障害年金のことを1ミリも知らないひとのための「障害年金とは?」

2020.05.20

障害年金のことをまったく知らないひとに向けて「障害年金とは?」を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、障害年金のことをまったく知らないひとに対して、社会保険労務士が「障害年金とは?」を解説していこうという試みです。

こんなことを偉そうに言っている筆者も、実は10年くらい前までは本当のところ障害年金って何かよくわかっていませんでした。

過去の自分にむけて、障害年金とはどんなものかをうまく説明できるかやってみようと思います。

 

障害年金ってどんな人がもらえるの?

障害年金っていくらもらえるの?

障害年金はどうやったらもらえるの?

 

こんな疑問にわかりやすくお応えしようと思います。

今回は、わかりやすさを最優先します。

よく知っているひとからすれば、正確性に欠ける表現もあるかもしれません。

ご容赦いただけますようお願いいたします。

なお、この記事は投稿日(2020.5.20)現在の情報を元に執筆されています。

 

「障害年金」をひとことでいえば、病気やケガで一定の障害を負ったときに国からもらえる年金のことです。

「そんなことはわかっているよ」と突っ込まれそうなので、基本中の基本のポイントをあげると、

  • 障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある
  • 障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い
  • 障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

の3つになります。

順番に説明していましょう。

<スポンサーリンク>



障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある

障害年金は誰でももらえる可能性があります。

障害年金をもらうためには障害者手帳をもっている必要はありません。

これは誤解している人が結構多いです。

障害者手帳がなくても障害年金はもらえますし、逆に障害者手帳をもっているからといって必ずしも障害年金がもらえるとは限りません。

障害者手帳を持ってる人の特権ではないのです。

 

ただし、年齢による制限があります。

それは20歳です。

「障害年金は20歳になってから」と覚えておいてください。

なお、20歳になる前に障害を負った場合でも、20歳になってから障害年金の支給が始まります(一部例外があります)。

<スポンサーリンク>

障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い

障害年金でもらえる金額は、障害基礎年金(国民年金に入っているひとがもらえる障害年金)か障害厚生年金(厚生年金に入っているひとがもらえる障害年金)かで違っています。

障害厚生年金をもらえるひとの方が多くなります。

 

障害年金は障害が重い方ほどもらえる金額は多くなります。

  • 障害基礎年金は重い方から1級、2級の2段階にわかれています
  • 障害厚生年金は重い方から1級、2級、3級の3段階にわかれています
  • もらえる金額は1級は2級の1.25倍です

 

でもこれだけでは、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額が多くなる理由はわかりませんね。

その理由を説明しましょう。

それは、障害厚生年金の1級、2級のひとは、同時に障害基礎年金ももらえるからです。

厚生年金に入っているひとは、同時に国民年金にも入っているので、両方もらえるというわけです。

これに対して、国民年金にだけ入ってるひとは、障害厚生年金はもらえずに、障害基礎年金だけをもらうことになります。

そのため、障害基礎年金だけしかもらえないひとは、3級相当の障害の場合には、障害年金はまったくもらえないということになります。

障害基礎年金には3級がないからです。

 

話を整理しましょう。

  • 障害厚生年金がもらえるひと
    • 1級:障害厚生年金(1級)+障害基礎年金(1級)
    • 2級:障害厚生年金(2級)+障害基礎年金(2級)
    • 3級:障害厚生年金(3級)
  • 障害基礎年金だけをもらえるひと
    • 1級:障害基礎年金(1級)
    • 2級:障害基礎年金(2級)
    • 3級:なし

どうやっても障害厚生年金をもらえる人の方がお金が多くなりますね。

具体的な金額についてはここでは省略しますが、もっと詳しく知りたいというひとは、「障害年金はいくらもらえる? 障害年金の金額をざっくり紹介」という記事をごらんください。

<スポンサーリンク>



障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

障害年金をもらうための条件は3つあります。

そのすべてをクリアしなければいけません。

順にみていきましょう。

 

初めて病院で診てもらった日が超重要

障害年金をもらうためには、障害の原因になった病気やケガのために初めて病院で診てもらった日がとても重要になります。

これを「初診日」といいます。

初めて具合が悪くなった日ではありません。

重要なのは初診日です。

初診日は医師によってちゃんと証明してもらえるので、とても明確な基準になるからです。

 

初診日によってどの年金がもらえるか(それとももらえないのか)が決まります。

  • 障害基礎年金をもらうには、65歳になるまでに初診日がある必要があります
  • 障害厚生年金をもらうには、厚生年金に加入している期間に初診日がある必要があります

このように初診日がどこにあるかの条件をクリアする必要があります。

初診日が65歳以降であれば、障害基礎年金はもらえません。

また、初診日に厚生年金の加入者であれば障害厚生年金がもらえ、そうでなければ障害厚生年金はもらえないということです。

 

たとえば、Aさんは会社に勤めているときに体調不良だったのですが、忙しくて病院に行けなかったとしましょう。

Aさんは会社を辞めてようやく病院に行ったとします。

そこで病気がみつかった場合どうなるでしょうか。

Aさんが初めて病院に行ったときには会社を辞めていますので、厚生年金の加入者ではなくなっています。

つまり、この病気でAさんが障害を負った場合には、障害厚生年金はもらえないということです。

Aさんは病院に行く日が遅かったばかりに、障害基礎年金しかもらえません。

そして、もしも、この障害が3級相当だったとしたら・・・

そうです、Aさんは障害年金をまったくもらえなくなってしまうのです(障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金には3級がないですからね)。

 

このほかにも、いつから障害年金がもらえるのかを決める基準日も初診日によって決まりますし、ちゃんと保険料をはらっていたかどうかをチェックする基準日も初診日によって決まります。

とにかく、障害年金にとって初診日はとても重要な日なのです。

<スポンサーリンク>

保険料をちゃんと払っていないと障害年金がもらえなくなる可能性がある

障害年金をもらうためには、一定期間ちゃんと保険料を払っている必要があります。

これを「保険料納付要件」といいます。

保険料納付要件をかなりざっくりいうと、初診日の前日の時点で

  • 前々月からさかのぼって1年以内に保険料の未納がない
  • 前々月までの全期間のうち3分の2以上の期間の保険料を払っている(免除でもよい)

のどちらかである必要があります。

もしこの条件をクリアできなければ、どんなに重い障害を負っても、障害年金はまったくもらえません。

これはかなり厳しいことになります。

あとで気づいて慌てて保険料を払っても許してもらえません(ここらへんを詳しく知りたいひとは「未納保険料を後から払えば障害年金はもらえるの?【年金の常識14】」という記事をお読みください)。

もしも経済的理由で保険料が払えないのであれば、免除や猶予の制度もありますので年金事務所や行政の窓口に相談されることを強くおすすめします。

 

病気やケガの種類によってどの程度の障害なら障害年金がもらえるか決まっている

障害年金をもらうための障害の程度は、病気やケガの種類によって決まっています。

これは「障害認定基準」に定められています。

「眼の障害」「聴覚の障害」といったように18の障害の基準が定められています。

かなりの分量になりますが、日本年金機構のホームページでダウンロードできますので、興味のあるひとは一度みてみてはいかがでしょうか。

 

また、病気やケガの種類に応じて提出する診断書も決まっています。

障害年金の請求には専用の診断書がありますので、病気やケガに応じて必要な診断書を提出します。

診断書は8種類あります。

18の障害の基準が定められているのに診断書は8種類しかないのは、1つの診断書で複数の障害に対応しているものがあるからです。

たとえば「聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用の診断書」といったものがあります。

こちらも、日本年金機構のホームページでダウンロードできますので、興味のあるひとは一度みてみてはいかがでしょうか。

 

提出された診断書などの資料から障害認定基準に基づいて、国(日本年金機構)が障害の程度を決めていくというわけです。

障害認定は診断書で決まるといっても言い過ぎではありません。

なので、正確な情報が反映された診断書をどうやって医師に作ってもらうかがポイントになります。

診断書一発勝負というわけではないですが、そんな感じがしないでもありません。

 

障害の程度に関連して、もうひとつ重要なことがあります。

それは、どの時点での障害の程度を判断するのかという問題です。

この答えは2つあります。

それは、①初診日から1年6ヶ月が経過した日、または治療を続けてもこれ以上良くならないと確定した日のどちらか早い方(これを「障害認定日」といいます)、②障害年金を請求する日、の2つです。

①と②の違いは請求の方法の差です(これを「認定日請求」と「事後重症請求」といいます)。

ただ、これは少し難しい話になるので、請求の方法のお話は別の機会にさせてください。

 

まとめ

今回は、障害年金のことをまったく知らないひとに対して「障害年金とは?」を解説してきました。

ポイントは、

  • 障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある
  • 障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い
  • 障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

この3つでした。

いかがでしょうか。

障害年金のことをざっくりとでもわかっていただけたでしょうか。

障害年金は、病気やケガで仕事ができなくなったようなときにとても頼りになる制度です。

制度をざっくりとでも理解しておけば、いざというときに役に立つかもしれません。

とくに、いざ障害年金を請求しようと思ったら、保険料を払っていなかったのでもらえないなんてことになれば本当に大変なことになります。

この記事を読んでくださったひとがそのようなことにならないよう願っています。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前後の記事

前の記事:障害年金の更新の提出期限を守るよりも診断書の内容の方が絶対的に重要な理由

後の記事:ここまで違う 障害年金2級と3級の受給額

<スポンサーリンク>