自分で厚生年金保険料を計算してみよう【新社会人】

2017.04.15

新社会人の皆さま、給料から天引きされる厚生年金保険料が、どのように計算されるのかご存じでしょうか。

筆者が学生さんや若手社会人さんと行っている無料勉強会では、早い段階で、架空の給料計算をしてもらいます。

そうすると、社会人経験のある人でも、その仕組みをまったく知らないという人がとても多いことに気付きます。

考えてみれば、当たり前のことかもしれません。

普通に考えて興味があるのは「手取り金額」であって、「引かれもの」に関しては「こんなに引かれてる・・・高いな~」と見るのも嫌になるという人がほとんどだと思います(ましてや、どうやって計算するのかなんて興味がなくて当然です)。

実は、筆者も以前はその一人でした。

ただ、今はその仕組みを知ることは、「お金」と上手くつきあうために必要なことだと思っています。

「引かれもの」は、勝手に給料から引かれていくのですから、自分の努力ではどうにもならないように思えます。

いわば「最強の敵」なのです。

しかし、そのような最強の敵に対して、何ができるのかを考えることは、「お金」と上手くつきあううえで大切なことなのです。

そのためには、まず敵の正体を知らなければなりません。

そういうわけで、筆者がお金の勉強会をする際には、参加者に自分で給料計算をしてもらって、敵の正体を知ってもらっているわけです。

前置きが長くなりましたが、今回は、厚生年金保険料の計算方法を紹介したいと思います(なお、健康保険料の計算方法もほとんど同じようなものですが、都道府県や会社ごとに保険料率が異なるため、今回は全国一律の厚生年金保険料をとりあげます)。

1  まずは報酬月額を確認しましょう

最初にやる作業は「報酬月額」を計算することです。

「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当など、被保険者(=会社員)が労務の対価として受けるものすべてが対象で、金銭で支払われるもののほか、現物で支給されるものも含まれます。

基本給だけではなく、たとえば、残業代や通勤手当や住宅手当といった各種手当、通勤定期券なども含まれます。

ただ、新入社員さんの場合には、厚生年金の資格取得時(入社時)に報酬の支払い実績がないので、これから受けるであろう報酬の額を算定します。

ここでは、「報酬月額」を21万円だと仮定しておきましょう。

ところで、この「報酬月額」は原則として年に1回、4~6月の平均給与額をもとに計算し直されます(例外として、昇給・降給などで給与額が大幅に変わった場合などには、その都度計算し直されます)。

月々の給与額は残業代の増減などで毎月異なり、それをもとに一人ひとりの保険料を計算していては、事務処理がたいへんになるため、固定させるわけです。

2  次に標準報酬月額を確認しましょう

「報酬月額」が決まったら、それを基に「標準報酬月額」を確認します。

厚生年金保険の場合、「標準報酬月額」は第1~31等級に区分されていて、報酬月額に応じて、「標準報酬月額」が決まります。

たとえば、報酬月額が9万3000円未満の人の標準報酬月額(第1級)は8万8000円ですし、報酬月額が9万3000円以上10万1000円未満の人の標準報酬月額(第2級)は9万8000円です。

このように、標準報酬月額を決める報酬月額の金額には一定の幅があります(たとえば、報酬月額が9万3000円の人も、10万円の人も、標準報酬月額は同じ9万8000円になるということです)。

報酬月額21万円の人の場合、標準報酬月額(第15級)は22万円となります(第15級の報酬月額の幅は21万円以上23万円未満です)。

3  厚生年金保険料率をかけましょう

「標準報酬月額」が確認できたら、それに厚生年金保険料率をかけます。

2017年4月現在の一般の厚生年金保険料は18.182%です。

「保険料率が約2割・・・高すぎる」と心配になった人もいるかもしれません。

たしかに、この全額を社員が負担するとなったら大変です(標準報酬月額22万円の場合厚生年金保険料は4万円になります)。

そこで、厚生年金保険料の半分は会社が負担してくれることになっています(これは法律で決まっていることです)。

そのため、ここは半分の9.091%をかけることになります。

すると、22万円×9.091%=2万円(1円未満は原則四捨五入)となります。

2万円でも十分高いとは思いますが、半分会社が出してくれていると思えば、少しは気分も収まるかもしれません。

なお、正確な厚生年金保険料については、日本年金機構のホームページでご確認ください。

 

このように、実際に自分で計算してみると、その仕組みが理解できるのではないでしょうか。

「自分はサラリーマンだから、税金も社会保険料も勝手に引かれるもの。これはどうしようもない」と思い込んではいけません。

最強の敵の正体を知ることで、その対応ができるかもしれないのです。

それは、また別に機会にご紹介できればと思っています。