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「初診日問題」ってなに?【障害年金申請に役立つ実践知識】

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

障害年金の専門家(報酬をもらって障害年金申請を代理することのできる国家資格)である社会保険労務士が、「障害年金申請は自分でできる」をテーマに、障害年金申請に役立つ実践知識をお伝えしていくシリーズです。

今回のテーマは「初診日」。

 

初診日に関係して、筆者がよく聞くご質問やご相談としては、

  • 障害年金申請の初診日って簡単にわかるはずだと思うけど、何が問題なのかよくわからない
  • 障害年金申請の初診日で問題になるのはどういうケース?
  • 障害年金申請の初診日の問題に対処法はあるの?

といったものがあります。

 

そこで、この記事では、

  • 障害年金申請の「初診日問題」ってなに?
  • 障害年金申請の初診日問題が起きる具体的ケース
  • 障害年金申請の初診日問題の対処法

といった項目順にお伝えしていきます。

 

なお、障害年金については「請求」と表記する方が正確です。

しかし、「申請」という表記が一般的に使われていることもありますので、この記事ではわかりやすさを優先して、「申請」と表記することにします。

この記事の情報は、特別の記載のないかぎり、投稿日現在のものです。

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障害年金申請の「初診日問題」ってなに?

障害年金申請の情報をネットなどで調べていると、やたらと「初診日」という言葉を聞くと思います。

少し調べれば「初診日とは障害の原因となった傷病につき初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」という情報がすぐにでてくるでしょう。

それはそのとおりなのですが、ここでは実践的な知識として、初診日についてもう少し掘り下げてみようと思います。

それを「初診日問題」ということにしましょう。

ここでは、①初診日問題とは何なのか、②そもそも初診日にどうしてそこまでこだわるのか、③どうして初診日問題が起きてしまうのかについてみてきましょう。

 

初診日問題ってなに?

ここでの「初診日問題」とは、初診日が特定できずに障害年金申請に支障をきたす状態のことをいいます。

「初診日なんて初めて病院に行った日でしょ? それがわからないひとなんているの??」って思ったひとはいませんか?

たしかに、ふつうに考えれば、初診日の特定で苦労することはないように思えます。

ひとつの医療機関に通っていて通院期間も短い場合には、初診日問題が生じることはほとんどありません。

しかし、複数の病院に通っていたり、長期間にわたって通院をしているような場合にはどうでしょうか。

初診日問題が発生する可能性が高くなります。

そのため、この初診日問題が壁になって、障害年金申請をあきらめてしまうひとも現実にいるのです。

 

初診日問題の困ったところは、初診日が特定できなければ障害年金はもらえないということです。

これに対して、「もし初診日が特定できなくても、現時点で障害の状態にあることが医学的に証明できるなら、障害年金をもらえるんじゃないの?」と思ったひともいるかもしれません。

しかし残念ながら、現実はそうなっていません。

いくら現時点での障害の状態を医学的に証明しても、それだけでは障害年金はもらえないのです。

それほど障害年金申請において初診日は重要な要素だということです。

ではつぎに、どうして障害年金はそこまで初診日にこだわるのかを考えてみましょう。

 

初診日の特定はなぜ必要か?

障害年金が初診日にこだわる理由は大きく3つあります。

それは、

  • 初診日に加入していた年金を基準にしてどのような障害年金がもらえるかが決まる(加入要件。そもそも障害年金がもらえるのかどうかや障害厚生年金までもらえるのかどうかに影響)
  • 初診日の前日を基準にして保険料をちゃんと納めていたかどうかが決まる(納付要件。そもそも障害年金がもらえるのかどうかに影響)
  • 初診日を基準にして障害認定日が決まることがある(いつから障害年金がもらえるのかや認定日請求か事後重症請求かという申請の方法にも影響)

という理由です。

つまり、初診日が特定できないと、そもそも障害年金がもらえるのか、もらえるとして障害厚生年金までもらえるのか、いつから障害年金がもらえるのかが決まらないということなのです。

しかし、初診日=初めて病院で診療を受けた日の証明がどうしてそんなに難しいのでしょうか。

初診日問題がなぜ起きるのかを考えてみましょう。

 

初診日問題はなぜ起きる?

初診日問題は、初診日当時の医療記録が現時点で確認できないことが原因で起きます。

医療記録の保存期間が経過するなどの理由で、初診日の医療記録が確認できないということです。

そして、それが起きるのはだいたい次のようなケースです。

  • 終診(転医・中止)
  • 別の傷病が原因で現在の疾病が生じている
  • 現在の疾病が別の疾病と同一疾病として扱われてしまう

それぞれの具体的なケースをみていきましょう。

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障害年金申請の初診日問題が起きる具体的ケース

終診(転医・中止)

初診日当時の医療機関での診療が終わって時間が経過しているために、医療記録が破棄されているようなケースです。

別の病院に変わった場合や治療を中止したような場合です。

医療機関そのものが廃院となっているような場合もあります。

物理的に記録がなければ、医療機関も初診日を証明することができないのです。

 

別の傷病が原因で現在の疾病が生じている

現在の疾病で初めて病院で診療を受けた日が初診日だと思っていたら、その疾病の原因となった傷病が確認されて初診日がさかのぼってしまうケースがあります。

これを「相当因果関係」の問題といったりもします。

たとえば、腎不全によって人工透析を受けることになって障害年金を申請しようとしたところ、その原因が糖尿病だと認められたために、糖尿病によって初めて病院で診療を受けた日が初診日となるようなケースがこれにあたります。

糖尿病は治療に長期間を要することもあるため、相当因果関係が認められることによって初診日が10年以上さかのぼってしまうということも起こりえます。

糖尿病の他にも、肝炎と肝硬変、事故や脳血管疾患によって精神障害を発症したような場合などに相当因果関係があるとされています。

もっとも、初診日の長期間のさかのぼりの問題は糖尿病ほどではありませんが。

いずれにしても相当因果関係によって初診日がさかのぼったために、医療記録が確認できない状態が起こりえるのです。

 

現在の疾病が別の疾病と同一疾病として扱われてしまう

精神疾患の場合に起こりやすいのですが、現在の疾病が別の疾病と同一疾病として扱われるケースがあります。

たとえば、過去にA病院で不眠を訴えて治療を受けていた場合で、その後何年か経ってB病院で統合失調症の診断を受けた場合に、A病院での初めての診療日が初診日とされるようなケースです(神経性不眠症と統合失調症が必ず同一疾病になるというわけではありません。具体的な事情のもとで同一疾病として認定される場合があるということです)。

この他にも発達障害とうつ病、知的障害とうつ病なども同一疾病として扱われることがあります。

このような場合も、初診日が先発した別の疾病の診療日までさかのぼることになります。

なお、先発の疾病が知的障害である場合には、知的障害の初診日は出生日とされていますので、初診日の特定の問題は生じません(ただし、障害厚生年金がもらえないという別問題が発生します)。

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障害年金申請の初診日問題の対処法

受診状況等証明書が添付できない申立書

転院などによって現在の医療機関で初診日の証明ができない場合には、初診日に受診した医療機関が作成した「受診状況等証明書」を提出するのが原則です。

しかし、初診日問題が生じる場合には「受診状況等証明書」が提出できないことがほとんどです。

そういった場合には「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出することになります。

そして、いくつかの医療機関の受診歴がある場合には、古い順に「受診状況等証明書」がとれるまで繰り返していきます。

しかし、受診状況等証明書が添付できない申立書それだけで初診日が認められることはまずありません。

それを補うための書類や資料が必要になります。

たとえば、

  • 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
  • 上記手帳等申請時の診断書
  • 生命保険、労災保険等の給付申請時の診断書
  • 事業所等の健康診断の記録 ・・・など

の客観的な裏付け資料によって初診日を特定する必要があります。

では、こういった初診日を特定できる客観的な裏付け資料がない場合にはどうしたらいいのでしょうか。

この点については「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」という通知があります。

その概要を確認していきましょう。

 

障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱い

初診日を明らかにすることができる書類を提出できない場合の取り扱いを簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 20歳前に初診日がある場合、2番目以降の医療機関の受診状況等証明書から、障害認定日が20歳前であることが確認できる場合で、かつその受診日前に厚生年金等の加入期間がない場合
  • 2番目以降に受診した医療機関による受診状況等証明書に、医療機関が作成した資料(診療録等)を基にした請求者申立の初診日が記載されている場合
    • 請求の5年以上前に記載された資料を基にしたもの ⇒ 請求者の申立日を初診日とできる
    • 請求の5年以上前に記載された資料を基にしたものではないが、相当程度前であるもの ⇒ 参考資料(領収証など)と合わせて請求者の申立日を初診日とできる
  • 「初診日に関する第三者からの申立書」(第三者証明)を添付する場合
    • 「第三者」とは三親等以内の親族以外の者をいう
    • 初診日が20歳前のとき(厚生年金加入期間を除く) ⇒ 第三者証明(原則複数必要)だけでよい
    • 初診日が20歳以降(20歳前の厚生年金加入期間の場合含む) ⇒ 第三者証明(原則複数必要)+その他の参考資料が必要
    • 第三者が担当医師等医療従事者であればそれのみの証明でよい(その他の参考資料は不要。複数不要)
  • 一定期間(始期と終期を参考資料等で特定する必要がある)内に初診日があって、そのどの時点でも納付要件を満たす場合
    • その期間中同一の公的年金に加入 ⇒ 請求者の申立日を初診日とできる
    • その期間中異なる公的年金に加入(20歳前や60歳以上65歳未満の待期期間の混在を含む) ⇒ 障害基礎年金は認められるが、障害厚生年金は参考資料が必要

ここでは概要を紹介するにとどめますが、初診日問題については国も救済措置を講じていることがよくわかります。

初診日問題の改善に向けて評価できる取扱いだと思っています。

もちろんすべての初診日問題が解決するわけではありません。

また、これまでに初診日問題で障害年金をあきらめてしまったひとたちの中には、こういった取扱いがなされていることを知らないでいるひとがいるもの事実です。

再度の障害年金申請で支給決定が見込まれる場合もありえますので、こういった取扱いの周知徹底が望まれるところです。

 

さいごに

今回は障害年金の申請の初診日問題について解説してきました。

筆者の基本的スタンスは「障害年金は自分で申請できる」というものです(社会保険労務士がそんなことをいうのも少しへんかもしれませんが)。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

前後の記事

前の記事:障害年金申請に必要な書類を集める前に知っておくべき3つの壁

後の記事:まだ

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障害年金申請に必要な書類を集める前に知っておくべき3つの壁

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

筆者は、障害年金の専門家(報酬をもらって障害年金申請を代理することのできる国家資格)である社会保険労務士として、

  • 障害年金申請に必要な書類って集めるのがたいへんそう。注意しておく点はある?
  • 障害年金申請に必要な書類が集められないときはどうなるの?
  • 障害年金申請に必要な書類を集める前に準備することはある?

このようなお悩みやご質問をお聞きすることがあります。

そこで、今回は障害年金の申請の際の書類について解説していこうと思います。

 

最初に簡単な自己紹介をします。

筆者は、17年以上弁護士事務所の職員として働いた経験から、現在は「権利擁護型の社会保険労務士」として、成年後見を専門とした法人の事務局長を務めつつ、弁護士の先生と協働して、障害のあるひとやそのご家族の困りごとについて相談会を行ったりしています(年金相談と家計相談を主に担当しています)。

もちろん、そういったひとたちからご依頼をいただき、障害年金申請(請求)や更新手続き、額改定請求などの代理申請を行うこともあります。

直近でお受けした事例をあげると、本当は障害年金申請をできたのにそれに気づいていなかったひとの代理申請を行って、過去3年超分の障害基礎年金300万円以上の受給決定をえることができました。

 

この記事では、

  • 障害年金申請に必要な書類を集める前に知っておくべき3つの壁
  • 障害年金申請に必要な書類が集められない場合にやるべきこと
  • 障害年金申請に必要な書類を集める前にやっておきたい事前準備

といった項目をお伝えしていこうと思います。

なお、障害年金については「請求」と表記する方が正確です。

しかし、「申請」という表記が一般的に使われていることもありますので、本記事ではわかりやすさを優先して「申請」と表記することにします。

この記事の情報は投稿日(2020.8.30)現在のものです。

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障害年金申請に必要な書類を集める前に知っておくべき3つの壁

障害年金申請に必要な書類は、大きく分けて①自分で作成する書類(「年金請求書」や「病歴・就労状況等申立書」など)、②手持ちの書類(銀行の通帳や各種障害者手帳など)、③役所などで発行してもらう書類(「住民票」や「所得証明書」など)、④医療機関で作成してもらう書類(「診断書」や「受診状況等証明書」など)の4種類があります(年金や障害の種類、家族構成などによって必要な書類は異なります。詳しくは、この記事の最後に日本年金機構のサイトをリンクしておきますので、そちらをご参照ください)。

この中で、①自分で作成する書類、②手持ちの書類、③役所などで発行してもらう書類については集めるのにそれほど苦労することはないでしょう。

しかし、障害年金申請に必要な書類のなかでも④医療機関で作成してもらう書類については、いろいろと困ったことが起きることがあります。

そこで、この記事では④医療機関で作成してもらう書類について、よくある困りごとを「障害年金申請に必要な書類を集める前に知っておくべき3つの壁」としてご紹介したいと思います。

その「壁」とは、①主治医が診断書を書いてくれない、②障害認定日の診断書が取れない、③受診状況等証明書(初診日の証明)が取れないの3つです。

 

主治医が診断書を書いてくれない

「お医者さん(現在の主治医)が診断書を書いてくれない」という話は意外とよく聞く困りごとの一つです。

「え、そんなことあるの?」と思われる人もいるかもしれませんが、現実問題としてあります。

ただ、その理由はさまざまです。

たとえば、主治医が交代して日が浅いので書けないとか、必要な検査をしていないので書けないといった情報不足を理由とするものから、障害年金受給のために期待される内容のものが書けないといった内容に関する理由、なかには(以前障害年金の診断書でトラブルになったので)障害年金の診断書はもう書きたくないといった感情的な理由まであるようです。

いずれにしても、主治医が診断書を書いてくれないというのは、患者さんからすればかなり戸惑うはず。

診断書がなければ障害年金申請の手続きが進みません。

まずは主治医としっかり意思疎通を行って理由をよく確認してから、必要な診察や検査があるならそれを受け、誤解があるならそれを解消して依頼をすることになります。

基本的に現在の主治医であれば現在の診断書を書いてくれるので、簡単にあきらめないことが必要です(法律上も「正当事由」がなければ医師は診断書作成を拒むことはできないとされています)。

 

障害認定日の診断書が取れない

原則として障害認定日から1年以上を経過してから障害年金申請を行う場合には現在の診断書(請求日前3ヶ月以内のもの)のほかに、障害認定日の診断書(障害認定日から3ヶ月以内のもの)が必要になります。

この障害認定日の診断書が取れないというのは障害年金申請の大きな壁の一つです。

障害認定日というのは、原則として初診日から1年6月を経過した日か症状固定日のどちらか早い方(障害の種類によっては特例あり)のことで、障害認定日の翌月までさかのぼって障害年金がもらえます(最大5年間さかのぼれます。これを「認定日請求(遡及請求)」といいます)。

こうした認定日請求をするには、障害認定日に障害等級に該当していることを認定してもらわないといけません。

そこで、認定日請求をするには、障害認定日の診断書が原則必要になるわけです。

しかし、障害の種類によっては、初診日が何十年も前にあるケースもあって、その場合には障害認定日も何十年も前になります。

当時の医療機関が廃業していたり、医療記録が既に廃棄されていたりして、障害認定日の診断書が取れないというケースが起こりうるのです。

場合によっては、障害認定日当時に必要とされる診察や検査が行われていないので、障害認定日の診断書が取れないというケースもあります。

 

受診状況等証明書(初診日の証明)が取れない

現在の診断書や障害認定日の診断書がとれたとしても、受診状況等証明書(初診日の証明)が必要になる場合があります。

それは、初診日の医療機関が診断書作成の医療機関と異なる場合(転院している場合など)です。

この受診状況等証明書(初診日の証明)が取れないというものよくある壁の一つです。

初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医療機関で診療を受けた日のことです。

この初診日は、そもそも障害年金がもらえるのか(保険料の納付要件を満たすのか)、どんな障害年金がもらえるのか(障害厚生年金がもらえるのか)、いつから障害年金がもらえるのか(障害認定日はいつになるのか)といったさまざまな基準日になります。

このように初診日の特定はとても重要で、そのための書類が受診状況等証明書です。

ところが、初診日は障害認定日より前にあるのが原則です(まれに同時の場合もありますが)。

なので、障害認定日の診断書が取れないのと同様に、受診状況等証明書が取れないといったケースが起こりうるのです。

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障害年金申請に必要な書類が集められない場合にやるべきこと

このような「壁」がでてきた場合にはあきらめるしかないのでしょうか。

ここでは障害年金申請に必要な書類が集められない場合にやるべきこととして、①代替措置や救済措置の検討、②請求方法の切り替えの検討、③専門家への依頼の検討の3つを紹介していきます。

 

代替措置や救済措置の検討

こういった障害年金申請に必要な書類が集められないような場合のために、代替措置や救済措置が用意されている場合があります。

たとえば、受診状況等証明書が取れない場合には「受診状況等証明書が添付できない申立書」を受診状況等証明書に代えて提出することができます。

もっとも、それだけで初診日を認定してくれることはまずないので、裏付けとなる添付資料が必要となります(身体障害者手帳や医療機関の領収証など)。

初診日が一定の期間内にあると確認することができれば、一定の条件下で初診日が認められることもあります。

また、診断書が取れない場合にも、原因を分析して代替措置が取れないか検討することも大切です(たとえば、カルテはあるのに主治医がいないので診断書が書けないというような場合には、当時の主治医を探して診断書作成を依頼したり、現在の主治医に当時のカルテを元に診断書を書いてもらったりといったこともあります)。

ここでは、これらの詳細は割愛しますが、このように代替措置や救済措置がとれる場合もあるので、簡単にあきらめないようにしてください。

 

請求方法の切り替えの検討

どうやっても障害認定日の診断書が取れないという場合には、請求方法の切り替えを検討するのもひとつの方法です。

障害認定日の診断書が必要なのは認定日請求(遡及請求)をするためでした。

いったんそれを保留して(場合によってはあきらめて)、事後重症請求に切り替えるという方法です。

事後重症請求は、障害年金の申請日(請求日)の翌月から障害年金がもらえるという申請(請求)方法です。

なので、事後重症請求の場合、障害認定日までさかのぼって障害年金を受給することはできません。

その代わり、診断書については、障害認定日の診断書は不要で、現在の診断書があれば障害年金の申請ができます。

 

本来の事後重症請求は、障害認定日時点では障害年金がもらえるほどの障害の程度にない場合で、その後に障害年金がもらえる程度に障害が悪化したようなケースが想定されています(そもそも認定日請求ができないケース)。

しかしながら、障害認定日の診断書が取れず、障害認定日の障害の程度を証明できないようなケースでも事後重症請求ができます。

事後重症請求は、障害年金の申請日(請求日)の翌月から障害年金がもらえるので、申請日(請求日)が遅くなれば遅くなるほど、障害年金がもらえる月も遅くなる(=トータルでもらえる障害年金の額が少なくなる)といった特徴があります。。

事後重症請求は時間勝負の請求方法といえます(そのため、月末ギリギリに申請することもあります)。

なお、事後重症請求が認められた後に、認定日請求をすることも可能です(この場合には障害認定日の診断書が必要です)。

 

専門家への依頼の検討

「障害年金申請は自分でできる」というのが筆者の基本的スタンスです(「障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】」をご参照ください)。

しかし、障害年金申請に必要な書類が集められない場合に代替措置や救済措置を検討する場合や、認定日請求をやめて事後重症請求に切り替えるといった場合には、正直申し上げて自分だけで判断するのはかなり困難なのではないかと思います。

このような場合には、社会保険労務士などの専門家に相談した方がいいケースもあります。

自分だけで行き詰まるくらいなら、専門家への依頼を検討してもいいのではないでしょうか。

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障害年金申請に必要な書類を集める前にやっておきたい事前準備

こういったケースをふまえて、障害年金申請に必要な書類を集める前にやっておきたい事前準備についてもお伝えしておこうと思います。

それは、①記録と記憶の整理、②医療機関の現状や主治医在籍の確認、③主治医との信頼関係の構築の3つです。

 

記録と記憶の整理

事前準備としては、まず記録と記憶の整理をしておきましょう。

これまでみてきたとおり、障害年金申請に必要な書類でたいへんなのは、医療機関に関するものです。

そこで、現在保管している医療機関の領収証や診療報酬明細書、お薬手帳、医療保険の請求につかった請求書や診断書の写しや保険金給付時の資料など、使えそうなものをできるだけ整理してみてください。

あわせて、日記や手帳などを参考に自分の記憶を整理することも大切です。

当時の主治医の名前や、場合によっては看護師の名前を覚えていたことが後々役に立ったということもあります。

時系列にそって整理しておきましょう。

早いうちにこれをやっておくと、医療機関対応だけでなく、年金事務所での相談がスムーズにできたり、「病歴・就労状況等申立書」を作成する際の参考資料になったりもします。

 

医療機関の現状や主治医在籍の確認

診断書作成のために、障害認定日当時の医療機関が現在もあるのか、当時の主治医が今もそこにいるのかといった情報をできる範囲で確認しておきましょう。

医療機関のホームページなどで確認できることもありますし、主治医の名前を検索することでみつかることもあります。

また知り合いに聞くと、意外なつてで情報がもらえることもあります。

できるかぎり情報を収集しておきましょう。

 

主治医との信頼関係の構築

これは事前準備というのとは少し違うかもしれませんが、現在の主治医との信頼関係の構築も大切なことです。

現在の診断書をスムーズに書いてもらうにも主治医との信頼関係は必要ですし、何より効果的な治療の継続のためにも主治医との信頼関係は不可欠です。

日頃の診察時から積極的な情報提供や意思疎通をしっかり行って、診断書作成に協力してもらえる関係性を築いておきたいところです。

しかしながら、どうしても相性が合わないというケースもあるでしょう。

どうしてもという場合にはセカンドオピニオンや転院を検討してもいいかもしれません。

いずれにしても、主治医との信頼関係を構築しておくことは、障害年金申請のためだけではなく、治療のためにも必要なことです。

 

さいごに

今回は障害年金の申請の際の書類について解説してきました。

さきほども少しのべましたが、筆者の基本的スタンスは「障害年金は自分で申請できる」というものです(社会保険労務士がそんなことをいうのも少しへんかもしれませんが)。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

【リンク集】

 

前後の記事

前の記事:障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

後の記事:「初診日問題」ってなに?【障害年金申請に役立つ実践知識】

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障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

筆者は、障害年金の専門家(報酬をもらって障害年金申請を代理することのできる国家資格)である社会保険労務士として、

  • できるだけお金をかけたくないから自分で障害年金を申請したいけど、大丈夫だろうか
  • 自分で障害年金を申請したいけど、どんな準備をしたらいいのか知りたい
  • 外出するのもしんどいので、障害年金の申請について、できるだけネットや書籍で調べておきたい

このようなお悩みやご要望をお聞きすることがあります。

そこで、今回は、障害年金の申請(請求)について解説していこうと思います。

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最初に簡単な自己紹介をします。

筆者は、17年以上法律事務所職員(パラリーガル=弁護士の補助業務)として働いていて、2011年から現在までの9年間は高齢者や障害のあるひとのサポート(成年後見業務を行う法人の事務局長)を行っています。

また、権利擁護型の社会保険労務士として、弁護士の先生と協働して、障害のあるひとやそのご家族の困りごとについて、相談会を行ったりもしています(年金相談と家計相談を主に担当しています)。

もちろん、そういったひとたちからご依頼をいただき、障害年金申請(請求)や更新手続き、額改定請求などの代理申請を行うこともあります。

直近でお受けした事例をあげると、本当は障害年金申請をできたのにそれに気づいていなかったひとの代理申請を行って、過去3年超分の障害基礎年金300万円以上の受給決定をえることができました。

そういった障害年金の申請に携わるものの一人としていわせていただきます。

結論からいいますね。

障害年金は自分で申請できます。

 

ただし、いくつか準備しておかなければいけないポイントもあります。

そこで、本記事では、

  • 障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】
  • 障害年金を申請する前に準備しておくべき3つのポイント
  • 障害年金を申請する前に参考にしていただきたい書籍【5選】

といった項目をお伝えしていこうと思います。

なお、障害年金については「請求」と表記する方が正確です。

しかし、「申請」という表記が一般的に使われていることもありますので、本記事ではわかりやすさを優先して、「申請」と表記することにします。

本記事の情報は投稿日(2020.8.23)現在のものです。

 

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

結論を繰り返しますが、障害年金は自分で申請ができます。

委任状があれば、ご家族でも申請ができます(ただし、報酬をもらって代理できるのは、社会保険労務士や弁護士などに限定されています)。

理由はシンプルです。

障害年金の等級認定審査は、国(ないし日本年金機構)の定める法律や基準に従って、医師が作成した診断書等に基づいて客観的に行われるからです。

社会保険労務士や弁護士であっても、最終的な医師の診断結果には干渉できません。

黒を白にするような裏技や抜け道はないと思ってください(ただし、社会保険労務士などの専門家がお手伝することで、白を黒にしないようにすることはできると思っています)。

また、制度や手続き面での相談は、年金事務所や行政機関等の窓口で受け付けています。

公的機関での支援体制もちゃんと準備されているのです。

実際のところ、筆者がこの9年間にかかわった成年後見業務のうち9割ちかくのひとが、自分やご家族で申請して障害年金を受給しておられました(残りの1割程度のひとが、実際には障害年金がもらえるのに気づいていなかったり、障害の程度が悪化して等級が上がっているのに気づいていなかったケースでした)。

このように障害年金は自分で申請ができるのです。

 

ただ、少し気を付けないといけないこともあります。

実際に自分やご家族で申請して障害年金を受給できたひとに話を聞くと

  • 年金事務所や行政機関の年金相談窓口に何度も足を運んでたいへんだった」
  • 「年金事務所や行政機関の年金相談窓口でいろいろ聞かれたけど、記憶があいまいでうまく答えられなかった」
  • 「お医者さんに診断書を書いてもらうのに、どうしていいのかわからなくて戸惑った」

というような経験をされたひとが少なからずいらっしゃいます。

障害年金の申請は、人生でそう何度も経験することではありません。

スムーズに手続きを行うには、それなりの情報収集と準備が必要です。

多分、この記事をご覧の皆さまもそういった情報収集をされているところなのではないでしょうか。

そこで、次は、障害年金を申請する前に準備しておくべポイントを3つにしぼってお伝えします。

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障害年金を申請する前に準備しておくべき3つのポイント

基本的な情報を知る

障害年金の制度や申請手続といった基本的な情報を知らないひとは、まずここから準備しましょう。

障害年金を受給しているひとは日本の人口約1億2000万人のうちの220万人未満です(平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業年報 参照)。

割合にすれば2%未満のレアケースということです。

なので、障害年金の制度や申請手続といった基本的な情報は、知らなくて当たり前なのです。

 

しかし、何も知らないまま動き始めるとどうなるでしょうか。

基本的な情報を得るために、何度も年金相談窓口を往復することになります。

ただでさえ、体調不良や精神的につらいひとが多いはず。

何度も年金相談窓口を往復して、時間をかけて基本的な情報を教えてもらうことは避けたいところです。

たとえば「障害基礎年金と障害厚生年金の違い」「初診日と障害認定日の違い」「認定日請求と事後重症請求の違い」「診断書の作成日と現症日の違い」といった事項をちゃんと答えられるでしょうか。

こういった基本的な情報はネットや書籍で調べられます。

もちろん年金相談窓口で1から教えてもらうこともできますが、年金相談窓口でスムーズに会話ができるくらいには事前に情報収集をしておいた方がいいと思います。

 

自分の情報をまとめる

自分の病歴や職歴などの情報を事前にできるだけまとめておくことも大切です。

とくに、現在の障害に関して、初めて病院に行った日(これを初診日といいます)の情報はとても重要です。

病院や薬局の領収証やお薬手帳などの医療記録を確認しておきましょう。

その他にも、任意の医療保険の入通院給付金を請求したときの書類や、場合によっては、会社の健康診断の結果、当時の日記や手帳といったものも参考になります。

初診日がかなり以前にあるようなケースでは、現時点で初診日を医療機関が証明できないこと(医療機関の記録の保存期間が過ぎていたり、その医療機関が既に廃業していたりする場合など)もあります。

そういうときのためにも、初診日の情報を集めておいて損はありません。

また、初診日が20歳より前にあるような場合には、通知表などの学校での記録が役に立つこともあります。

 

使えそうな記録が用意できたら、それらを元に自分の記憶もたよりにしながら、自分の情報を時系列にそってまとめてみてください。

初診日はもちろん、症状があらわれたころの時期や状況、治療の経緯などの情報を、通院していた病院ごとに区切ったり、職歴に沿って区切ったりしてまとめておくといいと思います。

こういった情報が準備してあれば、年金相談窓口でのうけこたえもスムーズになるでしょう。

また、障害年金を申請する際には「病歴・就労状況等申立書」という書類を作成することになります。

その際の参考資料にもなります。

 

ただし、注意点もあります。

記録や記憶の中には必ずしも正確ではないものもあります。

たとえば、医療機関の領収証があったとしても、それが本当に現在の障害の原因になった病気やケガのものかはわからないこともありえます(単なる風邪などの他の病気で通院した際のものかもしれませんし)。

ですので、よほど確定したものでない限り、この段階では確定情報として扱うのはやめたほうがいいでしょう。

まずは参考資料のひとつとして準備してください。

 

医師に伝えるべき情報を知る

適切な診断書を作ってもらうために、どのような情報を医師に伝えるべきかを知っておきましょう。

障害年金の等級は、医師の作成する診断書をもとにして認定されます。

つまり、適切な診断書の作成こそが、障害等級認定の最重要事項です。

ここでの準備で8割方が決まるといっても過言ではないと思います。

 

では、どのような情報を医師に伝えればいいのでしょうか。

それは、認定基準に沿った診断書を書いてもらうのに必要十分な情報です。

なぜならば「障害年金をもらう」=「認定基準に該当する」ことだからです。

 

ここで「認定基準ってなに?」と思ったひとはいませんか。

正式には『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』といいます。

診断書などで確認できる障害の程度が、認定基準に該当するかどうかで、障害年金がもらえるかどうか、もらえるとして何級になるかが決まります。

つまり、認定基準は、障害年金の「キモ」といってもいい、超重要情報なのです。

 

しかしながら、筆者の印象としては、これを知らずに障害年金の申請をするひとが多すぎます。

障害の認定基準は障害の種類や部位などによって細かく決められています。

もちろん、これらの全部を知る必要はありません。

しかし、自分の障害に関する認定基準だけは必ず確認しておきましょう。

また、自分の障害に関する診断書の書式にも目を通しておいた方がいいと思います。

 

さらに、うつ病などの精神障害で障害年金を申請しようとしているひとは、認定基準とあわせて『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』、『診断書(精神の障害用)の記載要領』、『日常生活及び就労に関する状況について(照会)』も必読です。

とくに『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』の[表1 障害等級の目安]はしっかり理解してください。

この目安はとても重要です。

この目安で「1級または2級」や「2級または3級」の部分に該当するひとは、上位等級に該当できなるようにしっかりした準備が必要になります。

 

これらの認定基準等は、すべて日本年金機構のホームページで公開されています。

ネットで簡単に調べられます。

本記事の最後にリンクを貼っておきます。

これらをちゃんと読みましょう。

 

これらの認定基準等をしっかり理解できていれば、どのような情報を医師に伝えるべきかもわかってくるはずです。

認定基準等を読みながら、どのような情報が必要なのかを書き出してみてください。

そのつぎに、それらを通常の診察や検査で医師に伝わる情報と、通常の診察や検査だけでは医師には伝わりにくい情報にわけてみてください。

たとえば、日常の正確な自覚症状、生活や就労での具体的な困難さやそれを克服するための努力、家族や職場のサポート体制といった情報は、通常の診察や検査だけでは医師には伝わりにくい情報です。

こういった情報は、意識して医師にしっかり伝えていきましょう。

自分の言葉で書面にまとめて、医師に伝えるのもいいと思います。

 

ただし、ここで注意事項があります。

嘘はダメです。

詐病や仮病がダメなのは言うまでもありません。

でも、ここでお伝えしたいのは、その逆もダメだということです。

医師の前になると、頑張りすぎるひとがいます。

できないことをできると言ったり、本当はつらいのに大丈夫ですと言ったり。

これらも嘘になります。

正確な情報を医師に伝えてくださいね。

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障害年金を申請する前に参考にしていただきたい書籍【5選】

さいごになりますが、障害年金を申請する前に参考にしていただきたい書籍をご紹介しておきます。

もちろんこれら以外にも良書はたくさんありますが、Amazonなどで比較的入手しやすいものを選んでみました。

書籍の画像はAmazonのサイトにリンクしています。

書籍の内容等詳細はそちらをご参照ください。

『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』は、いろいろと継ぎはぎがあって前後がまとまっておらず、少し読みにくい部分があるのはたしかです。

参考書籍では、そのあたりもしっかりまとめてあります。

基本的な情報を確認したり、認定基準を理解する手助けになるはずです。

 

図書館で借りるのもいいと思います(お値段が結構高いものもありますし)。

ただし、認定基準や書式は随時新しいものに変わっています。

最新の情報が反映されているものを選びましょう。

 

この記事を読んでくださったひとが、適切な障害年金をスムーズに受給できますようお祈りいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

【参考書籍】

ご参考として、障害年金関係の書籍の購入をご検討の方向けに、アマゾンのスポンサードリンクを貼ります(こちらはアフェリエイト広告です)。

①『知りたいことが全部わかる! 障害年金の教科書』(ソーテック社)

価格もリーズナブルで内容もわかりやすいです。

著:漆原 香奈恵, 著:山岸 玲子, 著:村山 由希子
¥1,509 (2025/04/23 14:24時点 | Amazon調べ)

②『障害年金相談対応マニュアル 』(新日本法規出版)

専門家向けの相談マニュアルです。

専門家の段取りもわかりますし、書式も豊富でシンプルな内容です。

著:大城章顕, 著:梅川貴弘, 著:椎野太郎, 著:土屋寿美代, 著:藤井しのぶ, 著:横山玲子, 編集:椎野登貴子
¥3,762 (2025/04/23 14:27時点 | Amazon調べ)

③『続 よくわかる 障害認定基準と診断書の見方』 (日本法令

障害認定基準と診断書の見方を知りたいひとにはありがたい一冊です。

著:宇代 謙治
¥5,060 (2025/04/23 14:29時点 | Amazon調べ)

④『新訂版 詳解障害年金相談ハンドブック』(日本法令)

ページ数が多く専門家向けですが、内容は多岐にわたってかなり充実しています。

著:安部 敬太, 著:岡部 健史, 著:川島 奈緒美, 著:吉井 章子, 著:吉野 千賀
¥14,586 (2025/04/23 14:32時点 | Amazon調べ)

⑤『法律家のための障害年金実務ハンドブック』(民事法研究会)

弁護士や司法書士向けの書籍ですが、困難事例の裁判例などを知りたい人には参考になります。

編集:日弁連高齢者 障害者権利支援センター
¥4,180 (2025/04/23 14:34時点 | Amazon調べ)

 

【リンク集】

※日本年金機構のホームページにいきます

 

前後の記事

前の記事:ここまで違う 障害年金2級と3級の受給額

後の記事:障害年金申請に必要な書類を集める前に知っておくべき3つの壁

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国民年金と厚生年金で障害年金2級と3級の受給額がこれほどまでに違う現実とその理由【厚生年金が断然有利】

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、年金の国家資格である社会保険労務士が、障害年金の2級と3級の受給額の違いを解説していきます。

「なんでこんなに違うの?」と驚かれるかもしれませんが、しっかり説明していきますので、最後までお付き合いください。

障害年金1級は2級の1.25倍って聞くけど、2級と3級の金額の違いはどうなんだろう?

多分3級は2級よりももらえるお金が少ないんだろうけど、実際はどんなかんじなのか知りたいな


このような疑問をお持ちの人向けの記事です。

たしかに、「障害年金1級は2級の1.25倍」という情報はよく聞きますが、意外と2級と3級の違いは知らない人もいるのではないでしょうか。

今回のポイントは3つです。

それは、

  • 障害基礎年金には3級はない
  • 障害厚生年金3級は2級と計算方法が同じだけど、最低保障額がある
  • 障害厚生年金2級には障害基礎年金2級がセットになってもらえる

の3ポイントです。

順番に説明していきましょう。

なお、この記事は投稿日(2020.5.23)現在の情報を元に執筆しています(その後、2025.4.25に年金額を令和7年度改定分に一部加筆修正しています)。

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障害基礎年金には3級はない

障害基礎年金と障害厚生年金はどう決まるのか

まず、すごく基本的なことの確認からしていきます。

障害年金には、大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金の2つの種類があります。

障害基礎年金というとよくわからないかもしれませんが、これは国民年金の障害年金のことです。

これに対して障害厚生年金は、文字通り厚生年金の障害年金です。

 

では、この障害基礎年金と障害厚生年金がもらえるかどうかは、どのように決まるのでしょうか。

それは、障害の原因になった病気やケガについて初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日で決まります。

これを初診日といいます。

すごく簡単にいえば、

  • 初診日に国民年金に加入していた人:障害基礎年金
  • 初診日に厚生年金に加入していた人:障害厚生年金

ということです。

ただし、年齢によって取扱いが異なる場合があるので、今回は初診日が20歳以上60歳未満の期間にある人の場合を想定しておきましょう。

20歳未満や60歳以上の期間に初診日がある人でも要件をみたせば障害基礎年金や障害厚生年金の対象になることもできるのですが、いろいろと異なる取扱いがあるので今回は省略します。

 

障害厚生年金にあって障害基礎年金にないもの

障害基礎年金と障害厚生年金の違いはたくさんありますが、そのなかでも最も特徴的なものは、

  • 障害基礎年金は、1級と2級しかない
  • 障害厚生年金は、1級、2級、3級、障害手当金の4つの等級区分がある

ということです。

もっとはっきりいいましょう。

障害基礎年金には3級以下はありません。

つまり、3級相当の障害を負ったひとは、障害基礎年金はまったくもらえないのです。

 

障害基礎年金は定額制

障害基礎年金は等級による定額制です(生まれた日が昭和31年4月1日以前か2日以降かで少し金額が異なります)。

どれくらい国民年金に加入していたかといった加入期間には比例しません

その額(2025年度)は、

  • 1級:(昭和31年4月2日以後生まれの方) 1,039,625円(831,700円×1.25)+子の加算
  •   / (昭和31年4月1日以前生まれの方) 1,036,625円(829,300円×1.25) +子の加算
  • 2級:(昭和31年4月2日以後生まれの方)831,700円+子の加算
  •   / (昭和31年4月1日以前生まれの方) 829,300円+子の加算
  • 子の加算:第1子・第2子=各239,300円。第3子以降=各79,800円

とされています。

なお、加算の対象となる子とは、障害基礎年金の受給者によって生計を維持されている、

  • 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
  • 20歳未満で障害等級1級または2級の障害者

のどちらかに該当する人です。

つまり、障害(1級か2級相当)のあるお子さんなら20歳未満、そうでないなら高校を卒業する時期までのお子さんということです。

障害厚生年金3級は2級と計算方法が同じだけど、最低保障額がある

障害厚生年金の受給額はどうやって計算するのか

障害厚生年金の受給額は、報酬比例の年金額によって決まります。

簡単にいえば、

  • 1級:報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加給年金額(239,300円)
  • 2級:報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(239,300円)
  • 3級:報酬比例の年金額 ※配偶者の加給年金なし

このような関係です。

そして報酬比例の年金額の計算は、ざっくりいえば、その人が障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月経過した日か症状が固定した日のどちらか早い日)の属する月以前にもらった給料やボーナスの額によって決まってきます(正確には「平均標準報酬(月)額」という数字を使います)。

この報酬比例の年金額の計算方法はややこしいので、ここでは省略します。

ここでは、障害厚生年金の報酬比例は

  • これまでもらってきた給料やボーナスによって変わるので人それぞれである

というイメージで知っておいてください。

 

障害厚生年金2級にあって3級にないもの

障害厚生年金2級にあって3級にないもの、それは「配偶者の加給年金額」です。

配偶者の加給年金額は239,300円です(2025年度)。

対象となる配偶者とは、障害厚生年金の受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者のことです。

ただし、配偶者が一定の期間以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受けられる場合や障害年金を受けられる場合は、その期間の配偶者加給年金額は支給停止されます(つまり配偶者加給年金額は加算されないということです)。

 

障害厚生年金3級にあって2級にないもの

障害厚生年金3級にあって2級にないもの、それは最低保障額です。

最低保障額とは、報酬比例の年金額が一定の額未満になった場合に、最低保障額まで金額を上げるという制度です。

最低保障額は、昭和31年4月2日以後生まれの方623,800円 / 昭和31年4月1日以前生まれの方622,000円(2025年度)です。

たとえば、ある人(昭和31年4月2日以後生まれの方)の報酬比例の年金額が400,000円だったとしましょう。

その人が障害厚生年金2級であれば報酬比例の年金額は400,000円のままですが、障害厚生年金3級であれば報酬比例の年金額は623,800円に引き上げられるということです。

ここでは等級は低い方が金額が大きくなるという逆転現象が起こっています。

その理由はつぎで述べますが、障害厚生年金3級の人の年金額が少なくなり過ぎないようにするためだとお考えください。

障害厚生年金2級には障害基礎年金2級がセットになってもらえる

障害厚生年金3級の人に最低保障額制度があるのは、障害厚生年金2級の人には障害基礎年金2級がセットになってもらえるからです(=そのため最低保障額制度で救済する必要がない)。

つまり、最低でも障害基礎年金2級の約83万円があるので、障害厚生年金2級の報酬比例の年金額が少なくても、最低保障額以上になるのは確実なのです。

障害厚生年金の最低保障額が、障害基礎年金(2級)の3/4とされているのもそのためです。

 

では、どうして障害厚生年金2級の人には障害基礎年金2級がセットになってもらえるのでしょうか。

それは、厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入しているからです。

これを「国民年金の第2号被保険者」といいます。

厚生年金に加入している会社員や公務員などの人たちです。

ここで、2号があるなら、1号もあるだろうと思った人は大正解。

1号だけなく、3号もあります。

わかりやすいので、先に3号を説明します。

「国民年金の第3号被保険者」とは2号の被扶養配偶者です。

つまり厚生年金に加入している会社員などに扶養されている配偶者のことです。

そして、「国民年金の第1号被保険者」とは2号でも3号でもない人です。

主に個人事業主、フリーランス、大学生やフリーターといった人たちです。

つまり、同じ障害等級2級でも、

  • 国民年金にしか加入していない人(=1号と3号):障害基礎年金2級のみ
  • 厚生年金と国民年金に加入している人(=2号):障害厚生年金2級と障害基礎年金2級のセット

という関係になります。

ここまでの話をまとめると

ここまでの話をまとめると(表1)のようになります。

国民年金のみの3級の「障害年金なし」のインパクトは大きいですね。

それに対して、厚生年金の方は2級も3級も手厚く保障されているのがわかります。

 

2級と3級の格差をAさんの例でくらべてみよう

具体的な受給額をAさん(昭和31年4月2日以後生まれの方)の例でくらべてみましょう。

Aさんには対象となる配偶者と1人の子がいるとします。

そして、厚生年金に加入している場合には報酬比例の年金額を400,000円とします。

このようなAさんの障害年金の受給額は次のようになります(2025年度の金額)。

初診日の加入状況障害等級2級障害等級3級(相当)
厚生年金
(+国民年金2号被保険者)
障害基礎年金:831,700円
子の加算額:239,300円
障害厚生年金:400,000円
配偶者加給年金:239,300円

合計:1,710,300円
障害厚生年金:623,800円
(※最低保証額)
配偶者加給年金:なし
国民年金のみ
(1号・3号被保険者)
障害基礎年金:831,700円
子の加算額:239,300円

合計:1,071,000円
障害年金0円

厚生年金2級と国民年金のみ3級との格差は天と地のような違いになっています。

特に、同じ3級でも、厚生年金の場合には最低保障額が発動しているのに対して、国民年金のみの場合には0円です。

 制度が違うとはいえ、同じ公的年金です。

同じ障害を負っているのに、こういった格差があると知ったときは正直おどろきました。

さいごに

今回は、障害年金の2級と3級の受給額の違いを解説してきました。

ポイントは、

  • 障害基礎年金には3級はない
  • 障害厚生年金3級は2級と計算方法が同じだけど、最低保障額がある
  • 障害厚生年金2級には障害基礎年金2級がセットになってもらえる

の3つでした。

障害の中には基本的に3級(またはそれ以下の障害手当金)にしか認定されないものがあります。

たとえば、鼻の欠損(著しい機能障害)は障害手当金にしか認定されないのが原則ですし、腕や足への人工関節や人工骨頭の挿入置換もそれだけでは3級と認定されることがほとんどです。

同じ障害を負っても、初診日に加入していた年金の種類によって、大きな格差が生じている現状があります。

働き方が多様化している現在、本当にこのままの制度でいいのかを考える時期にきているように思います。

希望する人ができるだけ厚生年金に加入できるような仕組みづくりが必要なのかもしれません。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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障害年金のことを1ミリも知らないひとのための「障害年金とは?」

障害年金のことをまったく知らないひとに向けて「障害年金とは?」を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、障害年金のことをまったく知らないひとに対して、社会保険労務士が「障害年金とは?」を解説していこうという試みです。

こんなことを偉そうに言っている筆者も、実は10年くらい前までは本当のところ障害年金って何かよくわかっていませんでした。

過去の自分にむけて、障害年金とはどんなものかをうまく説明できるかやってみようと思います。

 

障害年金ってどんな人がもらえるの?

障害年金っていくらもらえるの?

障害年金はどうやったらもらえるの?

 

こんな疑問にわかりやすくお応えしようと思います。

今回は、わかりやすさを最優先します。

よく知っているひとからすれば、正確性に欠ける表現もあるかもしれません。

ご容赦いただけますようお願いいたします。

なお、この記事は投稿日(2020.5.20)現在の情報を元に執筆されています。

 

「障害年金」をひとことでいえば、病気やケガで一定の障害を負ったときに国からもらえる年金のことです。

「そんなことはわかっているよ」と突っ込まれそうなので、基本中の基本のポイントをあげると、

  • 障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある
  • 障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い
  • 障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

の3つになります。

順番に説明していましょう。

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障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある

障害年金は誰でももらえる可能性があります。

障害年金をもらうためには障害者手帳をもっている必要はありません。

これは誤解している人が結構多いです。

障害者手帳がなくても障害年金はもらえますし、逆に障害者手帳をもっているからといって必ずしも障害年金がもらえるとは限りません。

障害者手帳を持ってる人の特権ではないのです。

 

ただし、年齢による制限があります。

それは20歳です。

「障害年金は20歳になってから」と覚えておいてください。

なお、20歳になる前に障害を負った場合でも、20歳になってから障害年金の支給が始まります(一部例外があります)。

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障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い

障害年金でもらえる金額は、障害基礎年金(国民年金に入っているひとがもらえる障害年金)か障害厚生年金(厚生年金に入っているひとがもらえる障害年金)かで違っています。

障害厚生年金をもらえるひとの方が多くなります。

 

障害年金は障害が重い方ほどもらえる金額は多くなります。

  • 障害基礎年金は重い方から1級、2級の2段階にわかれています
  • 障害厚生年金は重い方から1級、2級、3級の3段階にわかれています
  • もらえる金額は1級は2級の1.25倍です

 

でもこれだけでは、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額が多くなる理由はわかりませんね。

その理由を説明しましょう。

それは、障害厚生年金の1級、2級のひとは、同時に障害基礎年金ももらえるからです。

厚生年金に入っているひとは、同時に国民年金にも入っているので、両方もらえるというわけです。

これに対して、国民年金にだけ入ってるひとは、障害厚生年金はもらえずに、障害基礎年金だけをもらうことになります。

そのため、障害基礎年金だけしかもらえないひとは、3級相当の障害の場合には、障害年金はまったくもらえないということになります。

障害基礎年金には3級がないからです。

 

話を整理しましょう。

  • 障害厚生年金がもらえるひと
    • 1級:障害厚生年金(1級)+障害基礎年金(1級)
    • 2級:障害厚生年金(2級)+障害基礎年金(2級)
    • 3級:障害厚生年金(3級)
  • 障害基礎年金だけをもらえるひと
    • 1級:障害基礎年金(1級)
    • 2級:障害基礎年金(2級)
    • 3級:なし

どうやっても障害厚生年金をもらえる人の方がお金が多くなりますね。

具体的な金額についてはここでは省略しますが、もっと詳しく知りたいというひとは、「障害年金はいくらもらえる? 障害年金の金額をざっくり紹介」という記事をごらんください。

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障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

障害年金をもらうための条件は3つあります。

そのすべてをクリアしなければいけません。

順にみていきましょう。

 

初めて病院で診てもらった日が超重要

障害年金をもらうためには、障害の原因になった病気やケガのために初めて病院で診てもらった日がとても重要になります。

これを「初診日」といいます。

初めて具合が悪くなった日ではありません。

重要なのは初診日です。

初診日は医師によってちゃんと証明してもらえるので、とても明確な基準になるからです。

 

初診日によってどの年金がもらえるか(それとももらえないのか)が決まります。

  • 障害基礎年金をもらうには、65歳になるまでに初診日がある必要があります
  • 障害厚生年金をもらうには、厚生年金に加入している期間に初診日がある必要があります

このように初診日がどこにあるかの条件をクリアする必要があります。

初診日が65歳以降であれば、障害基礎年金はもらえません。

また、初診日に厚生年金の加入者であれば障害厚生年金がもらえ、そうでなければ障害厚生年金はもらえないということです。

 

たとえば、Aさんは会社に勤めているときに体調不良だったのですが、忙しくて病院に行けなかったとしましょう。

Aさんは会社を辞めてようやく病院に行ったとします。

そこで病気がみつかった場合どうなるでしょうか。

Aさんが初めて病院に行ったときには会社を辞めていますので、厚生年金の加入者ではなくなっています。

つまり、この病気でAさんが障害を負った場合には、障害厚生年金はもらえないということです。

Aさんは病院に行く日が遅かったばかりに、障害基礎年金しかもらえません。

そして、もしも、この障害が3級相当だったとしたら・・・

そうです、Aさんは障害年金をまったくもらえなくなってしまうのです(障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金には3級がないですからね)。

 

このほかにも、いつから障害年金がもらえるのかを決める基準日も初診日によって決まりますし、ちゃんと保険料をはらっていたかどうかをチェックする基準日も初診日によって決まります。

とにかく、障害年金にとって初診日はとても重要な日なのです。

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保険料をちゃんと払っていないと障害年金がもらえなくなる可能性がある

障害年金をもらうためには、一定期間ちゃんと保険料を払っている必要があります。

これを「保険料納付要件」といいます。

保険料納付要件をかなりざっくりいうと、初診日の前日の時点で

  • 前々月からさかのぼって1年以内に保険料の未納がない
  • 前々月までの全期間のうち3分の2以上の期間の保険料を払っている(免除でもよい)

のどちらかである必要があります。

もしこの条件をクリアできなければ、どんなに重い障害を負っても、障害年金はまったくもらえません。

これはかなり厳しいことになります。

あとで気づいて慌てて保険料を払っても許してもらえません(ここらへんを詳しく知りたいひとは「未納保険料を後から払えば障害年金はもらえるの?【年金の常識14】」という記事をお読みください)。

もしも経済的理由で保険料が払えないのであれば、免除や猶予の制度もありますので年金事務所や行政の窓口に相談されることを強くおすすめします。

 

病気やケガの種類によってどの程度の障害なら障害年金がもらえるか決まっている

障害年金をもらうための障害の程度は、病気やケガの種類によって決まっています。

これは「障害認定基準」に定められています。

「眼の障害」「聴覚の障害」といったように18の障害の基準が定められています。

かなりの分量になりますが、日本年金機構のホームページでダウンロードできますので、興味のあるひとは一度みてみてはいかがでしょうか。

 

また、病気やケガの種類に応じて提出する診断書も決まっています。

障害年金の請求には専用の診断書がありますので、病気やケガに応じて必要な診断書を提出します。

診断書は8種類あります。

18の障害の基準が定められているのに診断書は8種類しかないのは、1つの診断書で複数の障害に対応しているものがあるからです。

たとえば「聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用の診断書」といったものがあります。

こちらも、日本年金機構のホームページでダウンロードできますので、興味のあるひとは一度みてみてはいかがでしょうか。

 

提出された診断書などの資料から障害認定基準に基づいて、国(日本年金機構)が障害の程度を決めていくというわけです。

障害認定は診断書で決まるといっても言い過ぎではありません。

なので、正確な情報が反映された診断書をどうやって医師に作ってもらうかがポイントになります。

診断書一発勝負というわけではないですが、そんな感じがしないでもありません。

 

障害の程度に関連して、もうひとつ重要なことがあります。

それは、どの時点での障害の程度を判断するのかという問題です。

この答えは2つあります。

それは、①初診日から1年6ヶ月が経過した日、または治療を続けてもこれ以上良くならないと確定した日のどちらか早い方(これを「障害認定日」といいます)、②障害年金を請求する日、の2つです。

①と②の違いは請求の方法の差です(これを「認定日請求」と「事後重症請求」といいます)。

ただ、これは少し難しい話になるので、請求の方法のお話は別の機会にさせてください。

 

まとめ

今回は、障害年金のことをまったく知らないひとに対して「障害年金とは?」を解説してきました。

ポイントは、

  • 障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある
  • 障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い
  • 障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

この3つでした。

いかがでしょうか。

障害年金のことをざっくりとでもわかっていただけたでしょうか。

障害年金は、病気やケガで仕事ができなくなったようなときにとても頼りになる制度です。

制度をざっくりとでも理解しておけば、いざというときに役に立つかもしれません。

とくに、いざ障害年金を請求しようと思ったら、保険料を払っていなかったのでもらえないなんてことになれば本当に大変なことになります。

この記事を読んでくださったひとがそのようなことにならないよう願っています。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前後の記事

前の記事:障害年金の更新の提出期限を守るよりも診断書の内容の方が絶対的に重要な理由

後の記事:ここまで違う 障害年金2級と3級の受給額

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障害年金の更新の提出期限を守るよりも診断書の内容の方が絶対的に重要な理由

障害年金の更新の際に障害状態確認届(診断書)の提出期限よりも内容の正確性の方が重要な理由を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、社会保険の国家資格である社会保険労務士が、障害年金の更新の際に障害状態確認届(診断書)の提出期限よりも内容が重要な理由を解説していきます。

 

「障害年金の更新の提出期限が迫っているな。

障害状態確認届(診断書)を早くださないと。

提出期限に間に合わせるために、スピード重視で医師に作ってもらって出したほうがいいのかな?

 

このように考えている人はいませんか?

でも「急がば回れ」ということわざもあります。

なにごともスピード重視が最善というわけではなさそうです。

 

今回のポイントは、

  • 障害年金(有期認定)の更新には障害状態確認届(診断書)の提出期限がある
  • 障害年金の更新の提出期限よりも障害状態確認届(診断書)の内容の方が重要
  • 障害年金の更新の提出期限を過ぎても、年金は一時差し止めになるだけですむ

の3点です。

順番にみていきましょう。

なお、この記事は投稿日(2020.5.19)現在の情報を元に執筆されています。

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障害年金(有期認定)の更新には障害状態確認届(診断書)の提出期限がある

障害年金が有期認定の場合には、必要な年の誕生月の末日までに、障害状態確認届(診断書)を日本年金機構に提出しなければいけません。

障害状態確認届(診断書)は誕生月の3ヶ月前の月末に日本年金機構から送られてきます。

障害状態確認届(診断書)には、提出期限(誕生月の月末)前3ヶ月以内の障害の状態が記載されている必要があります。

なので、障害状態確認届(診断書)がお手元に届いたら速やかに受診して、診断書の作成を医師に依頼した方がいいでしょう。

障害状態確認届(診断書)の作成にかかる時間は医師の都合次第なところもあります。

3ヶ月あるからと余裕に考えずに、早めに対応してください。

ちなみに以前は障害状態確認届(診断書)の作成期間は提出期限1ヶ月以内でした。

これが2019年8月から3ヶ月以内に変更になりました。

まあ、3ヶ月も意外に早く過ぎてしまうものですけど。

 

では、提出期限さえ守れば、それでいいのでしょうか。

答えはノーです。

提出期限よりももっと重要なことがあります。

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障害年金の更新の提出期限よりも障害状態確認届(診断書)の内容の方が重要

障害状態確認届(診断書)の内容次第で等級が級落ち・支給停止もありうる

障害状態確認届(診断書)の提出期限を守ったとしても、その内容によって障害の程度が軽度になったと判断されれば、等級は級落ちしたり、最悪の場合支給停止になる可能性があります。

  • 級落ちとは、1級から2級になったり、2級から3級になったりすることです
  • 支給停止とは、障害基礎年金の場合には2級に該当しなくなることで、障害厚生年金の場合には3級に該当しなくなることです

受給額でいえば、たとえば1級から2級に級落ちするということは受給額が20%ダウンするということで、支給停止となれば0円になるということです。

これはつらいです。

級落ちや支給停止に不服であれば、審査請求などを行うことになります。

 

更新の制度は障害の程度に変化がないかをチェックするためのもの

そもそも更新の制度は障害の程度に変化がないかをチェックするためのものです。

本当に障害の程度が軽度になっているのであれば、級落ちや支給停止は当然のことなのです。

しかし、とくに障害の程度に変更がないにもかかわらず、障害状態確認届(診断書)の記載が正確でないためにこのような判断になったのであればどうでしょう。

提出前に障害状態確認届(診断書)の内容をチェックしていなかったことを悔やむしかありません。

仮に障害状態確認届(診断書)の提出期限を守ることを優先して、内容の確認を怠っていたのであれば、それは本末転倒です。

 

正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を医師に作成してもらうことを最優先すべき

提出期限も大切ですが、正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を医師に作成してもらうことが最優先されるべきです。

そのためには、医師へ正確な情報を伝える努力をおしまないことが大切です。

医師としっかりコミュニケーションをとって、現在の症状を正確に伝えてください(メモを作ってもいいでしょう)。

また、障害状態確認届(診断書)が作成されたあとも、その内容はしっかり確認しましょう。

前回提出した資料の写しを持っているなら、照らし合わせることも大切です。

もしも、正確な情報が反映されていないと感じるのであれば、医師に相談してその旨を伝えてください。

もちろん、障害状態確認届(診断書)は医師が医学的な見地から作成するものですので、不当な要求をしてはいけません。

あくまでも正確な情報を伝える努力にとどめてください。

その結果、多少時間がかかったとしても、それは必要なプロセスです。

正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を作成してもらったら、速やかに提出しましょう。

なお、次回の更新の際の資料にするために、コピーをとって保管しておくことを忘れないようにしてください。

 

障害年金の更新の提出期限を過ぎても、年金は一時差し止めになるだけですむ

障害状態確認届(診断書)の作成に時間を要してしまって提出期限を過ぎた場合には、年金の支給が「一時差し止め」になることがあります。

「一時差し止め」とは、文字通り年金の支給がいったん保留されることです。

障害状態確認届(診断書)が提出されたあとに、障害の等級が変わっていないことが再認定されれば、保留されていた年金はまとめて支給されます。

これに対して、級落ちや支給停止が確定した場合には、その後に額改定請求や支給停止事由消滅届によって元の等級で年金の支給が再開されてたとしても、級落ちや支給停止をしていた期間の年金は還ってきません。

そういう意味で、「一時差し止め」はペナルティとしては軽い方です。

一時差し止めを覚悟してでも、正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)の作成を優先した方がいいでしょう。

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まとめ

今回は、障害年金の更新の際に障害状態確認届(診断書)の提出期限よりも内容が重要な理由をお話してきました。

ポイントは、

  • 障害年金(有期認定)の更新には障害状態確認届(診断書)の提出期限がある
  • 障害年金の更新の提出期限よりも障害状態確認届(診断書)の内容の方が重要
  • 障害年金の更新の提出期限を過ぎても、年金は一時差し止めになるだけですむ

ということでした。

筆者の経験からしても、障害状態確認届(診断書)の内容を確認もせずに提出して、あとで慌てるというケースが散見されます。

更新の際には、正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を医師に作成してもらうことを最優先にしていただければと思います。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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障害年金を受給したら、健康保険はどうなるのか?

障害年金の受給が公的医療保険(健康保険等)に与える影響を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、社会保険の国家資格である社会保険労務士が、障害年金を受給した場合に公的医療保険(健康保険等)にどのような影響があるのかを解説していきます。

話を整理するために、

  • 会社の健康保険に加入している人
  • 家族の会社の健康保険の扶養に入っている人
  • 国民健康保険に加入している人

この3つのケースについて考えます。

なお、この記事は投稿日(2020.5.18)現在の情報に基づいて執筆されています。

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結論から先にいいますと、

  • 健康保険の被保険者本人が障害年金を受給しても特に影響はありません
  • 健康保険の被扶養者が障害年金を受給した場合には扶養から外れてしまう可能性があります
  • 国民健康保険の被保険者が障害年金を受給した場合には保険料が安くなる可能性があります

というお話です。

それでは順にみていきましょう。

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健康保険の被保険者本人が障害年金を受給しても特に影響はありません

障害年金の受給者が、会社の健康保険に加入している(健康保険の被保険者本人である)場合には、健康保険に与える影響は特にありません。

保険料も変化しませんし、受けられるサービスが変わるわけでもありません。

そのまま健康保険に加入しつづけることができます。

 

なお、健康状態の問題で会社を辞めるのであれば、一般の退職の場合と同じく被保険者の資格は喪失します。

退職して資格喪失したあとは、①現在の健康保険の任意継続被保険者となる、②家族の健康保険の扶養に入る、③新しく国民健康保険に加入するといったパターンが考えられます。

 

健康保険の被扶養者が障害年金を受給した場合には扶養から外れてしまう可能性があります

障害年金の受給者が、家族が勤める会社の健康保険の扶養に入ってる(健康保険の被扶養者である)場合には、収入要件に影響があります。

健康保険の被扶養者になるためには、

被扶養者の年間収入が、

  • 130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は年間収入180万円未満

であり、かつ

  • 被扶養者の収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満であること(同居の場合)
  • 被扶養者の収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満(別居の場合)

のどちらかであることが原則として必要です。

そして、この「被扶養者の年間収入」には非課税所得である障害年金も含まれます。

 

つまり、被扶養者の障害年金を含めた年間収入が、

  • 180万円以上になった場合
  • 180万円未満でも、被保険者の収入の半分以上となった場合(同居の場合)か仕送り額以上になった場合(別居の場合)

には、原則として被扶養者になれない(=扶養から外れる)ということです。

例外として、同居の場合には扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときには、被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上となった場合でも扶養が認められることもあります。

 

障害年金の受給者が扶養から外れた場合には、新たな公的医療保険(ほとんどが国民健康保険になるでしょう)に加入する必要があります。

 

国民健康保険の被保険者が障害年金を受給した場合には保険料が安くなる可能性があります

障害年金の受給者が、自ら国民健康保険に加入している場合には、国民健康保険を継続できるのはもちろんですが、翌年度からの国民健康保険料が安くなることもあります。

障害年金は非課税所得ですので、障害年金しか収入がない場合にはその人の国民健康保険料の所得割は0になります。

また、国民健康保険料の均等割も低所得であれば一定の減額を受けることができます(この減額を受けるためには、所得がないことを申告する必要があります。詳しくは、「障害年金をもらいはじめたら確定申告をしなければならないの?【年金の常識15】」をお読みください)。

 

なお、国民健康保険料は世帯主に納付義務が生じます。

なので、たとえば、世帯主である夫は会社の健康保険に加入しているような場合でも、妻が障害年金を受給し始めて扶養から外れて国民健康保険に加入したような場合には、妻の国民健康保険料を世帯主である夫が納付する義務が生じます。

 

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まとめ

今回は、障害年金を受給した場合に公的医療保険(健康保険等)にどのような影響があるのかという問題について、

  • 健康保険の被保険者本人が障害年金を受給しても特に影響はありません
  • 健康保険の被扶養者が障害年金を受給した場合には扶養から外れてしまう可能性があります
  • 国民健康保険の被保険者が障害年金を受給した場合には保険料が安くなる可能性があります

というお話をしてきました。

日本では国民皆保険制度が整っていますので、何らかの公的医療保険に加入するのが原則です。

公的医療保険にも複数の種類がありますのでややこしいところではありますが、いろいろと情報を集めて対応してもらえればと思います。

なお、公的医療保険には原則75歳以上の人が加入する後期高齢者医療保険制度というものもありますが、国民健康保険の場合とほとんど同じだと思ってください(納付義務者は被保険者本人ですが、世帯主や被保険者本人の配偶者が連帯納付義務者となるといった違いはあります)。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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後の記事:障害年金の更新の提出期限を守るよりも診断書の内容の方が絶対的に重要な理由

障害年金はいくらもらえる? 障害年金の金額をざっくり紹介

障害年金がいくらもらえるのかについて、ざっくりとした金額を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、公的年金の国家資格である社会保険労務士が、障害年金の受給金額について概要を解説していきます。

  • 病気やケガの後遺症で仕事ができなくなって障害年金の請求を考えているひと
  • 障害年金を受給した場合の収入をざっくりとシミュレーションしてみたいひと
  • 障害年金の受給金額がどうやって決まるのかを理解したいひと

こういった人たちにお読みいただきたい記事です。

 

この記事でお伝えしたいポイントは、

  • 障害基礎年金は定額制
  • 障害厚生年金は給料に比例して増えていく(報酬比例)
  • 請求方法によって、最大5年分さかのぼって一括でもらえる場合とこれからの分しかもらえない場合がある

この3点です。

 

順を追ってお話ししていきます。

なお、この記事は投稿日(2020年5月10日)現在の情報を元に執筆されています。

 

ひとくちに障害年金といっても、初診日(障害の原因になった病気やケガについて初めて医師や歯科医師の診療を受けた日)に加入していた公的年金の種類によって、障害基礎年金と障害厚生年金にわかれています。

障害年金を請求する日ではなく、初診日を基準にしていることは注意が必要です(会社員だから必ず障害厚生年金の対象になるというわけではないのです)。

20歳~60歳までの人を例にとってみると

  • 初診日に国民年金に加入:障害基礎年金(1または2級)
  • 初診日に厚生年金にも加入:障害厚生年金(1~3級、または障害手当金)

となります。

この場合、初診日に厚生年金にも加入していた人が、障害等級1または2級であれば、障害基礎年金と障害厚生年金を同時にもらうことができます。

なぜなら厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入しているからです(これを「国民年金第2号被保険者」といいます)。

それでは、障害基礎年金と障害厚生年金はいくらもらえるのかみていきましょう。

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障害基礎年金は定額制

障害基礎年金はいくらもらえる?

結論からいえば、障害基礎年金はつぎのような定額制です(2020年度の年額)。

  • 【1級】 97万7125円(年額)+子の加算
  • 【2級】 78万1700円(年額)+子の加算
  • 【子の加算額】第1子・第2子:各22万4900円(年額)、第3子以降:各7万5000円(年額)

たとえば障害等級2級の人に子(基本的には高校を卒業するまでの子とお考えください)が3人いた場合には、

78万1700円+(22万4900円×2人)+7万5000円=130万6500円(年額)

となります。

これらの金額は毎年度改定されます。

なお、障害基礎年金には、子の加算はありますが、配偶者の加算はありません。

これにたいして、障害厚生年金(1級、2級)には配偶者の加給年金がありますが、子の加給年金はありません(詳しくは障害厚生年金のところで説明します)。

 

障害基礎年金の額は、国民年金保険料が一部未納や免除期間などがあっても定額制です(減らされたりはしません)。

ただし、障害年金をもらうためには、保険料納付要件というのがあります。

ですので、一定期間以上の保険料未納期間があって保険料納付要件をみたさない場合には、障害年金はまったくもらえません。

 

障害年金生活者支援給付金

障害基礎年金の受給者には、前年の所得が一定基準(扶養親族がいない場合には462万1000円)以下の場合に障害年金生活者支援給付金が別途給付されます(厳密には障害年金ではありませんが、関連する収入なので併せてご説明します)。

給付額(2020年度)は、

  • 1級:6288円(月額)⇒7万5456円(年額換算)
  • 2級:5030円(月額)⇒6万0360円(年額換算)

です。

現時点では給付の終期はありません(要件をみたせば、障害基礎年金を受給している限りずっともらえます)。

新たに障害年金を請求する際には、障害年金生活者支援給付金もあわせて手続きしましょう。

 

偶数月に2ヶ月分が振り込まれる

障害年金に限らず、一般的に公的年金の支給は、支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始まります。

そして、支給期月は、偶数月(2、4、6、8、10、12月)にそれぞれの前月分までの分(通常は2ヶ月分)が支払われます。

支給日は15日(金融機関の営業日でない場合には前の営業日)です。

ですので、たとえば2020年4月15日に支給された年金は2020年2、3月分のものということです。

これは、障害年金生活者支援給付金の場合も同様で、年金支給日と同じに日に前2ヶ月分が給付されます。

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障害厚生年金は給料に比例して増えていく(報酬比例)

障害厚生年金はいくらもらえる?

さきほどみたように障害基礎年金は定額制でしたが、障害厚生年金はそうではありません。

基本的には、障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過した日か症状固定日のどちらか早い方が原則)の時点でのそれまでの平均した月給(正確には「平均標準報酬(月)額」といいます)に比例するとお考えください(これを報酬比例といいます)。

ちょっと難しいと思いますが、基本的な計算式はつぎのとおりです(2020年度の年額)。

  • 【1級】(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(22万4900円)〕
  • 【2級】(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(22万4900円)〕
  • 【3級】(報酬比例の年金額) ※最低保障額 58万6300円
  • 【障害手当金】(報酬比例の年金額)×2  ※最低保障額 117万2600円
  • 1級と2級には配偶者の加給年金がありますが、3級と障害手当金には配偶者の加給年金はありません

そして、報酬比例の本来的な計算方法はつぎ①と②を合算したものです(2020年度の年額)

  • ①平均標準報酬月額 × 7.125 / 1000 ×(2003年3月までの被保険者期間の月数)
  • ②平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 ×(2003年4月以降の被保険者期間の月数)
  • 被保険者期間が300ヶ月(25年)未満の場合には300ヶ月とみなして計算します
  • 1994年の水準で標準報酬を再評価して年金額を計算する「従前額保障」があります

 

とりあえず最低限のことを書かせていただきましたが、正直言って、障害厚生年金の報酬比例の年金額を正確に計算するのはとても大変な作業です。

ですので、30歳程度のお若い(会社員歴が25年(300ヶ月)未満)の人の場合には、ざっくりと、

これまでの給料の総合計(ボーナス込みの額面額)÷ 入社してからの月数 × 1.5

で計算してみるのもいいでしょう。

1.5をかけているのは、5/1000の300ヶ月分という意味です。

かなりざっくりとした計算方法ですが、大幅に外れることはないと思います。

たとえば、会社員を7年間(84ヶ月)やっている人で、平均年収300万円(7年間の合計2100万円)の場合であれば、

2100万円 ÷ 84ヶ月 × 1.5=37万5000円

といった感じです。

なお、1級の場合には、これを1.25倍します。

 

もうひとつ、ざっくり計算の方法としては、「ねんきん定期便」のハガキを利用してもいいでしょう。

「ねんきん定期便」は老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の目安が掲載されていますが、障害厚生年金のざっくり計算にも使えます。

障害認定日に近い年の「ねんきん定期便」を確認して、

  • 厚生年金の加入期間が300ヶ月以上であれば、そこの老齢厚生年金の額がその時点での障害厚生年金の報酬比例額に近い金額です(完全には同じではありませんが、あくまでざっくりした目安です)
  • 厚生年金の加入期間が300ヶ月未満の場合には、老齢厚生年金の額を厚生年金の加入月数で割って、300をかけてください

たとえば、老齢厚生年金の額が30万円、厚生年金の加入月数が150の場合

30万円÷150×300=60万円

といったかんじです。

かなりざっくりですが、障害厚生年金(報酬比例額)に近い金額になると思います。

この場合も1級の場合には、1.25倍します。

 

障害厚生年金3級、障害手当金には最低保障額がある

障害厚生年金の特徴として、最低保障額が決められています。

これは障害基礎年金がもらえない人(3級か障害手当金の人がメイン)のために定められています。

  • 障害厚生年金:58万6300円(年額)
  • 障害手当金:117万2600円(一時金=一括で一度だけ支給されるもの)

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障害基礎年金と障害厚生年金の金額のイメージ

ここまでのことをまとめて、障害基礎年金と障害厚生年金の金額をイメージしてみましょう。

(表1)をご覧ください。

これは、2020年度の障害年金の金額(配偶者及び子なし)の場合のイメージです。

障害厚生年金の受給額(グレーの部分)は報酬によって人それぞれなので、ここでは2003年4月以後に厚生年金に加入した人で平均標準報酬額30万円、被保険者期間300ヶ月みなしと設定して、ざっくりと本来水準で計算したものです。

その結果、障害厚生年金3級と障害手当金は最低保障額になっています。

なお、障害基礎年金に上乗せされる障害年金生活者支援給付金はこの(表1)には入っていません。

障害基礎年金1級または2級の人で、障害年金生活者支援給付金がもらえる場合には、1級に7万5456円(年額)=6288円(月額)、2級に6万0360円(年額)=5030円(月額)を加算してください

 

障害の程度が1、2級であっても、障害厚生年金がなければ月額10万円を超えることはむずかしいことがわかります。

仮に障害基礎年金に子の加算がついたとしても、子が高校を卒業してしまえば、加算はなくなります。

障害基礎年金だけだと経済的には少し心配な金額かもしれません。

 

また、障害厚生年金であっても、3級の場合には障害基礎年金を併せてもらえません。

その場合、月額は5万円程度です。

高給の期間が長い人であれば、3級の障害厚生年金の額はもっと増えるでしょうが、若い人の場合にはこのように最低保証額になることも多いです。

ですので、3級の場合には短時間勤務にするなど工夫をして、就労を継続するこも検討すべきでしょう。

 

請求方法によって、最大5年分さかのぼって一括でもらえる場合とこれからの分しかもらえない場合がある

障害年金は請求の方法によって、さかのぼりができるかどうかが分かれます。

さかのぼりができれば、これまでの最大5年分が一括して最初に支給されます。

2級の障害基礎年金だけの場合であっても、約78万円×5年分=約390万円です。

けっこう大きな額になります。

 

どのような場合にさかのぼりができるのでしょうか。

  • 認定日請求(≒遡及請求):できる(障害認定日の翌月までさかのぼって支給。最大5年)
  • 事後重症請求:できない(請求日の翌月から支給)
  • 基準障害による請求(「初めて2級」といったりもします):できない(請求日の翌月から支給)

このようにさかのぼりができるのは、認定日請求(≒遡及請求)だけなのです。

 

これらの請求方法の違いについてざっくりと説明すると次のとおりです。

  • 認定日請求(≒遡及請求):障害認定日に障害等級に該当している場合
  • 事後重症請求:障害認定日には障害等級に該当しておらず、その後に(症状が悪化して)障害等級に該当した場合
  • 基準障害による請求(初めて2級):既に3級以下の「他の障害」のある人が、新たな傷病による障害(基準障害)が発生した場合に、それらを併合して2級以上になった場合

 

とくに障害認定日から1年以上経過して障害年金を請求するような場合には、認定日請求によってさかのぼりができるかどうかがとても重要になります。

最初に一括でまとまった金額がもらえると、かなり経済的にありがたいです。

このような場合には、医師(障害認定日当時の医師が望ましい)と綿密に相談して、不備のない適正な診断書を作成してもらわなければいけません。

自分だけで対応が難しいような場合であれば、障害年金を扱っている社会保険労務士や弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

 

まとめ

今回は、障害年金の受給金額について概要を解説してきました。

もういちど、ポイントをまとめると、

  • 障害基礎年金は定額制
  • 障害厚生年金は給料に比例して増えていく(報酬比例)
  • 請求方法によって、最大5年分さかのぼって一括でもらえる場合とこれからの分しかもらえない場合がある

の3点です。

ざっくりとではあっても、障害年金の受給金額のイメージをつかんでもらえればと思っています。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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