なお、事業所の手違いで労災保険に加入していない場合(正確にいえば、保険関係成立届を提出しない場合)であっても、法律的には原則として労働者を1人でも雇った時点で労災保険関係は成立しますので、仕事上の事故などで労働者がケガをしたような場合には労災保険がつかえることになります(そのような場合には労働基準監督署へご相談されることをお勧めします)。

 

「労災保険料を給料から天引きされていないので労災保険はつかえない」は間違い

「給料明細をみたら、労災保険料が天引きされていないので、労災保険には入っていないのではないでしょうか」という疑問を持つ方がいらっしゃいますが、これは間違いです。

たしかに、毎月の給料からは、厚生年金保険料や健康保険料、雇用保険料といった社会保険料が天引きされます(アルバイトの人はどのような条件で働くかによってどの社会保険に入るかが変わってきますので、全部の社会保険料が天引きされているとは一概にはいえませんが)。

しかし、どのような働き方をしていたとしても、労災保険料が給料から天引きされることはありません。

なぜならば、労災保険料は全額が事業主負担だからです。

ですので、労災保険料が給料から天引きされていないのは当然であって(もしも天引きされているとしたら、その理由を事業主に確認してください)、「労災保険料が給料から天引きされていない=労災保険に入っていない」とはならないのです。

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「自分のミスでケガをしたので労災保険はつかえない」は間違い

「自分のうっかりミスでケガをしました。自業自得だから、労災保険はつかえないんですよね」と聞かれることがありますが、これは間違いです。

労働者に過失があったとしても、労災保険がつかえないわけではありません。

故意や重過失で労災事故を起こしたような場合には給付制限が行われることもありますが、うっかりミスレベルでは給付制限が行われることはないでしょう。

むしろ、労働者が仕事をするうえでうっかりミスはつきものですので、そのリスクに備えて労災保険があるのです。

責任感の強い人ほど「自業自得」という言葉に縛られる傾向があります。

しかし、責任感が強いかどうかの話と労災保険をつかえるかどうかというのは別の話です。

労災保険をつかってケガをしっかり治したうえで、うっかりミスについては反省してもらえればと思います。

 

「店長が許してくれないので労災保険はつかえない」は間違い

「労災保険をつかおうとしたら、店長が許可してくれないので、労災保険をつかわなかった」という話をきいたことがありますが、これは間違いです。

労災保険がつかえるかどうかを判断するのは、店長(事業主)さんではなく、政府(労働基準監督署長)です。

ですので、労災保険をつかう場合に、事業主の許可は必要ありません。

しかし、実際には労災保険をつかおうとすると、いわゆる「事業主証明」が必要になったりして、事業主の協力があった方がスムーズに手続きが行えるのも事実です。

そこで、事業主には労働者の労災保険申請手続に協力したり、必要な証明を行ったりする義務が課せられています。

なお、それでも事業主がその義務を果たさず、事業主証明を書いてくれないこともありますが、そのようなケースでは事業主証明なしでも労災保険申請が認められますので、決して労災保険をあきらめる必要はありません(労働基準監督署へご相談されることをお勧めします)。

 

さいごに

今回は、「アルバイトさんがよく勘違いしている労災の常識5選」として、労災保険について解説してみました。

労災保険は、医療費の負担がなかったり、休業した場合に休業補償として給料(給付基礎日額)の8割(特別支給金含む)が支給されたりと、労働者にとってはかなりありがたい制度です。

特にアルバイトの人の場合には、自分の国民健康保険をつかうことと比べると、そのメリットはとても大きいものです(国民健康保険なら医療費は3割負担ですし、休業した場合の傷病手当金の制度がないのが一般的です)。

そもそも論をいえば、労災保険をつかえる場合には国民健康保険はつかえないのが原則なのですが。

いずれにしても、アルバイトだからといって、適当なことを言い含められ、泣き寝入りするようなことはあってはなりません。

アルバイトであっても(いえ、アルバイトだからこそ)、適正な労災保険給付を受けられるように、正しい知識をみにつけておくべきだと思っています。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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