これでわかる! 休業手当が月給の6割にならない謎を解く

2020.04.15

休業手当が思っていたより少なくなる仕組みを社会保険労務士が解説

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための休業によって、会社から休業手当をもらうことになる人もいらっしゃることと思います。

昨今の報道のおかげで、労働基準法26条によって、「使用者の責めに帰すべき事由」で休業した場合には、労働者に休業手当として「平均賃金の6割以上」を支払わなければならないということが、今までになく周知されてきているように感じています。

しかし、実際に休業手当を受け取ってみると、思っていた金額よりもずいぶん少なくておどろいたというケースを聞くことがあります。

どうしてそのようなことが起こるのか、社会保険労務士である筆者が具体例をあげて解説していこうと思います。
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法定の休業手当は「月給の6割以上」にはならない

今回は月給制の場合の休業手当の計算をしていきます。

仮にAさんが2020年4月全日を休業したとします。

Aさんの給与などの設定としては、

  • 月給:20万円(毎月末日〆)
  • 休日:土日祝祭日
  • 3ヶ月間(1~3月)の賃金総額:60万円
  • 3ヶ月間の歴日数(1~3月):91日
  • 休業手当の率:60%

ということにしましょう。

Aさんの給料は月給20万円なのですから、休業手当はその6割の12万円になるのかなって思ってる人はいませんか?

むしろふつうはそう思いますよね。

新聞やニュースなんかでは「6割以上」って言っているのですから。

でも、必ずしもそうはならないのです。

これからその仕組みを説明していきます。

 

1ヶ月分の休業手当の計算

Aさんの4月分の休業手当を計算してみましょう。

労働基準法26条によれば、休業手当は「平均賃金の6割以上」とされています。

法律上は「月給の6割以上」とか「給料の6割以上」などと定められているわけではありませんので、ここは要注意です。

そして、休業手当の計算の基礎となる「平均賃金」とは、事由の発生した日以前の3ヶ月間の賃金の総額をその期間の総日数(=暦日数)で割った金額をいいます。

 

とすると、Aさんの平均賃金は、

60万円÷91日=6593円40銭(端数処理済)

となります。

Aさんの休業手当は、この平均賃金に60%をかけて計算していくことになります。

 

そうすると、Aさんの4月分の休業手当は、平均賃金の30日分の60%ということで、

6593円40銭×30日×60%=11万8681円(端数処理済)

になるのでしょうか。

まあこれなら、月給20万円の6割である12万円には少し足りないけど、誤差の範囲内かなって思えます。

しかし、違います。

まだまだ安くなっていきます。

 

実際には、Aさんの4月分の休業手当は、

6593円40銭×21日×60%=8万3077円(端数処理済)

となります。

 

「え、こんなに少ないの!?」とおどろく人もいるかもしれません。

月給の20万円からしたら実に41%程度の金額にしかならないのですから。

しかも、ここから各種社会保険料などが控除されるのです。

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どうしてそのようなことになるのでしょうか。

その理由は、休業手当は休日には支払う必要がないからです。

2020年4月は、日曜日4日、土曜日4日、祝日1日ですので、Aさんの休日は9日あります。

ですので、休日9日分を暦日30日から引いた21日(所定労働日数)がAさんの4月の休業手当を支払うべき日数となります。

その結果、月給からしたら6割どころか4割程度にしかならないということになるのです。

このように、休業手当を「月給の6割」とイメージしていたら、休業手当が思いのほか少なくなるという結果が生じうるので、注意が必要です。

 

さいごに

休業手当をもらうことは社会人経験の中でもそう頻繁にあることではありません。

今回の新型コロナウイルス感染症の件で初めて経験するという人もいることでしょう。

漠然と「休業手当は月給の6割」というように考えていると、実際の金額におどろいてしまうこともありえます。

法律上の休業手当は休日にはもらえないという点を知識としてしっかり理解していただければと思います。

もちろん、労働者に有利になるように、就業規則などでこれを上回る休業手当を支払うことを定めても問題はありません(むしろ経営者さんにはそのように対応していただいきたいところです)。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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