住民税非課税世帯から課税世帯になる場合の注意点(その1)
2020.01.04
どのような場合に住民税非課税世帯から課税世帯になるのか
オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。
社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。
今回は成年後見業務をやっているとときどき生じる「住民税非課税世帯から課税世帯になった場合の社会保険の負担の変化」について、3回にわけてお話ししていこうと思います。
筆者の経験上、住民税課税世帯への変更に伴う社会保険負担の変化は、家計の収支予定が大幅に変わるので、一気に家計が赤字に転落するという事態も少なくありません。
特に本人さんが医療機関へ入院中や介護施設に入所中の場合には、数万円単位で家計収支が変わってしまいます。
そこで、2020年が始まって、2019年の所得が確定しかつ申告前のこの時期に、①どのような場合に非課税世帯が課税世帯になるのか、②社会保険の負担がどのように変化するのか、③対策はあるのかをまとめていこうと思います。
第1回目の今回は、筆者の経験から①どのような場合に非課税世帯が課税世帯になるのかの具体的な例をあげていきたいたいと思います。
なお、この記事は投稿日(2020年1月4日)現在の情報に基づいて執筆されています(2019年度の情報が入っています)。
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住民税非課税世帯ってなに?
まずは、住民税非課税世帯とは何かについて簡単にご説明しておきます。
一般に、個人の住民税は市民税と県民税を合わせたものをいい、その内容は「均等割」と「所得割」に分かれます。
そして、住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税の均等割も所得割も非課税である状態のことです。
つまり、世帯の中に住民税の均等割や所得割を払っている人が誰もいない世帯のことを住民税非課税世帯といいます。
では、どのような人が住民税の均等割と所得割が非課税になるのでしょうか。
筆者の住んでいる萩市(生活保護基準の級地区分3級地)の場合には、具体的にいうと、
- 均等割も所得割もかからない人
- 生活保護法の規定による生活扶助を受けている人
- 障害者、未成年者、寡婦または寡夫で前年中の合計所得金額が125万円以下の人
- 均等割のかからない人=前年中の合計所得金額が次の算式で求めた額以下の人
- 控除対象配偶者及び扶養親族がいない人・・・28万円(1級地:35万円、2級地:31万5千円)
- 控除対象配偶者及び扶養親族がいる人・・・28万円(1級地:35万円、2級地:31万5千円)×(控除対象配偶者+扶養親族+1)+16万8千円(1級地:21万円、2級地:18万9千円)
- 所得割のかからない人=前年中の総所得金額等の合計額が次の算式で求めた額以下の人
- 控除対象配偶者及び扶養親族がいない人・・・35万円
- 控除対象配偶者及び扶養親族がいる人・・・35万円×(控除対象配偶者+扶養親族+1)+32万円
このようになっています(このような基準を「住民税非課税限度額」といいます)。
そして、均等割が非課税であれば所得割も非課税になるといって差し支えないので、住民税非課税世帯となるためには、世帯の全員が「均等割も所得割もかからない人」か「均等割のかからない人」のどれかに当てはまる必要があるということです。
なお「合計所得金額」は、基礎控除や医療費控除、社会保険料控除などを控除する前のものですので注意が必要です(給与所得控除や公的年金等控除は控除できます)。
まとめると、
ア 生活保護法の規定による生活扶助を受けている人
イ 障害者、未成年者、寡婦または寡夫で前年中の合計所得金額が125万円以下の人
ウ 前年中の合計所得金額が次の算式で求めた額以下の人(3級地の場合)
控除対象配偶者及び扶養親族がいない人・・・28万円(1級地:35万円、2級地:31万5千円)
控除対象配偶者及び扶養親族がいる人・・・28万円(1級地:35万円、2級地:31万5千円)×(控除対象配偶者+扶養親族+1)+16万8千円(1級地:21万円、2級地:18万9千円)
のどれかに世帯全員が該当すれば、住民税非課税世帯になれるというわけです。
住民税課税世帯になってしまうのはどんなケース?
筆者の経験上、住民税非課税世帯が課税世帯となってしまうケースは、次の3つのケースが多いように感じています。
それは、ⅰ本人さんの合計所得金額が上がる、ⅱ同一世帯内の誰かの合計所得金額が上がる、ⅲ扶養親族等がいなくなる、の3つです。
ⅰ本人さんの合計所得金額が上がるケースとしては、給与収入や年金収入が上がるというケースです。
このような場合には予め課税対象になるかどうかがわかりますので、ある程度の準備や対策もできるかもしれません。
ただ、注意が必要なのは、住民税非課税限度額の計算に用いられる「合計所得金額」には、土地・建物等の譲渡所得の金額(長期譲渡所得の金額(特別控除前)と短期譲渡所得の金額( 特別控除前))が含まれるという点です。
前年に不動産を処分した際には要注意です。
均等割が発生する可能性があります。
なお、2020年から給与所得控除や公的年金等控除の金額が10万円引き下げられますが、それに伴って2021年の住民税非課税限度額に10万円が加算される予定ですので、この点での影響は少ないものと思われます。
ⅱ同一世帯内の誰かの合計所得金額が上がるケースとしては、病気や引きこもりなど様々な事情で働いていなかった世帯内の家族が仕事を始めたようなケースが考えられます。
この場合、世帯全体としての収入額は上がるので、それほど問題はないようにも思えます。
しかし、働き始めた家族が家計にお金を入れてくれないような場合には、他の家族には各種負担が増えるというマイナスの影響だけが及ぶということもありえます。
家族の協力を得られるかどうかが大きなポイントになるでしょう。
ⅲ扶養親族がいなくなるケースとしては、扶養親族だった人が亡くなった場合や世帯を離れるなどして扶養関係になくなったような場合があります。
またⅱとも重なるのですが、それまで扶養に入ってた家族が収入を得るようになって扶養から外れるというケースもあります。
特に、本人さん単独だと課税対象だったのに、扶養親族がいたのでなんとか非課税となっていたというような場合では、いわゆる世帯分離をしたとしても本人さんが非課税世帯になることはできないので、かなり困ったことになります。
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さいごに
今回は、①どのような場合に非課税世帯が課税世帯になるのかについて、これまでの経験上問題になったケースをあげてみました。
次回は、住民税非課税世帯から課税世帯になることで、②社会保険の負担がどのように変化するのかについてお話できたらと思っています。
この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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