遺族年金をもらっているのに年金生活者支援給付金がもらえないのはなぜですか【年金の常識8】

2019.10.10

遺族年金をもらっている人でも年金生活者支援給付金がもらえる人ともらえない人がいる理由を社会保険労務士が解説

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社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第8回目の質問は、年金生活者支援給付金についてのものです。

年金生活者支援給付金は正確には「年金」ではないのですが、タイムリーな話題なので、ここで取り上げようと思います。
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質問「遺族年金をもらっている人でも年金生活者支援給付金がもらえる人ともらえない人がいるのはどうしてですか?」

回答:遺族年金の種類が遺族基礎年金であれば年金生活者支援給付金の対象となりえますが、遺族厚生年金だけの場合には「遺族」年金生活者支援給付金の対象ではありません。つまり、同じ遺族年金でも遺族基礎年金をもらっている人と遺族厚生年金だけしかもらっていない人では「遺族」年金生活者支援給付金の対象となるかどうかが分かれるということです。

ただし、遺族厚生年金と併せて老齢(基礎)年金や障害基礎年金を受給している場合には、「老齢」や「障害」の給付金がもらえる場合があります。いずれの場合も一定の所得要件を充たす必要があります。

 

この質問は、複数の成年被後見人を担当している成年後見人さんからの質問でした。

質問者さんによれば、遺族年金をもらっているAさんとBさんのうち、年金額がBさんより多いAさんの方には年金生活者支援給付金の対象者として通知がきたけれども、Bさんにはきていないというのです。

AさんもBさんも独居の単一世帯で、年金以外の収入や所得はないとのことでした。

同じ遺族年金をもらっている人でも、年金生活者支援給付金がもらえる人とそうでない人がいるのが不思議だというお話です。

そこで、AさんとBさんの最新の年金額改定通知書をみせていただきました。

すると、AさんもBさんも「遺族基礎年金」は受給しておられず、「遺族厚生年金」を受給しておられました。

前述の回答に記載のとおり、遺族年金生活者支援給付金の対象者は、遺族基礎年金の受給者である必要があります。

ですので、AさんやBさんのように遺族厚生年金だけで遺族基礎年金を受給していない場合には、遺族年金生活者支援給付金の対象ではないのです。

 

そうすると、AさんもBさんも両方とも年金生活者支援給付金の対象ではないのではないか(なぜAさんだけがもらえるのか)との疑問が生じます。

そこで再度年金額改定通知書を確認したところ、Aさんは遺族厚生年金と併せて老齢(基礎)年金を受給されていたのですが、Bさんは(加入期間の問題なのかどうかわかりませんが)何らかの理由で老齢(基礎)年金を受給されていませんでした。

つまり、Aさんは老齢(基礎)年金の受給者でもあるので、「老齢」年金生活者支援給付金の対象になっているということです。

これに対して、Bさんは老齢(基礎)年金の受給者ではないので、「老齢」年金生活者支援給付金の対象にもなっていないということなのです。

たしかに、年金の支給額だけをみれば、Aさんは遺族厚生年金+老齢年金なので、遺族厚生年金だけのBさんよりも多いのですが、老齢(基礎)年金を受けているので老齢年金生活者支援給付金がもらえるというわけです。

ちなみに、老齢年金生活者支援給付金の収入・所得要件には遺族厚生年金の収入額はカウントされません。

Aさんの場合には年金以外の収入・所得はないため、老齢年金の収入額が要件を充たすと判断されたものと思われます。

 

以上をまとめると、

  • 遺族「基礎」年金を受給していない人は、遺族「厚生」年金を受給していたとしても、「遺族」年金生活者支援給付金はもらえない
  • 遺族「厚生」年金を受給している人が、「老齢」基礎年金や「障害」基礎年金を併せて受給していれば、「老齢」または「障害」年金生活者支援給付金をもらえる場合がある

ということです。

 

今回のケースは、一見すると、同じ遺族年金をもらっている人なのに、年金の受給額が多い人が年金生活者支援給付金がもらえて、年金の受給額が少ない人はもらえないという不思議な現象にも思えます。

これは制度上仕方のないこととはいえ、老齢基礎年金の無年金者が今回の給付金の対象にされていないことが、このような違いを生む原因と思われます。

今回の給付金のそもそもの趣旨が消費税率アップに伴う低所得者対策ということであれば、無年金者こそ救済の対象なのではないかとも思われるのですが、あくまで「年金生活者」という線引きで外さざるをえないということなのでしょう。

ただ、これは他の社会保険労務士の先生の受け売りなのですが、「無年金者も消費税を払っていて、税率アップの負担をしているのだから、税金を財源にした救済ならば、対象を年金生活者に限るというのはいかがなものか」という意見もあります。

個人的には、年金生活者支援給付金は年金だけが頼りの低所得者にとってはとても助かる制度として評価できると思っていますが、それよりも困窮している無年金者の救済についても、どうにかしていただけないものかなと思うところではあります。

さいごまでお読みくださりありがとうございました。

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