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新型コロナで国民年金保険料が払えない! 保険料未納で困ったことにならないように免除の臨時特例を申請しよう

新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減って国民年金保険料を支払えない人のために免除の臨時特例を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、公的年金の国家資格である社会保険労務士が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で収入が減少した場合の国民年金保険料免除の臨時特例についてお話します。

新型コロナウイルス感染症の影響で

  • 失職して厚生年金の被保険者から国民年金の第1号被保険者になった人
  • アルバイト先が休業して収入が少なくなった人
  • 取引先からの受注が減少したフリーランスの人

こういった人たちにはぜひお読みいただきたい記事です。

2020年4月~2021年3月分の国民年金保険料は月額1万6540円です。

収入が減った人にとってはつらい支出だと思います。

どうにかならないものでしょうか。

 

この点について、この記事でお伝えしたいことは、

  • 臨時特例を申請して当面の国民年金保険料の支払を回避しよう
  • 未納は絶対に避けよう
  • 将来の国民年金(老齢基礎年金)を満額もらうための方法も知っておこう

の3点です。

順を追ってお話ししていきます。

なお、この記事は投稿日(2020年5月6日)現在の情報を元に執筆されています。

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臨時特例を申請して当面の国民年金保険料の支払を回避しよう

2020年5月1日から国民年金保険料免除の「臨時特例」の申請手続が可能になりました。

この臨時特例によって、対象者は2020年2月~6月分の国民年金保険料(全額または一部)が免除されます。

仮に2~6月までの5ヶ月間の国民年金保険料が全額免除された場合には、8万2700円の支払を免れることができます。

当面の家計に与えるインパクトは大きいと思います。

経済的に困っている人は積極的に申請したいところです。

 

どんな人が対象?

臨時特例の対象者は、

  • 2020年2月以降に、新型コロナウイルスの感染症の影響により収入が減少したこと
  • 2020年2月以降の所得等の状況から見て、当年中の所得の見込みが、現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれること

2点をいずれもみたした人です。

学生の場合には、別に「学生納付特例の臨時特例」の対象になります。

具体的にはいくら減ったら対象になる?

臨時特例の対象となるには

  • 当年中の所得の見込みが
  • 現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になる

と見込まれることが必要です。

この2点について具体的に説明します。

 

まず、「当年中の所得の見込み」の計算方法です。

  • ステップ①:2020年2月以降で収入が減少した月を任意で選ぶ(一番減った月を選べばよいでしょう

たとえば、アルバイトのAさん(未婚の一人暮らし)が去年の3月は15万円の収入があったのに、今年の3月は7万円になったような場合を想定してみましょう。

  • ステップ②:①で出した金額を12倍して1年分の「収入見込額」をだす

Aさんの場合には、7万円×12=84万円が1年分の「収入見込額」です。

  • ステップ③:控除相当額をだす

Aさんのような給与所得者の場合には、給与所得控除をだします。

給与所得控除は、②の1年分の「収入見込額」×40%で計算しますが、この額が65万円未満の場合には一律65万円です。

Aさんの場合、84万円×40%=33万6000円ですので、65万円が給与所得控除になります。

  • ステップ④:②の1年分の「収入見込額」から③の控除相当額を引いて「所得の見込額」をだす

Aさんの場合、84万円-65万円=19万円が「所得の見込額」です。

 

次に、「現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準」を確認しておきます。

それぞれの免除区分については、

  • 全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 以下
  • 4分の3免除:78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 以下
  • 半額免除:118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 以下
  • 4分の1免除:158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 以下

とされています。

つまり、先ほど計算した「所得の見込額」がこの区分のどこに該当するかで、いくら免除されるのかが決まるということです。

Aさんの場合には、「所得の見込額」19万円が、全額免除の基準(57万円)以下ですので、全額免除の基準を満たしています。

 

ここで注意が必要なのですが、「所得の見込額」は本人だけではなく、配偶者(夫や妻のこと。内縁関係も含みます)及び世帯主の「所得の見込額」もチェックされるという点です。

Aさんの場合には、未婚で独り暮らし(配偶者や他に世帯主がいない)だったので、Aさんだけを計算すればよかったのですが、本人のほかに配偶者や世帯主がいる場合にはそれだけでは足りません。

配偶者や世帯主の全員について「所得の見込額」を計算して、全員が免除区分に該当する必要があるのです。

ただし、配偶者や世帯主の「所得の見込額」の計算は必ずしも本人と同じ月を用いて計算する必要はありません(一番収入が減った月を選んでいいということです)。

 

いつからいつまでいくら免除される?

現在のところ、臨時特例は2020年2~6月までの5ヶ月分の国民年金保険料が免除の対象です。

どの月の収入を元にしても、2月まで遡って適用可能です。

ただし、先に納付された保険料は還付されません。

なお、前納制度(半年分、1年分、2年分等のまとめ払いのこと)を利用している人の場合には免除申請を行った月以降の保険料相当額は還付可能です。

 

免除後に支払わなければならない具体的な1ヶ月分の保険料は、

2020年2~3月分

  • 全額免除:0円
  • 4分の3免除:4100円
  • 半額免除:8210円
  • 4分の1免除:1万2310円

2020年4~6月分

  • 全額免除:0円
  • 4分の3免除:4140円
  • 半額免除:8270円
  • 4分の1免除:1万2410円

です。

全額免除以外の免除の場合、この金額を納付しなければ、その月は「未納」扱いとなるので注意が必要です。

 

将来の年金はどうなる?

臨時特例が将来もらえる老齢基礎年金(原則65歳になったときからもらえる国民年金)の額に与える影響について確認しておきましょう。

老齢基礎年金の額は、年額で78万0900円に改定率をかけた額とされています。

改定額は毎年変わります。

ちなみに、2020年度の老齢基礎年金の額は、年額で78万1700円(満額)です。

これは40年間(480ヶ月)全額を納めた場合の額です。

臨時特例での免除のように、保険料を全部または一部しか納めていない人の場合には、その期間減額されることになります。

具体的な減額率は、

  • 全額免除:2分の1
  • 4分の3免除:8分の3
  • 半額免除:4分の1
  • 4分の1免除:8分の1

です。

ここはなかなかピンとこないところですが、ざっくりとイメージしてもらうために、臨時特例で5ヶ月間免除を受けて、そのほかの期間は満額納付したとして、改定率をかける前の額(78万0900円)で比べてみましょう。

  • 全額免除:(78万0900円×475/480)+(78万0900円×5/480×1/2)=77万6833円(4067円減額)
  • 4分の3免除:(78万0900円×475/480)+(78万0900円×5/480×5/8)=77万7850円(3050円減額)
  • 半額免除:(78万0900円×475/480)+(78万0900円×5/480×3/4)=77万8866円(2034円減額)
  • 4分の1免除:(78万0900円×475/480)+(78万0900円×5/480×7/8)=77万9883円(1017円減額)

ぱっとみるとそこまで減っていないような感じもしますが、老齢基礎年金は終身年金(死ぬまでもらえる年金)ですので、これが10年、20年と積み重なると差額は大きくなっていきます。

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未納は絶対に避けよう

臨時特例の申請もせずに、国民年金保険料を払わずにいるとどうなるのでしょうか。

これを国民年金保険料の未納といいます。

国民年金保険料の未納を避けるべき理由を簡単にあげておきます。

 

将来の年金が減額されるだけでなく、まったくもらえなくなる可能性があります

未納期間の将来の年金額は0円です。

これに対して、先ほど計算したように、臨時特例の全額免除の場合には1/2が減額されるだけですみます。

同じ保険料をまったく払わない状態なのに、大きく変わってきます。

しかし、ペナルティーはこれだけではありません。

保険料の未納を続けていくと、年金がまったくもらえなくなる可能性があるのです。

具体的には、保険料納付済期間(国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含む)と国民年金の保険料免除期間などを合算した資格期間が原則として10年以上必要です。

もしも資格期間が10年未満であった場合には、将来の年金は0円(無年金)になってしまいます。

 

障害年金がもらえなくなる可能性があります

障害年金をもらうためには「保険料納付要件」をみたす必要があります。

具体的には、初診日の前日において、

  • 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(「2/3要件」)
  • 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(「1年要件」)

のどちらかをみたす必要があります。

「2/3要件」であっても「1年要件」であっても、未納期間は不利に扱われます。

もしもこれらの保険料納付要件がみたせなければ、その時点で障害年金はもらえません。

 

延滞金が発生したり、強制徴収による差押えの可能性があります

国民年金保険料の未納に対しては、延滞金が発生することがあります。

具体的な延滞金割合(2020年1月1日から12月31日)は、

  • 納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日まで:2.6%
  • 納付期限の翌日から3ヶ月を経過する日の翌日以降:8.9%

です。

また、一定の所得が認められるようなケースなどでは、強制徴収(差押え)の可能性もあります。

つまり、未納が続くと銀行口座や不動産などを差押えられる可能性があるということです。

なお、あまり知られてはいませんが、国民年金保険料は本人に納付義務があるだけでなく、配偶者や世帯主にも連帯納付義務があります。

そういった連帯納付義務者に迷惑をかけてしまうこともありえるのです。

 

このような理由から、国民年金保険料の未納はできるだけ回避したいところです。

今回の臨時特例を積極的に利用して、未納のまま放置することは避けましょう。

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将来の国民年金(老齢基礎年金)を満額もらうための方法も知っておこう

臨時特例で国民年金保険料が免除された場合には、「未納」による不利益は受けませんが、将来の年金が減らされてしまうことは避けられません。

そこで、臨時特例で免除された人が将来の年金を満額もらうためにできることをお伝えしておこうと思います。

 

追納制度

臨時特例で免除された国民年金保険料は、「追納」することができます。

追納ができるのは追納が承認された月の前10年以内の免除等期間についてです。

ただし、免除を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。

2年度以内であれば加算されませんので、早めの追納がお得です。

追納後は、保険料が全額納付されたものとして将来の年金額が計算されます。

 

任意加入制度

追納期間を経過して追納ができなくなった場合には、60歳になったあとに国民年金の任意加入制度を検討してみましょう。

任意加入制度は、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない人などのために、60歳以降でも国民年金に加入できる制度です。

任意加入をするためには、

  • 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
  • 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと
  • 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満であること
  • 厚生年金保険、共済組合等に加入していないこと

こういった要件をすべてみたす必要があります。

追納できなかったときの手段として覚えておいてください。

 

厚生年金の経過的加算

国民年金ではないのですが、厚生年金にも老齢基礎年金に相当する給付があります。

それを「経過的加算」といいます。

たとえば、60歳以降に厚生年金の被保険者であった場合(原則70歳に達するまで)、その厚生年金の被保険者期間に応じて、老齢基礎年金に相当する給付が経過的加算として上乗せされます。

上限や計算方法などの詳細は省略しますが、経過的加算は実質的には満額にみたない老齢基礎年金を補充してくれる役割を果たしています。

60歳を超えて厚生年金の被保険者として働くというのも、一つの方法として覚えておいて損はないでしょう。

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さいごに

今回は、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した場合の国民年金保険料免除の臨時特例についてお話ししてきました。

具体的な手続などは日本年金機構のホームページをご参照ください。

とにかく使える制度はすべて使って、どうにかこの困難な状況を乗り越えていきたいところです。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前後の記事

前の記事:給料から天引きされる社会保険料・天引きされない社会保険料

後の記事:障害年金はいくらもらえる? 障害年金の金額をざっくり紹介

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専業主婦になれば、国民年金の保険料を払わなくていいって本当ですか?【年金の常識7】


オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

「いまさら聞けない 年金の常識」シリーズです。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第7回目の質問はこちらです。

 

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質問「専業主婦になれば、国民年金の保険料を払わなくていいって本当ですか?」

回答:必ずしもそうとは限りません。国民年金の第3号被保険者になることができれば、国民年金の保険料を払う必要はなくなります(その期間は、保険料を全額払ったものとして、将来の老齢基礎年金の受給額が計算されます)。

 

国民年金の第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者(夫など)に扶養される配偶者の方(20歳以上60歳未満)が対象です。

また、第3号被保険者になるためには、いわゆる「130万円の壁」の収入要件もあります。

収入要件とは、年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ①同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、または②別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であることが原則です。

つまり、夫が会社員(第2号被保険者)で、かつ収入要件を充たす場合には、専業主婦は第3号被保険者となり、国民年金の保険料を払わなくてもよいということなのです。

ですので、次のような人は専業主婦であっても第3号被保険者にはなれません。

  • 夫が、自営業やフリーランス、非正規社員などで、国民年金の第2号被保険者ではない(会社員や公務員で厚生年金の被保険者ではない)
  • 自分自身に在宅の事業収入があったり、不動産収入があったりして、収入要件を充たさない
  • 自分自身が、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金を受けていて、収入要件を充たさない

このように、夫がどのような形態で働いているか、妻がどのくらい収入があるかによって、第3号被保険者になれるかどうかが決まるというわけです。

なお、第3号被保険者制度は、妻の場合にのみ適用されるものではなく、夫であっても適用されます。

 
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国民年金保険料をアルバイト先に半分払ってもらえますか?【年金の常識6】

いまさら聞けない 年金の常識(6) ~国民年金保険料の事業主負担

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第6回目の質問はこちらです。

 

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質問「国民年金保険料をアルバイト先に半分払ってもらえますか?」

回答:当然にはできません。国民年金には、厚生年金のように労使折半の制度はありません

 

この質問は、「社会保険料は労使折半」という制度をアルバイトの場合でも使えるのかという趣旨だと思います。

「労使折半」の労使とは、労働者と使用者という意味です。

そして、労働者とは、色々な定義がありますが、働いて賃金をもらっている人というものが一般的ですので、アルバイトも労働者に含まれるのなら、アルバイトの場合でも年金保険料をアルバイト先と折半できるのではないのかと思われたのでしょう。

しかし、この場合の労働者は、厚生年金の被保険者(厚生年金に加入している人)という意味で、アルバイト(労働者)であっても厚生年金に加入していない人(=国民年金を払っている人)はこれには含まれません。

逆に言えば、アルバイトであっても厚生年金の被保険者であれば、法律上当然に保険料は労使折半になるということです。

つまり、同じアルバイトであっても、厚生年金の場合には、厚生年金保険料は労使折半になりますが、国民年金の場合には、国民年金保険料は、全額が自己負担ということです

なお、アルバイト先が国民年保険料の半額相当額を賃金に上乗せして支払ってくれる場合もあるかもしれませんが、それはあくまで任意なのであって、法律上当然に請求できるものではありません。

最後に少し余談ですが、厚生年金の被保険者であれば、会社の経営者(一般的には労働者ではなく使用者)であっても、社会保険料は会社と折半になります。

この場合「使使折半」という方が正しいのかもしれません(そもそも「労使折半」は法律上の用語ではないので、あまり正確な表現ではないということです)。
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厚生年金しか払っていませんが、将来国民年金ももらえますか?【年金の常識5】

いまさら聞けない 年金の常識(5) ~厚生年金保険料と国民年金受給金額の関係

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社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第5回目の質問はこちらです。

 

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質問「厚生年金しか払っていませんが、将来国民年金ももらえますか?」

回答:はい、もらえます(資格期間が10年以上必要です)。厚生年金の被保険者は、原則として国民年金の第2号被保険者となりますので、その期間(20歳以上60歳未満)は国民年金の老齢基礎年金の受給金額にも反映されます

 

会社員などの厚生年金の被保険者は、国民年金の第2号被保険者となりますが、国民年金保険料を別途支払う必要はありません。

厚生年金の保険料には、国民年金の保険料に相当する部分が含まれているとお考えください。

国民年金保険料を支払う義務があるのは、自営業者などの国民年金第1号被保険者です

ただし、将来老齢年金をもらうには、保険料納付済期間(国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含む)と国民年金の保険料免除期間などを合算した資格期間が原則として10年以上必要です(ちなみに、平成29年7月31日までは、この資格期間が25年以上必要でしたが、法律が改正されて同年8月1日から10年に短縮されました)。

ざっくり言えば、厚生年金に加入していた期間と、国民年金の保険料を支払った期間などが合わせて10年以上必要というわけです(正確には、国民年金第3号被保険者であった期間や、ちゃんと手続きをとって国民年金の保険料の免除や猶予を受けた期間なども、この10年間には含まれます)。

この点、厚生年金と国民年金の加入期間が、それぞれ最低10年必要と勘違いされている人がいらっしゃいますので、お間違えのないようにお願いいたします。

合わせて10年以上あれば大丈夫です(必ずしも老齢基礎年金を満額もらえるわけではありません)。

逆に言えば、資格期間が合わせて10年にも満たない場合には、老齢年金は原則もらえないというわけです。

たとえば、会社員(厚生年金の被保険者)を5年間続けた後、自営業を始めて国民年金の第1号被保険者となった場合には、最低あと5年間は国民年金保険料を納めないと、原則として、国民年金だけでなく厚生年金についても、一切老齢年金はもらえなくなります

その場合、かけた保険料はもどってくるのかといえば、原則として、そのような制度はありません。

もったいない話ですが、掛け捨てになります。

せっかくかけた保険料を無駄にしないためにも、国民年金の保険料はしっかり納めましょう。

経済的に国民年金の保険料を納めることが困難な場合にも、免除や猶予の制度が使える場合もありますので、あきらめずに行政機関の窓口などで相談してみてください。
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未成年でも、厚生年金の保険料は払わなくてはいけないのですか?【年金の常識3】

いまさら聞けない 年金の常識(3) ~未成年の厚生年金保険料

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第3回目の質問はこちらです。

 

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質問「未成年でも、厚生年金の保険料は払わなくてはいけないのですか?」

回答:はい、そのとおりです。20歳未満であっても、会社員(厚生年金の被保険者)であれば、厚生年金の保険料を払わなくてはいけません

 

たとえば、高校卒業後すぐに就職をして厚生年金の被保険者となったような場合、20歳未満であっても、厚生年金の保険料を払わなくてはいけません。

ここで間違えやすいのは、国民年金(第1号被保険者)の場合、20歳になってから保険料の支払い義務が生じる(20歳未満の場合には保険料は払う必要がない)という点です。

たとえば、高校卒業後に短時間のアルバイト(厚生年金の被保険者になっていない)として働くような場合には、20歳になるまでは、国民年金の保険料は払わなくていいということです。

厚生年金の場合と国民年金(第1号被保険者)の場合で制度が異なりますので、注意が必要です。

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このように回答をすると、さらに「厚生年金の保険料には、国民年金の保険料(に相当するもの)も含まれているということですが、20歳未満の期間は国民年金(老齢基礎年金)の金額には反映されないと聞きました。もらえない年金の保険料を払うのはいやなので、20歳になるまで、厚生年金保険料がその分安くならないのですか?」という質問をされることがあります。

もっともな質問だと思います(かなりするどい質問です)。

ただ、残念ながら、保険料が安くなるような制度はありません。

20歳未満であっても、厚生年金の保険料は20歳以上の人と同じ方法で計算します

20歳未満であっても、厚生年金の被保険者は、「国民年金の第2号被保険者」になっているのです。

もっとも、ご心配のように、20歳未満の期間が老齢年金の金額にまったく反映されないというわけではありません(老齢厚生年金には20歳未満の期間も全額反映されます)。

たしかに、国民年金の老齢基礎年金の場合には、20歳未満の期間は金額に反映されませんが、その部分は別に厚生年金の経過的加算という制度で反映されることになっています(ただし、経過的加算には上限がありますので、すべてが反映されるとは言い切れません。これは少し難しい話になりますので詳細は省略します)。
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親の扶養に入れば、子の国民年金の保険料は払わなくていいのですか?【年金の常識2】

今さら聞けない 年金の常識(2) ~被扶養者である子と国民年保険料の関係

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「いまさら聞けない 年金の常識」シリーズです。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第2回目の質問はこちらです。

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質問「親の扶養に入れば、子の国民年金の保険料は払わなくていいのですか?」

回答:そのような制度はありません。原則として、子が20歳になれば、子の国民年金の保険料の支払い義務が生じます。

 

解説

この質問は、会社員の妻などが被扶養配偶者として国民年金の第3号被保険者になった場合に、国民年金の保険料を払わなくていいという制度を、子の場合にも適用できるのではないかと勘違いされているものと思われます。

国民年金の第3号被保険者になれるのは、配偶者などの場合で、子の場合には適用されませんので、子が20歳になれば原則として子の国民年金の保険料を払わなくてはいけません。

なお、間違えやすい制度に、健康保険の被扶養者制度があります。

健康保険の被扶養者には子も含まれますので、子が被扶養者の要件を充たす場合には、親の(勤務する職場の)健康保険の被扶養者となれます。

子が親の健康保険の被扶養者になった場合には、子が国民健康保険に加入する必要はありません。

厚生年金と健康保険は、意外と混同しやすいので、注意が必要です。

 

経済的な理由などで国民年金保険料の支払いが困難な人には、免除や猶予という制度が用意してあります。

国民年金保険料が「未納」とならないように、積極的に免除や猶予の制度を活用していただければと思います。

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保険料を払いたくないので、年金を辞めることはできますか?【年金の常識1】

いまさら聞けない 年金の常識(1) ~保険料支払い忌避による公的年金の辞退(任意脱退)

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今回から「いまさら聞けない 年金の常識」シリーズをスタートします。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していくという企画です。

第1回目の質問はこちらです。

 

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質問「保険料を払いたくないので、年金を辞めることはできますか?」

回答:できません(国民年金、厚生年金)。

 

国民年金にしても、厚生年金にしても、要件を充たす人は加入する義務が法律で定められています。

公的な年金は、民間の保険のように、任意で入ったり辞めたりすることはできないのです(強制加入です)。

国民年金の場合は、原則20歳以上60歳未満の日本国内に住む人であれば強制的に加入しなければなりません。

厚生年金の場合は、常時従業員を使用する会社などの適用事業所に勤務している70歳未満の人で、臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除いて、就業規則や労働契約などに定められた一般社員の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上ある従業員は原則加入義務があります(また、所定労働時間及び所定労働日数が4分の3未満の従業員でも「短時間労働者」として加入義務が生じる場合もあります)。

厚生年金の保険料は給料から控除されるのが一般的ですので、それほど問題にはなりませんが、国民年金の場合は保険料を滞納すると、将来の老齢年金の額が少なくなったり(もらえなくなったり)、障害年金をもらうための資格を充たさなくなったり、強制的に差押を受けたりといった様々な不利益が生じるおそれがあります。

国民年金の場合、経済的理由などで保険料を払えない人には、保険料の免除や猶予の制度が使える場合もありますので、あきらめずに行政機関の窓口などでご相談されることをお勧めいたします。
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毎月の給料が変わっても厚生年金保険料や健康保険料が変わらない理由

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社会保険労務士の徳本博方です。

平成30年2月25日(日)、大阪市の本町で定例勉強会を開催しました。

テーマは「20代・30代シングルのための社会保険基礎知識」でした。

 

筆者はこういう社会保険の基礎知識をご説明する機会には、給料明細や源泉徴収票を正しく読めるようになることを目標にするのですが、その際に皆さまが厚生年金保険料や健康保険料がいつどうやって決まるのかを意外とご存じないことに気づきます。

そこで、今回は厚生年金保険料と健康保険料がいつどうやって決まるのかを簡単にご紹介したいと思います。
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現役社会人の皆さまの中にも「給料の額に比例して決まるんだろうな」と漠然と思っておられる人は少なくないのではないでしょうか(筆者も人のことは言えず、この仕事をする以前は詳しい知識はありませんでした)。

そう思っていらっしゃる人は、もしお手元に給料明細がある場合には、直近の何ヶ月分か(たとえば、12月、1月、2月支給分)を見比べてみてください。

時間外手当などで給料の額が毎月変わっていても、控除欄の厚生年金保険料と健康保険料の金額は変わっていないのではないでしょうか(それに対して、同じ控除欄でも雇用保険料や所得税の金額は増減があると思います)。

どうしてそのようになるかというと、厚生年金保険料と健康保険料の金額は、(毎月変動する可能性のある)給料の額そのものに保険料率をかけて計算するのではなく、「標準報酬月額」に保険料率をかけて計算しているからです(標準報酬月額×保険料率=保険料の金額ということです)。

そして、標準報酬月額は、いったん決まれば、毎月の給料が増減しても原則1年間(その年の9月から翌年8月まで)は変わらないというシステムになっています(保険料の計算を簡単にするためと言われています)。

では、標準報酬月額はいつ決まるのでしょうか。

まず、新入社員の場合は入社時に「資格取得時決定」を行い標準報酬月額が決まります。

そして、入社時以降の標準報酬月額は、1年に1度の「定時決定」(毎年7月1日時点で同日前3ヶ月間(4~6月)の給料の額の平均で9月以降の標準報酬月額を決めること)により決まるのが原則です(なお、定時決定の他にも、連続3ヶ月間の給料に著しい高低が生じた際や育児休業や産前産後休業が終わった際などにも標準報酬月額は改定されます)。

これは、①標準報酬月額が変わるときには、厚生年金保険料や健康保険料が変わるということを意味しています。

また、もう一つ、厚生年金保険料や健康保険料が変わる場合があります。

それは②保険料率が変わるときです。

標準報酬月額が同じでも、保険料率が変われば、保険料の金額が変わるのは当然なことです。

もっとも、一般の会社員の厚生年金に関しては、現在(労使合わせて)18.3%で保険料率が固定されていますので、②保険料率が変わるときというのは、健康保険の保険料率が変わるときということになります。

そして、協会けんぽの場合、原則毎年3月に健康保険料率の変更があります(この他にも40歳になって介護保険の被保険者になったときにも変更があります。65歳未満の人の場合、介護保険料に相当する額は健康保険料に含めて支払いますので、健康保険料が増えることになります)。

まとめると、厚生年金や健康保険は、①標準報酬月額の定時決定が反映される9月分の保険料(保険料は翌月払いなので、10月支給分の給料から控除)と、②健康保険料率が変わる3月分の保険料(4月支給分の給料から控除)1年に2回のタイミングで変わる(それ以外では原則固定されている)ということになります(なお、ちょっとした豆知識ですが、毎年4月に子ども子育て拠出金の保険料率も変わるのですが、これは事業主さんのみが負担するものなので、会社員の皆さまの給料から控除されるものではありません)。

このように原則として固定された保険料は、毎月いくら払うかの見込みが立てやすいという利点がありますが、仮に一時的に給料が減っても、決められた保険料を支払わなくてはいけないという欠点もあります。

極端な例でいえば、保険料が免除されない個人の都合で休業した場合、仮にその月の給料が0円であっても、標準報酬月額が変わらないなら、決められた保険料は支払わなければならないということなのです(その場合は保険料分は持ち出しになることもあるでしょう)。

いわゆる日給月給制や時給制等で基本給が固定されていない給与形態の場合には、特に気を付けたいところです。

 

以上、厚生年金保険料と健康保険料がいつどうやって決まるのかを簡単にご紹介しつつ、給料の増減にかかわらず保険料が変化しない理由をご説明いたしました。

社会保険の正確な知識は、税金の正確な知識と同じくらい大切なことだと思います(独立起業を考えている人には特に大切なことだと思います)。

「税金も社会保険料も給料から天引きだから、あまり関心がない」という人も、少し意識して給料明細を見てみることから始めてみてはいかがでしょうか。

少し宣伝になりますが、筆者は、ときどき社会保険の無料勉強会をやっています。

今回の勉強会では、起業を目指す人の参加があったので、起業者のための社会保険の知識(個人事業の場合と会社を立ち上げた場合の違い)や、人を雇った場合の社会保険の知識(強制適用の要件や事業主負担)についても概要をご説明いたしました。

興味のある人はお気軽にお問合せいただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

前回は、新社会人さんの5月の給料から引かれていく社会保険料について、書きました(詳しくはこちらに)。

簡単に言えば、給料からは、厚生年金保険料や健康保険料が引かれ、手取り額が思った以上に低くなるので、それをふまえて家計管理をしましょうというお話でした。

このお話をすると、ときどきこんな質問を受けます。

「給料から国民年金の保険料が引かれていないけど、まさか別に払うのですか?」

この方は、学生時代からちゃんと国民年保険料を納めてこられた方なのでしょう。

そういう方だからこそ、気になるところだと思います。

というのも、令和7年度の国民年金保険料は1ヶ月あたり1万7510円です。

もしも、結構な厚生年金保険料が給料から引かれたうえに、さらに国民年金保険料を負担するとなれば、本当に気が滅入ってくることでしょう。

でも、ご安心ください。

結論からいえば、厚生年金保険料を払っている方は、更に国民年金保険料を払う必要はありません。

もう少し詳しく言うと、厚生年金に加入している方は、同時に国民年金にも加入しているのですが、第2号被保険者という立場になり、国民年金保険料を支払わなくてよいのです(将来の国民年金はちゃんともらえます)。

まれに、新社会人さんの元に国民年金保険料の納付書が届くことがありますが、これは事務手続上のタイムラグから生じるものですので、厚生年金に加入した後には国民年金の保険料は払う必要はありません(日本年金機構のHPをご参照ください)。

ざっくり言えば、厚生年金保険料の中に国民年金保険料に相当するものが含まれていると考えてもらえればいいでしょう。

そうすると、たとえば、20万円の給料から引かれる厚生年金保険料は1万8300円ですので、この中に国民年金保険料相当(約1万7500円)が含まれていると考えると、逆に厚生年金保険料は安いのではなんて感じもしてきます。

ただ、これには理由がありまして、それは、給料から引かれている厚生年金保険料とほぼ同じ額を、会社が負担してるのです。

つまり、給料から約1万8300円引かれている場合には、会社と合計で約3万6600円の厚生年金保険料を支払っているということになります。

「社会保険料は労使折半」なんてことを聞いたことがあるかもしれませんね。

そういう意味では、厚生年金は意外とお得な感じがしてくるかもしれません(保険料が安いかどうかは別問題ですが)。

今回の話をまとめると、

  • 厚生年金に入っている人は、国民年金の保険料は払わなくていい
  • 給料から引かれている厚生年金保険料と同じ分だけ会社も支払っている

ということです。

是非、この2点は覚えておいていただければと思います。
さいごまでお読みいただきありがとうございました。

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