障害年金と老齢年金は同時にもらえるのですか【年金の常識10】

2019.10.24

障害年金と老齢年金の併給の可否を社会保険労務士が解説

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社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第10回目の質問は、障害年金と老齢年金の併給(同時にもらえるのか)についてのものです。

この質問は、今までに何回か聞かれたことのある質問です。

たしかに、障害年金をもらっている人にとっては、自分が65歳になったとき、老齢年金が追加でもらえるのかどうかは、とても気になる問題だと思います。

今回は障害年金と老齢年金の併給の可否についてお話しましょう。
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質問「障害年金をもらっている人が65歳になったら、同時に老齢年金ももらえるようになるのですか?」

回答:年金は1人1年金の原則があるので、障害年金か老齢年金かを選択することになります。ただし、障害基礎年金と老齢厚生年金の組合わせは併給(同時にもらうこと)ができます。

 

この話は意外とわかりにくいので、事例を設定してご説明します。

図1をご覧ください。

Aさん、Bさん、Cさんは、図1のように、20歳から国民年金に加入し、その後就職して厚生年金にも加入していた(60歳で退職)とします。

そして、AさんとBさんは、60歳になるまでに2級相当の障害を負ったとしましょう。

ただし、Aさんの初診日は①、Bさんの初診日は②とします。

また、Cさんは②を初診日として3級相当の障害を負ったとします。

 

どのような障害年金をもらえるのかは初診日にどの年金に加入していたかによって変わりますので、Aさんたちの65歳になるまでの間の障害年金は次のようになります。

  • Aさんは①の時点では国民年金にしか加入していないので、障害「基礎」年金だけがもらえます。
  • Bさんは②の時点で国民年金と厚生年金に加入しているので、障害「基礎」年金だけでなく障害「厚生」年金がもらえます。
  • Cさんは②の時点で国民年金と厚生年金に加入しているのですが、障害「基礎」年金には3級がない(=3級では障害基礎年金はもらえない)ので、障害「厚生」年金だけがもらえます。

 

このような状況で障害年金を受給していたAさんたちが、65歳になったとします。

Aさんたちが65歳になったとき、Aさんたちには老齢「基礎」年金と老齢「厚生」年金の受給権が発生します。

では、全員が現在もらっている障害年金に加えて、新たに老齢年金ももらえるのしょうか。

答えはノーです。

年金には1人1年金の原則というのがあって、原則として種類の違う年金を同時にもらうことはできないのです。

つまり、Aさんたちの場合には、現在もらっている障害年金か、新たに発生した老齢年金かを選択することになります。

そうすると、Aさんたちの選択肢は次のようなものになるでしょう。

  • Aさんの場合には、障害基礎年金だけよりも老齢基礎年金+老齢厚生年金の方が受給額が多いと思われます(ただし、後述の例外があるので、後者を選択するとは必ずしもいえません)。
  • Bさんの場合には、障害基礎年金+障害厚生年と、老齢基礎年金+老齢厚生年金の受給額を比べてみることになりますが、障害年金の方が非課税であるというメリットもありますので、そのあたりを総合的に考慮することになるでしょう。
  • Cさんの場合には、障害厚生年金だけよりも老齢基礎年金+老齢厚生年金の方が受給額が多いと思われますので、後者を選択することが多いと思われます。

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ただし、例外もあります。

異なる種類の年金を組合せて併給することが可能になる場合があります。

この場合の組合せは、2パターン考えられます。

まず、Aさんの場合、障害基礎年金をもらいつつ、老齢厚生年金をもらえれば、非課税のメリットを活かすことができます(また、仮にAさんが障害基礎年金が1級だった場合には、障害基礎年金は2級の場合の1.25倍ですので、障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせが受給額が一番多くなるでしょう)。

また、Cさんの場合にも、老齢基礎年金をもらいつつ、障害厚生年金がもらえれば、非課税のメリットを活かすことができます。

つまり、Aさんのように障害基礎年金+老齢厚生年金と、Cさんのように老齢基礎年金+障害厚生年金という2つの組合わせが考えられるということです。

しかし、例外として認められるのは、Aさんのような障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせだけで、Cさんのような老齢基礎年金+障害厚生年金の組合わせは認められません。

つまりAさんは、障害基礎年金+老齢厚生年金か老齢基礎年金+老齢厚生年金かの選択となるので、この場合には前者を選択することが多いのではないかと思われます(また、障害基礎年金だけをもらいつつ、老齢厚生年金を繰り下げするという選択もありえます)。

なお、これはBさんにも当てはまります(2級の場合にはあまり問題にはならないのですが、Bさんが1級の場合、障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせの受給額が一番多くなることも考えられます。Aさんと異なるのは、障害厚生年金をもらえる人は老齢厚生年金の繰り下げはできないという点です)。

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以上をまとめると

  • 1人1年金の原則により、同じ種類の年金をもらうことになるが、例外として障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせは併給ができる(図2)

  • 老齢年金+障害年金を同時に合算してもらえることはないし、老齢基礎年金+障害厚生年金の組合わせも認められない(図3)

ということです。

いずれのケースにおいても、65歳になって老齢年金の受給権が発生した際には、それぞれの組合わせでの受給額を確認のうえ、さらに障害年金の非課税のメリットを活かせる方法を検討されることをお勧めいたします。

 

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を読んで、障害年金を申請してみようと思われたひともいるのではないでしょうか。

社会保険労務士の筆者がいうのも少しへんですが、筆者は障害年金は自分で申請できると思っています。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

よろしくお願いいたします。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

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