社会保険労務士が成年後見に関わる理由
2017.10.22
オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。
社会保険労務士の徳本です。
今回は、社会保険労務士が成年後見制度にどのように関与できるのか、筆者の経験を通じて感じたところを述べたいと思います。
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筆者は、成年後見業務を専門に扱う法人の事務局をしています。
この法人は、法律の専門家である弁護士と福祉の専門家である社会福祉士が協働して成年後見業務を行うことで、財産管理と身上監護にバランスのとれた適正な成年後見サービスを提供することを目的として活動しています。
また、サービスの幅や質をさらに向上させるべく、司法書士や税理士といった専門家も参加しており、多職種による協働を実現しています。
そのような法人で、筆者は、裏方である事務局を担当しているのです。
各専門家にはそれぞれ得意分野があります。
本人さんの生活の質を高めるために社会福祉士は司令塔として機能しますし、法律問題や虐待問題には弁護士が毅然と対応します。
また、相続による不動産の取得や不動産の任意売却では司法書士が活躍しますし、税金の問題は税理士が適切に処理をします。
では、社会保険労務士は何ができるのでしょうか。
読んで字のごとく、「社会保険」の専門家として、社会保険に関連する分野を担当できます。
前述の各専門家の扱う分野に比べると、少し地味な感じがします。
しかし、成年後見と社会保険の関連を考えると、これらはすごく深い関係があることがわかります。
まず、成年後見を利用する本人さんは、ほとんどが高齢者や障害者に該当します。
その本人さんの収入の大半は、公的年金制度により支えられています。
また、ほとんどの人は、何らかの医療や介護のサービスを受けています。
その際には、医療サービスを受けるには公的医療保険(後期高齢者医療制度や国民健康保険など)が、介護サービスを受けるには公的介護保険がそれぞれ必要になってきます。
そして、これらの保険料の支払いを適切に管理するのも成年後見人の職務です。
つまり、社会保険制度は、成年後見制度の財産管理と身上監護の両面に深く関係する制度なのです。
さらに社会保険制度は毎年のように改正が行われる複雑な面もあります。
ここに社会保険制度の専門家である社会保険労務士が関与する意義があるのです。
具体的にどのようなことをやるのかというと、たとえば、介護保険の要介護(要支援)認定の申請や更新、医療保険の「限度額適用認定証・標準負担額減額認定証」や介護保険の「負担限度額認定証」の申請や更新といった手続や、年金の裁定請求、障害年金の診断書や現況届の提出といった手続などがあります。
また、医療保険や介護保険の保険料の適正化も検討します。
たとえば、後期高齢者医療制度の被保険者である本人さんが世帯主である場合、その世帯に属する他の人(たとえば子)の国民健康保険の保険料の納付義務が本人さんに生じます(これを「擬制世帯主」といいます)。
このようなケースでは、子らの国民健康保険料を本人さんが負担するのが適切ではない場合、そうならないような方法を講じます。
また、逆に子が世帯主である場合で、その所得が本人さんの保険料の算出に影響する場合には、生活の実態を反映させるような方法を講じることもあります。
一つ一つは地味な作業なのですが、これらをするかしないかでは、本人さんの負担は大きく変わってくることでしょう。
また、社会保険制度手続のほとんどが、いわゆる申請主義をとっていますので、放っておくとサービスを受けられないまま時効にかかっていくということもあります。
社会保険手続の懈怠は、本人さんの不利益に直結するということです。
少し極端な話ですが、報道によると、平成29年1月の松江地裁の判決で、社会保険手続(障害年金の請求)を怠った成年後見人への損害賠償請求が認められたという例もあるようです。
これまで成年後見人に対する損害賠償といえば、横領や使い込みによるものが多かったのですが、社会保険手続の懈怠によるものも損害賠償の対象となるということは、成年後見人として、しっかりと肝に銘じなければならないことです。
このように損害賠償まで認められるケースは稀なのでしょうが、適正な社会保険手続が成年後見人の職務の一つであることは間違いないのですから。
このように、社会保険労務士が成年後見制度に関与する意義はあると思っています。
これは、これまで事務局として成年後見制度に関わってきた筆者の実感でもあります。
筆者としては、今後も、一見地味な作業に従事しながら、裏方として法人を支えていこうと思っています。
最後までお読みいただきありがとうごさいました。
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