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国民年金と厚生年金で障害年金2級と3級の受給額がこれほどまでに違う現実とその理由【厚生年金が断然有利】

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、年金の国家資格である社会保険労務士が、障害年金の2級と3級の受給額の違いを解説していきます。

「なんでこんなに違うの?」と驚かれるかもしれませんが、しっかり説明していきますので、最後までお付き合いください。

障害年金1級は2級の1.25倍って聞くけど、2級と3級の金額の違いはどうなんだろう?

多分3級は2級よりももらえるお金が少ないんだろうけど、実際はどんなかんじなのか知りたいな


このような疑問をお持ちの人向けの記事です。

たしかに、「障害年金1級は2級の1.25倍」という情報はよく聞きますが、意外と2級と3級の違いは知らない人もいるのではないでしょうか。

今回のポイントは3つです。

それは、

  • 障害基礎年金には3級はない
  • 障害厚生年金3級は2級と計算方法が同じだけど、最低保障額がある
  • 障害厚生年金2級には障害基礎年金2級がセットになってもらえる

の3ポイントです。

順番に説明していきましょう。

なお、この記事は投稿日(2020.5.23)現在の情報を元に執筆しています(その後、2025.4.25に年金額を令和7年度改定分に一部加筆修正しています)。

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障害基礎年金には3級はない

障害基礎年金と障害厚生年金はどう決まるのか

まず、すごく基本的なことの確認からしていきます。

障害年金には、大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金の2つの種類があります。

障害基礎年金というとよくわからないかもしれませんが、これは国民年金の障害年金のことです。

これに対して障害厚生年金は、文字通り厚生年金の障害年金です。

 

では、この障害基礎年金と障害厚生年金がもらえるかどうかは、どのように決まるのでしょうか。

それは、障害の原因になった病気やケガについて初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日で決まります。

これを初診日といいます。

すごく簡単にいえば、

  • 初診日に国民年金に加入していた人:障害基礎年金
  • 初診日に厚生年金に加入していた人:障害厚生年金

ということです。

ただし、年齢によって取扱いが異なる場合があるので、今回は初診日が20歳以上60歳未満の期間にある人の場合を想定しておきましょう。

20歳未満や60歳以上の期間に初診日がある人でも要件をみたせば障害基礎年金や障害厚生年金の対象になることもできるのですが、いろいろと異なる取扱いがあるので今回は省略します。

 

障害厚生年金にあって障害基礎年金にないもの

障害基礎年金と障害厚生年金の違いはたくさんありますが、そのなかでも最も特徴的なものは、

  • 障害基礎年金は、1級と2級しかない
  • 障害厚生年金は、1級、2級、3級、障害手当金の4つの等級区分がある

ということです。

もっとはっきりいいましょう。

障害基礎年金には3級以下はありません。

つまり、3級相当の障害を負ったひとは、障害基礎年金はまったくもらえないのです。

 

障害基礎年金は定額制

障害基礎年金は等級による定額制です(生まれた日が昭和31年4月1日以前か2日以降かで少し金額が異なります)。

どれくらい国民年金に加入していたかといった加入期間には比例しません

その額(2025年度)は、

  • 1級:(昭和31年4月2日以後生まれの方) 1,039,625円(831,700円×1.25)+子の加算
  •   / (昭和31年4月1日以前生まれの方) 1,036,625円(829,300円×1.25) +子の加算
  • 2級:(昭和31年4月2日以後生まれの方)831,700円+子の加算
  •   / (昭和31年4月1日以前生まれの方) 829,300円+子の加算
  • 子の加算:第1子・第2子=各239,300円。第3子以降=各79,800円

とされています。

なお、加算の対象となる子とは、障害基礎年金の受給者によって生計を維持されている、

  • 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
  • 20歳未満で障害等級1級または2級の障害者

のどちらかに該当する人です。

つまり、障害(1級か2級相当)のあるお子さんなら20歳未満、そうでないなら高校を卒業する時期までのお子さんということです。

障害厚生年金3級は2級と計算方法が同じだけど、最低保障額がある

障害厚生年金の受給額はどうやって計算するのか

障害厚生年金の受給額は、報酬比例の年金額によって決まります。

簡単にいえば、

  • 1級:報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者の加給年金額(239,300円)
  • 2級:報酬比例の年金額 + 配偶者の加給年金額(239,300円)
  • 3級:報酬比例の年金額 ※配偶者の加給年金なし

このような関係です。

そして報酬比例の年金額の計算は、ざっくりいえば、その人が障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月経過した日か症状が固定した日のどちらか早い日)の属する月以前にもらった給料やボーナスの額によって決まってきます(正確には「平均標準報酬(月)額」という数字を使います)。

この報酬比例の年金額の計算方法はややこしいので、ここでは省略します。

ここでは、障害厚生年金の報酬比例は

  • これまでもらってきた給料やボーナスによって変わるので人それぞれである

というイメージで知っておいてください。

 

障害厚生年金2級にあって3級にないもの

障害厚生年金2級にあって3級にないもの、それは「配偶者の加給年金額」です。

配偶者の加給年金額は239,300円です(2025年度)。

対象となる配偶者とは、障害厚生年金の受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者のことです。

ただし、配偶者が一定の期間以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受けられる場合や障害年金を受けられる場合は、その期間の配偶者加給年金額は支給停止されます(つまり配偶者加給年金額は加算されないということです)。

 

障害厚生年金3級にあって2級にないもの

障害厚生年金3級にあって2級にないもの、それは最低保障額です。

最低保障額とは、報酬比例の年金額が一定の額未満になった場合に、最低保障額まで金額を上げるという制度です。

最低保障額は、昭和31年4月2日以後生まれの方623,800円 / 昭和31年4月1日以前生まれの方622,000円(2025年度)です。

たとえば、ある人(昭和31年4月2日以後生まれの方)の報酬比例の年金額が400,000円だったとしましょう。

その人が障害厚生年金2級であれば報酬比例の年金額は400,000円のままですが、障害厚生年金3級であれば報酬比例の年金額は623,800円に引き上げられるということです。

ここでは等級は低い方が金額が大きくなるという逆転現象が起こっています。

その理由はつぎで述べますが、障害厚生年金3級の人の年金額が少なくなり過ぎないようにするためだとお考えください。

障害厚生年金2級には障害基礎年金2級がセットになってもらえる

障害厚生年金3級の人に最低保障額制度があるのは、障害厚生年金2級の人には障害基礎年金2級がセットになってもらえるからです(=そのため最低保障額制度で救済する必要がない)。

つまり、最低でも障害基礎年金2級の約83万円があるので、障害厚生年金2級の報酬比例の年金額が少なくても、最低保障額以上になるのは確実なのです。

障害厚生年金の最低保障額が、障害基礎年金(2級)の3/4とされているのもそのためです。

 

では、どうして障害厚生年金2級の人には障害基礎年金2級がセットになってもらえるのでしょうか。

それは、厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入しているからです。

これを「国民年金の第2号被保険者」といいます。

厚生年金に加入している会社員や公務員などの人たちです。

ここで、2号があるなら、1号もあるだろうと思った人は大正解。

1号だけなく、3号もあります。

わかりやすいので、先に3号を説明します。

「国民年金の第3号被保険者」とは2号の被扶養配偶者です。

つまり厚生年金に加入している会社員などに扶養されている配偶者のことです。

そして、「国民年金の第1号被保険者」とは2号でも3号でもない人です。

主に個人事業主、フリーランス、大学生やフリーターといった人たちです。

つまり、同じ障害等級2級でも、

  • 国民年金にしか加入していない人(=1号と3号):障害基礎年金2級のみ
  • 厚生年金と国民年金に加入している人(=2号):障害厚生年金2級と障害基礎年金2級のセット

という関係になります。

ここまでの話をまとめると

ここまでの話をまとめると(表1)のようになります。

国民年金のみの3級の「障害年金なし」のインパクトは大きいですね。

それに対して、厚生年金の方は2級も3級も手厚く保障されているのがわかります。

 

2級と3級の格差をAさんの例でくらべてみよう

具体的な受給額をAさん(昭和31年4月2日以後生まれの方)の例でくらべてみましょう。

Aさんには対象となる配偶者と1人の子がいるとします。

そして、厚生年金に加入している場合には報酬比例の年金額を400,000円とします。

このようなAさんの障害年金の受給額は次のようになります(2025年度の金額)。

初診日の加入状況障害等級2級障害等級3級(相当)
厚生年金
(+国民年金2号被保険者)
障害基礎年金:831,700円
子の加算額:239,300円
障害厚生年金:400,000円
配偶者加給年金:239,300円

合計:1,710,300円
障害厚生年金:623,800円
(※最低保証額)
配偶者加給年金:なし
国民年金のみ
(1号・3号被保険者)
障害基礎年金:831,700円
子の加算額:239,300円

合計:1,071,000円
障害年金0円

厚生年金2級と国民年金のみ3級との格差は天と地のような違いになっています。

特に、同じ3級でも、厚生年金の場合には最低保障額が発動しているのに対して、国民年金のみの場合には0円です。

 制度が違うとはいえ、同じ公的年金です。

同じ障害を負っているのに、こういった格差があると知ったときは正直おどろきました。

さいごに

今回は、障害年金の2級と3級の受給額の違いを解説してきました。

ポイントは、

  • 障害基礎年金には3級はない
  • 障害厚生年金3級は2級と計算方法が同じだけど、最低保障額がある
  • 障害厚生年金2級には障害基礎年金2級がセットになってもらえる

の3つでした。

障害の中には基本的に3級(またはそれ以下の障害手当金)にしか認定されないものがあります。

たとえば、鼻の欠損(著しい機能障害)は障害手当金にしか認定されないのが原則ですし、腕や足への人工関節や人工骨頭の挿入置換もそれだけでは3級と認定されることがほとんどです。

同じ障害を負っても、初診日に加入していた年金の種類によって、大きな格差が生じている現状があります。

働き方が多様化している現在、本当にこのままの制度でいいのかを考える時期にきているように思います。

希望する人ができるだけ厚生年金に加入できるような仕組みづくりが必要なのかもしれません。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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障害年金のことを1ミリも知らないひとのための「障害年金とは?」

障害年金のことをまったく知らないひとに向けて「障害年金とは?」を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、障害年金のことをまったく知らないひとに対して、社会保険労務士が「障害年金とは?」を解説していこうという試みです。

こんなことを偉そうに言っている筆者も、実は10年くらい前までは本当のところ障害年金って何かよくわかっていませんでした。

過去の自分にむけて、障害年金とはどんなものかをうまく説明できるかやってみようと思います。

 

障害年金ってどんな人がもらえるの?

障害年金っていくらもらえるの?

障害年金はどうやったらもらえるの?

 

こんな疑問にわかりやすくお応えしようと思います。

今回は、わかりやすさを最優先します。

よく知っているひとからすれば、正確性に欠ける表現もあるかもしれません。

ご容赦いただけますようお願いいたします。

なお、この記事は投稿日(2020.5.20)現在の情報を元に執筆されています。

 

「障害年金」をひとことでいえば、病気やケガで一定の障害を負ったときに国からもらえる年金のことです。

「そんなことはわかっているよ」と突っ込まれそうなので、基本中の基本のポイントをあげると、

  • 障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある
  • 障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い
  • 障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

の3つになります。

順番に説明していましょう。

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障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある

障害年金は誰でももらえる可能性があります。

障害年金をもらうためには障害者手帳をもっている必要はありません。

これは誤解している人が結構多いです。

障害者手帳がなくても障害年金はもらえますし、逆に障害者手帳をもっているからといって必ずしも障害年金がもらえるとは限りません。

障害者手帳を持ってる人の特権ではないのです。

 

ただし、年齢による制限があります。

それは20歳です。

「障害年金は20歳になってから」と覚えておいてください。

なお、20歳になる前に障害を負った場合でも、20歳になってから障害年金の支給が始まります(一部例外があります)。

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障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い

障害年金でもらえる金額は、障害基礎年金(国民年金に入っているひとがもらえる障害年金)か障害厚生年金(厚生年金に入っているひとがもらえる障害年金)かで違っています。

障害厚生年金をもらえるひとの方が多くなります。

 

障害年金は障害が重い方ほどもらえる金額は多くなります。

  • 障害基礎年金は重い方から1級、2級の2段階にわかれています
  • 障害厚生年金は重い方から1級、2級、3級の3段階にわかれています
  • もらえる金額は1級は2級の1.25倍です

 

でもこれだけでは、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額が多くなる理由はわかりませんね。

その理由を説明しましょう。

それは、障害厚生年金の1級、2級のひとは、同時に障害基礎年金ももらえるからです。

厚生年金に入っているひとは、同時に国民年金にも入っているので、両方もらえるというわけです。

これに対して、国民年金にだけ入ってるひとは、障害厚生年金はもらえずに、障害基礎年金だけをもらうことになります。

そのため、障害基礎年金だけしかもらえないひとは、3級相当の障害の場合には、障害年金はまったくもらえないということになります。

障害基礎年金には3級がないからです。

 

話を整理しましょう。

  • 障害厚生年金がもらえるひと
    • 1級:障害厚生年金(1級)+障害基礎年金(1級)
    • 2級:障害厚生年金(2級)+障害基礎年金(2級)
    • 3級:障害厚生年金(3級)
  • 障害基礎年金だけをもらえるひと
    • 1級:障害基礎年金(1級)
    • 2級:障害基礎年金(2級)
    • 3級:なし

どうやっても障害厚生年金をもらえる人の方がお金が多くなりますね。

具体的な金額についてはここでは省略しますが、もっと詳しく知りたいというひとは、「障害年金はいくらもらえる? 障害年金の金額をざっくり紹介」という記事をごらんください。

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障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

障害年金をもらうための条件は3つあります。

そのすべてをクリアしなければいけません。

順にみていきましょう。

 

初めて病院で診てもらった日が超重要

障害年金をもらうためには、障害の原因になった病気やケガのために初めて病院で診てもらった日がとても重要になります。

これを「初診日」といいます。

初めて具合が悪くなった日ではありません。

重要なのは初診日です。

初診日は医師によってちゃんと証明してもらえるので、とても明確な基準になるからです。

 

初診日によってどの年金がもらえるか(それとももらえないのか)が決まります。

  • 障害基礎年金をもらうには、65歳になるまでに初診日がある必要があります
  • 障害厚生年金をもらうには、厚生年金に加入している期間に初診日がある必要があります

このように初診日がどこにあるかの条件をクリアする必要があります。

初診日が65歳以降であれば、障害基礎年金はもらえません。

また、初診日に厚生年金の加入者であれば障害厚生年金がもらえ、そうでなければ障害厚生年金はもらえないということです。

 

たとえば、Aさんは会社に勤めているときに体調不良だったのですが、忙しくて病院に行けなかったとしましょう。

Aさんは会社を辞めてようやく病院に行ったとします。

そこで病気がみつかった場合どうなるでしょうか。

Aさんが初めて病院に行ったときには会社を辞めていますので、厚生年金の加入者ではなくなっています。

つまり、この病気でAさんが障害を負った場合には、障害厚生年金はもらえないということです。

Aさんは病院に行く日が遅かったばかりに、障害基礎年金しかもらえません。

そして、もしも、この障害が3級相当だったとしたら・・・

そうです、Aさんは障害年金をまったくもらえなくなってしまうのです(障害厚生年金には3級がありますが、障害基礎年金には3級がないですからね)。

 

このほかにも、いつから障害年金がもらえるのかを決める基準日も初診日によって決まりますし、ちゃんと保険料をはらっていたかどうかをチェックする基準日も初診日によって決まります。

とにかく、障害年金にとって初診日はとても重要な日なのです。

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保険料をちゃんと払っていないと障害年金がもらえなくなる可能性がある

障害年金をもらうためには、一定期間ちゃんと保険料を払っている必要があります。

これを「保険料納付要件」といいます。

保険料納付要件をかなりざっくりいうと、初診日の前日の時点で

  • 前々月からさかのぼって1年以内に保険料の未納がない
  • 前々月までの全期間のうち3分の2以上の期間の保険料を払っている(免除でもよい)

のどちらかである必要があります。

もしこの条件をクリアできなければ、どんなに重い障害を負っても、障害年金はまったくもらえません。

これはかなり厳しいことになります。

あとで気づいて慌てて保険料を払っても許してもらえません(ここらへんを詳しく知りたいひとは「未納保険料を後から払えば障害年金はもらえるの?【年金の常識14】」という記事をお読みください)。

もしも経済的理由で保険料が払えないのであれば、免除や猶予の制度もありますので年金事務所や行政の窓口に相談されることを強くおすすめします。

 

病気やケガの種類によってどの程度の障害なら障害年金がもらえるか決まっている

障害年金をもらうための障害の程度は、病気やケガの種類によって決まっています。

これは「障害認定基準」に定められています。

「眼の障害」「聴覚の障害」といったように18の障害の基準が定められています。

かなりの分量になりますが、日本年金機構のホームページでダウンロードできますので、興味のあるひとは一度みてみてはいかがでしょうか。

 

また、病気やケガの種類に応じて提出する診断書も決まっています。

障害年金の請求には専用の診断書がありますので、病気やケガに応じて必要な診断書を提出します。

診断書は8種類あります。

18の障害の基準が定められているのに診断書は8種類しかないのは、1つの診断書で複数の障害に対応しているものがあるからです。

たとえば「聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用の診断書」といったものがあります。

こちらも、日本年金機構のホームページでダウンロードできますので、興味のあるひとは一度みてみてはいかがでしょうか。

 

提出された診断書などの資料から障害認定基準に基づいて、国(日本年金機構)が障害の程度を決めていくというわけです。

障害認定は診断書で決まるといっても言い過ぎではありません。

なので、正確な情報が反映された診断書をどうやって医師に作ってもらうかがポイントになります。

診断書一発勝負というわけではないですが、そんな感じがしないでもありません。

 

障害の程度に関連して、もうひとつ重要なことがあります。

それは、どの時点での障害の程度を判断するのかという問題です。

この答えは2つあります。

それは、①初診日から1年6ヶ月が経過した日、または治療を続けてもこれ以上良くならないと確定した日のどちらか早い方(これを「障害認定日」といいます)、②障害年金を請求する日、の2つです。

①と②の違いは請求の方法の差です(これを「認定日請求」と「事後重症請求」といいます)。

ただ、これは少し難しい話になるので、請求の方法のお話は別の機会にさせてください。

 

まとめ

今回は、障害年金のことをまったく知らないひとに対して「障害年金とは?」を解説してきました。

ポイントは、

  • 障害年金は障害者手帳を持っていなくても誰でももらえる可能性がある
  • 障害基礎年金よりも障害厚生年金の方がもらえる金額は多い
  • 障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしないといけない

この3つでした。

いかがでしょうか。

障害年金のことをざっくりとでもわかっていただけたでしょうか。

障害年金は、病気やケガで仕事ができなくなったようなときにとても頼りになる制度です。

制度をざっくりとでも理解しておけば、いざというときに役に立つかもしれません。

とくに、いざ障害年金を請求しようと思ったら、保険料を払っていなかったのでもらえないなんてことになれば本当に大変なことになります。

この記事を読んでくださったひとがそのようなことにならないよう願っています。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前後の記事

前の記事:障害年金の更新の提出期限を守るよりも診断書の内容の方が絶対的に重要な理由

後の記事:ここまで違う 障害年金2級と3級の受給額

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障害年金の更新の提出期限を守るよりも診断書の内容の方が絶対的に重要な理由

障害年金の更新の際に障害状態確認届(診断書)の提出期限よりも内容の正確性の方が重要な理由を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、社会保険の国家資格である社会保険労務士が、障害年金の更新の際に障害状態確認届(診断書)の提出期限よりも内容が重要な理由を解説していきます。

 

「障害年金の更新の提出期限が迫っているな。

障害状態確認届(診断書)を早くださないと。

提出期限に間に合わせるために、スピード重視で医師に作ってもらって出したほうがいいのかな?

 

このように考えている人はいませんか?

でも「急がば回れ」ということわざもあります。

なにごともスピード重視が最善というわけではなさそうです。

 

今回のポイントは、

  • 障害年金(有期認定)の更新には障害状態確認届(診断書)の提出期限がある
  • 障害年金の更新の提出期限よりも障害状態確認届(診断書)の内容の方が重要
  • 障害年金の更新の提出期限を過ぎても、年金は一時差し止めになるだけですむ

の3点です。

順番にみていきましょう。

なお、この記事は投稿日(2020.5.19)現在の情報を元に執筆されています。

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障害年金(有期認定)の更新には障害状態確認届(診断書)の提出期限がある

障害年金が有期認定の場合には、必要な年の誕生月の末日までに、障害状態確認届(診断書)を日本年金機構に提出しなければいけません。

障害状態確認届(診断書)は誕生月の3ヶ月前の月末に日本年金機構から送られてきます。

障害状態確認届(診断書)には、提出期限(誕生月の月末)前3ヶ月以内の障害の状態が記載されている必要があります。

なので、障害状態確認届(診断書)がお手元に届いたら速やかに受診して、診断書の作成を医師に依頼した方がいいでしょう。

障害状態確認届(診断書)の作成にかかる時間は医師の都合次第なところもあります。

3ヶ月あるからと余裕に考えずに、早めに対応してください。

ちなみに以前は障害状態確認届(診断書)の作成期間は提出期限1ヶ月以内でした。

これが2019年8月から3ヶ月以内に変更になりました。

まあ、3ヶ月も意外に早く過ぎてしまうものですけど。

 

では、提出期限さえ守れば、それでいいのでしょうか。

答えはノーです。

提出期限よりももっと重要なことがあります。

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障害年金の更新の提出期限よりも障害状態確認届(診断書)の内容の方が重要

障害状態確認届(診断書)の内容次第で等級が級落ち・支給停止もありうる

障害状態確認届(診断書)の提出期限を守ったとしても、その内容によって障害の程度が軽度になったと判断されれば、等級は級落ちしたり、最悪の場合支給停止になる可能性があります。

  • 級落ちとは、1級から2級になったり、2級から3級になったりすることです
  • 支給停止とは、障害基礎年金の場合には2級に該当しなくなることで、障害厚生年金の場合には3級に該当しなくなることです

受給額でいえば、たとえば1級から2級に級落ちするということは受給額が20%ダウンするということで、支給停止となれば0円になるということです。

これはつらいです。

級落ちや支給停止に不服であれば、審査請求などを行うことになります。

 

更新の制度は障害の程度に変化がないかをチェックするためのもの

そもそも更新の制度は障害の程度に変化がないかをチェックするためのものです。

本当に障害の程度が軽度になっているのであれば、級落ちや支給停止は当然のことなのです。

しかし、とくに障害の程度に変更がないにもかかわらず、障害状態確認届(診断書)の記載が正確でないためにこのような判断になったのであればどうでしょう。

提出前に障害状態確認届(診断書)の内容をチェックしていなかったことを悔やむしかありません。

仮に障害状態確認届(診断書)の提出期限を守ることを優先して、内容の確認を怠っていたのであれば、それは本末転倒です。

 

正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を医師に作成してもらうことを最優先すべき

提出期限も大切ですが、正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を医師に作成してもらうことが最優先されるべきです。

そのためには、医師へ正確な情報を伝える努力をおしまないことが大切です。

医師としっかりコミュニケーションをとって、現在の症状を正確に伝えてください(メモを作ってもいいでしょう)。

また、障害状態確認届(診断書)が作成されたあとも、その内容はしっかり確認しましょう。

前回提出した資料の写しを持っているなら、照らし合わせることも大切です。

もしも、正確な情報が反映されていないと感じるのであれば、医師に相談してその旨を伝えてください。

もちろん、障害状態確認届(診断書)は医師が医学的な見地から作成するものですので、不当な要求をしてはいけません。

あくまでも正確な情報を伝える努力にとどめてください。

その結果、多少時間がかかったとしても、それは必要なプロセスです。

正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を作成してもらったら、速やかに提出しましょう。

なお、次回の更新の際の資料にするために、コピーをとって保管しておくことを忘れないようにしてください。

 

障害年金の更新の提出期限を過ぎても、年金は一時差し止めになるだけですむ

障害状態確認届(診断書)の作成に時間を要してしまって提出期限を過ぎた場合には、年金の支給が「一時差し止め」になることがあります。

「一時差し止め」とは、文字通り年金の支給がいったん保留されることです。

障害状態確認届(診断書)が提出されたあとに、障害の等級が変わっていないことが再認定されれば、保留されていた年金はまとめて支給されます。

これに対して、級落ちや支給停止が確定した場合には、その後に額改定請求や支給停止事由消滅届によって元の等級で年金の支給が再開されてたとしても、級落ちや支給停止をしていた期間の年金は還ってきません。

そういう意味で、「一時差し止め」はペナルティとしては軽い方です。

一時差し止めを覚悟してでも、正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)の作成を優先した方がいいでしょう。

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まとめ

今回は、障害年金の更新の際に障害状態確認届(診断書)の提出期限よりも内容が重要な理由をお話してきました。

ポイントは、

  • 障害年金(有期認定)の更新には障害状態確認届(診断書)の提出期限がある
  • 障害年金の更新の提出期限よりも障害状態確認届(診断書)の内容の方が重要
  • 障害年金の更新の提出期限を過ぎても、年金は一時差し止めになるだけですむ

ということでした。

筆者の経験からしても、障害状態確認届(診断書)の内容を確認もせずに提出して、あとで慌てるというケースが散見されます。

更新の際には、正確な情報が反映された障害状態確認届(診断書)を医師に作成してもらうことを最優先にしていただければと思います。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

前後の記事

前の記事:障害年金を受給したら、健康保険はどうなるのか?

後の記事:障害年金のことを1ミリも知らないひとのための「障害年金とは?」

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障害年金を受給したら、健康保険はどうなるのか?

障害年金の受給が公的医療保険(健康保険等)に与える影響を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、社会保険の国家資格である社会保険労務士が、障害年金を受給した場合に公的医療保険(健康保険等)にどのような影響があるのかを解説していきます。

話を整理するために、

  • 会社の健康保険に加入している人
  • 家族の会社の健康保険の扶養に入っている人
  • 国民健康保険に加入している人

この3つのケースについて考えます。

なお、この記事は投稿日(2020.5.18)現在の情報に基づいて執筆されています。

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結論から先にいいますと、

  • 健康保険の被保険者本人が障害年金を受給しても特に影響はありません
  • 健康保険の被扶養者が障害年金を受給した場合には扶養から外れてしまう可能性があります
  • 国民健康保険の被保険者が障害年金を受給した場合には保険料が安くなる可能性があります

というお話です。

それでは順にみていきましょう。

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健康保険の被保険者本人が障害年金を受給しても特に影響はありません

障害年金の受給者が、会社の健康保険に加入している(健康保険の被保険者本人である)場合には、健康保険に与える影響は特にありません。

保険料も変化しませんし、受けられるサービスが変わるわけでもありません。

そのまま健康保険に加入しつづけることができます。

 

なお、健康状態の問題で会社を辞めるのであれば、一般の退職の場合と同じく被保険者の資格は喪失します。

退職して資格喪失したあとは、①現在の健康保険の任意継続被保険者となる、②家族の健康保険の扶養に入る、③新しく国民健康保険に加入するといったパターンが考えられます。

 

健康保険の被扶養者が障害年金を受給した場合には扶養から外れてしまう可能性があります

障害年金の受給者が、家族が勤める会社の健康保険の扶養に入ってる(健康保険の被扶養者である)場合には、収入要件に影響があります。

健康保険の被扶養者になるためには、

被扶養者の年間収入が、

  • 130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は年間収入180万円未満

であり、かつ

  • 被扶養者の収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満であること(同居の場合)
  • 被扶養者の収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満(別居の場合)

のどちらかであることが原則として必要です。

そして、この「被扶養者の年間収入」には非課税所得である障害年金も含まれます。

 

つまり、被扶養者の障害年金を含めた年間収入が、

  • 180万円以上になった場合
  • 180万円未満でも、被保険者の収入の半分以上となった場合(同居の場合)か仕送り額以上になった場合(別居の場合)

には、原則として被扶養者になれない(=扶養から外れる)ということです。

例外として、同居の場合には扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときには、被扶養者の収入が被保険者の収入の半分以上となった場合でも扶養が認められることもあります。

 

障害年金の受給者が扶養から外れた場合には、新たな公的医療保険(ほとんどが国民健康保険になるでしょう)に加入する必要があります。

 

国民健康保険の被保険者が障害年金を受給した場合には保険料が安くなる可能性があります

障害年金の受給者が、自ら国民健康保険に加入している場合には、国民健康保険を継続できるのはもちろんですが、翌年度からの国民健康保険料が安くなることもあります。

障害年金は非課税所得ですので、障害年金しか収入がない場合にはその人の国民健康保険料の所得割は0になります。

また、国民健康保険料の均等割も低所得であれば一定の減額を受けることができます(この減額を受けるためには、所得がないことを申告する必要があります。詳しくは、「障害年金をもらいはじめたら確定申告をしなければならないの?【年金の常識15】」をお読みください)。

 

なお、国民健康保険料は世帯主に納付義務が生じます。

なので、たとえば、世帯主である夫は会社の健康保険に加入しているような場合でも、妻が障害年金を受給し始めて扶養から外れて国民健康保険に加入したような場合には、妻の国民健康保険料を世帯主である夫が納付する義務が生じます。

 

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まとめ

今回は、障害年金を受給した場合に公的医療保険(健康保険等)にどのような影響があるのかという問題について、

  • 健康保険の被保険者本人が障害年金を受給しても特に影響はありません
  • 健康保険の被扶養者が障害年金を受給した場合には扶養から外れてしまう可能性があります
  • 国民健康保険の被保険者が障害年金を受給した場合には保険料が安くなる可能性があります

というお話をしてきました。

日本では国民皆保険制度が整っていますので、何らかの公的医療保険に加入するのが原則です。

公的医療保険にも複数の種類がありますのでややこしいところではありますが、いろいろと情報を集めて対応してもらえればと思います。

なお、公的医療保険には原則75歳以上の人が加入する後期高齢者医療保険制度というものもありますが、国民健康保険の場合とほとんど同じだと思ってください(納付義務者は被保険者本人ですが、世帯主や被保険者本人の配偶者が連帯納付義務者となるといった違いはあります)。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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障害年金をもらいはじめたら確定申告をしなければならないの?【年金の常識15】

障害年金に個人所得税の確定申告が必要なのかを社会保険労務士が解説

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第15回目の質問は、障害年金を受給した場合に個人の所得税の確定申告が必要なのかという問題です。

障害年金の受給を検討している人や、すでに受給をしている人のなかには、

  • 障害年金をもらったら確定申告をしなければいけないのか
  • 確定申告をしなかったら自治体から所得未申告の確認の手紙がきたけど、本当は確定申告をしなければいけなかったのではないか

このような疑問をお持ちの人がいらっしゃいます。

今回はそのような疑問にご回答します。

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質問:障害年金をもらいはじめたら確定申告をしなければならないのですか

回答

障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金、障害手当金)は非課税所得です。

障害年金以外に所得がないのであれば、確定申告は必要ありません。

ただし、国民健康保険等の保険料(均等割)の減額が必要な場合には、自治体に対して所得のないことを申告しなければいけません(自治体から確認のための文書が届くこともあります)。

 

解説

押さえておきたいポイントは2つあります。

  • 障害年金は非課税所得なので、確定申告は必要ない
  • 国民健康保険料等の均等割の減額を受けるには、自治体に対して所得がないことの申告が必要

順番にご説明していきます。

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  • 障害年金は非課税所得なので、確定申告は必要ない

障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金、障害手当金)は非課税所得です(国民年金法25条。厚生年金保険法41条2項)。

そのため、障害年金以外に所得がないような場合には確定申告は必要ありません。

これは障害年金の受給額の多い少ないには関係ありません。

また、障害年金は非課税所得ですので、所得税だけでなく住民税(所得割)も非課税です。

 

  • 国民健康保険料等の均等割の減額を受けるには、自治体に対して所得がないことの申告が必要

障害年金の確定申告は不要ですが、国民健康保険等の均等割の減額を受けるためには、各自治体に別途所得のないことの申告(住民税の申告)が必要になります。

自治体の把握した世帯の所得の有無や額などの情報を基準にして、一定の要件をみたせば国民健康保険料等の均等割が減額されます。

しかし、障害年金は非課税所得なので、ある人が障害年金を受給しているのかという情報は各自治体では把握できません(これに対して、給与や老齢年金のように所得税を源泉徴収されている人や事業所得などを自ら確定申告をしている人の情報は各自治体が把握しています)。

障害年金だけの所得の人が何もしなければ、所得未申告として扱われるということです。

所得未申告のままでは国民健康保険料等の均等割の減額を受けることができません。

そのため、これらの減額が必要な場合には、住民税に関して所得(所得がないこと)の申告が必要になります(保険料の算定のための申告の場合もあります)。

この申告の期限は確定申告と同じですが、それを提出していない場合には、5月ころに自治体から所得未申告の確認の書面が届くこともあります。

必要に応じて対応してください。

なお、自治体に所得未申告のままでは国民健康保険料等の均等割の減額は受けられませんが、所得のない人が所得の申告をしなかったからといって、それが違法ということではありません。

 

さいごに

今回は、障害年金を受給した場合に個人の所得税の確定申告が必要なのかという問題について、

  • 障害年金は非課税所得なので、確定申告は必要ない
  • 国民健康保険料等の減額を受けるには所得がないことの申告が必要

という2つのポイントを解説してきました。

障害年金は非課税所得ですが、何もしないでいれば思わぬ不利益をうけることもあります。

ここではふれませんでしたが、国民年金の第1号被保険者になっている場合には、保険料の免除の手続きというものもあります。

情報をしっかり収集して、ご自分に必要な手続きを行ってください。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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障害年金はいくらもらえる? 障害年金の金額をざっくり紹介

障害年金がいくらもらえるのかについて、ざっくりとした金額を社会保険労務士が解説

社会保険労務士・オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、公的年金の国家資格である社会保険労務士が、障害年金の受給金額について概要を解説していきます。

  • 病気やケガの後遺症で仕事ができなくなって障害年金の請求を考えているひと
  • 障害年金を受給した場合の収入をざっくりとシミュレーションしてみたいひと
  • 障害年金の受給金額がどうやって決まるのかを理解したいひと

こういった人たちにお読みいただきたい記事です。

 

この記事でお伝えしたいポイントは、

  • 障害基礎年金は定額制
  • 障害厚生年金は給料に比例して増えていく(報酬比例)
  • 請求方法によって、最大5年分さかのぼって一括でもらえる場合とこれからの分しかもらえない場合がある

この3点です。

 

順を追ってお話ししていきます。

なお、この記事は投稿日(2020年5月10日)現在の情報を元に執筆されています。

 

ひとくちに障害年金といっても、初診日(障害の原因になった病気やケガについて初めて医師や歯科医師の診療を受けた日)に加入していた公的年金の種類によって、障害基礎年金と障害厚生年金にわかれています。

障害年金を請求する日ではなく、初診日を基準にしていることは注意が必要です(会社員だから必ず障害厚生年金の対象になるというわけではないのです)。

20歳~60歳までの人を例にとってみると

  • 初診日に国民年金に加入:障害基礎年金(1または2級)
  • 初診日に厚生年金にも加入:障害厚生年金(1~3級、または障害手当金)

となります。

この場合、初診日に厚生年金にも加入していた人が、障害等級1または2級であれば、障害基礎年金と障害厚生年金を同時にもらうことができます。

なぜなら厚生年金に加入している人は同時に国民年金にも加入しているからです(これを「国民年金第2号被保険者」といいます)。

それでは、障害基礎年金と障害厚生年金はいくらもらえるのかみていきましょう。

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障害基礎年金は定額制

障害基礎年金はいくらもらえる?

結論からいえば、障害基礎年金はつぎのような定額制です(2020年度の年額)。

  • 【1級】 97万7125円(年額)+子の加算
  • 【2級】 78万1700円(年額)+子の加算
  • 【子の加算額】第1子・第2子:各22万4900円(年額)、第3子以降:各7万5000円(年額)

たとえば障害等級2級の人に子(基本的には高校を卒業するまでの子とお考えください)が3人いた場合には、

78万1700円+(22万4900円×2人)+7万5000円=130万6500円(年額)

となります。

これらの金額は毎年度改定されます。

なお、障害基礎年金には、子の加算はありますが、配偶者の加算はありません。

これにたいして、障害厚生年金(1級、2級)には配偶者の加給年金がありますが、子の加給年金はありません(詳しくは障害厚生年金のところで説明します)。

 

障害基礎年金の額は、国民年金保険料が一部未納や免除期間などがあっても定額制です(減らされたりはしません)。

ただし、障害年金をもらうためには、保険料納付要件というのがあります。

ですので、一定期間以上の保険料未納期間があって保険料納付要件をみたさない場合には、障害年金はまったくもらえません。

 

障害年金生活者支援給付金

障害基礎年金の受給者には、前年の所得が一定基準(扶養親族がいない場合には462万1000円)以下の場合に障害年金生活者支援給付金が別途給付されます(厳密には障害年金ではありませんが、関連する収入なので併せてご説明します)。

給付額(2020年度)は、

  • 1級:6288円(月額)⇒7万5456円(年額換算)
  • 2級:5030円(月額)⇒6万0360円(年額換算)

です。

現時点では給付の終期はありません(要件をみたせば、障害基礎年金を受給している限りずっともらえます)。

新たに障害年金を請求する際には、障害年金生活者支援給付金もあわせて手続きしましょう。

 

偶数月に2ヶ月分が振り込まれる

障害年金に限らず、一般的に公的年金の支給は、支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始まります。

そして、支給期月は、偶数月(2、4、6、8、10、12月)にそれぞれの前月分までの分(通常は2ヶ月分)が支払われます。

支給日は15日(金融機関の営業日でない場合には前の営業日)です。

ですので、たとえば2020年4月15日に支給された年金は2020年2、3月分のものということです。

これは、障害年金生活者支援給付金の場合も同様で、年金支給日と同じに日に前2ヶ月分が給付されます。

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障害厚生年金は給料に比例して増えていく(報酬比例)

障害厚生年金はいくらもらえる?

さきほどみたように障害基礎年金は定額制でしたが、障害厚生年金はそうではありません。

基本的には、障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過した日か症状固定日のどちらか早い方が原則)の時点でのそれまでの平均した月給(正確には「平均標準報酬(月)額」といいます)に比例するとお考えください(これを報酬比例といいます)。

ちょっと難しいと思いますが、基本的な計算式はつぎのとおりです(2020年度の年額)。

  • 【1級】(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(22万4900円)〕
  • 【2級】(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(22万4900円)〕
  • 【3級】(報酬比例の年金額) ※最低保障額 58万6300円
  • 【障害手当金】(報酬比例の年金額)×2  ※最低保障額 117万2600円
  • 1級と2級には配偶者の加給年金がありますが、3級と障害手当金には配偶者の加給年金はありません

そして、報酬比例の本来的な計算方法はつぎ①と②を合算したものです(2020年度の年額)

  • ①平均標準報酬月額 × 7.125 / 1000 ×(2003年3月までの被保険者期間の月数)
  • ②平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 ×(2003年4月以降の被保険者期間の月数)
  • 被保険者期間が300ヶ月(25年)未満の場合には300ヶ月とみなして計算します
  • 1994年の水準で標準報酬を再評価して年金額を計算する「従前額保障」があります

 

とりあえず最低限のことを書かせていただきましたが、正直言って、障害厚生年金の報酬比例の年金額を正確に計算するのはとても大変な作業です。

ですので、30歳程度のお若い(会社員歴が25年(300ヶ月)未満)の人の場合には、ざっくりと、

これまでの給料の総合計(ボーナス込みの額面額)÷ 入社してからの月数 × 1.5

で計算してみるのもいいでしょう。

1.5をかけているのは、5/1000の300ヶ月分という意味です。

かなりざっくりとした計算方法ですが、大幅に外れることはないと思います。

たとえば、会社員を7年間(84ヶ月)やっている人で、平均年収300万円(7年間の合計2100万円)の場合であれば、

2100万円 ÷ 84ヶ月 × 1.5=37万5000円

といった感じです。

なお、1級の場合には、これを1.25倍します。

 

もうひとつ、ざっくり計算の方法としては、「ねんきん定期便」のハガキを利用してもいいでしょう。

「ねんきん定期便」は老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の目安が掲載されていますが、障害厚生年金のざっくり計算にも使えます。

障害認定日に近い年の「ねんきん定期便」を確認して、

  • 厚生年金の加入期間が300ヶ月以上であれば、そこの老齢厚生年金の額がその時点での障害厚生年金の報酬比例額に近い金額です(完全には同じではありませんが、あくまでざっくりした目安です)
  • 厚生年金の加入期間が300ヶ月未満の場合には、老齢厚生年金の額を厚生年金の加入月数で割って、300をかけてください

たとえば、老齢厚生年金の額が30万円、厚生年金の加入月数が150の場合

30万円÷150×300=60万円

といったかんじです。

かなりざっくりですが、障害厚生年金(報酬比例額)に近い金額になると思います。

この場合も1級の場合には、1.25倍します。

 

障害厚生年金3級、障害手当金には最低保障額がある

障害厚生年金の特徴として、最低保障額が決められています。

これは障害基礎年金がもらえない人(3級か障害手当金の人がメイン)のために定められています。

  • 障害厚生年金:58万6300円(年額)
  • 障害手当金:117万2600円(一時金=一括で一度だけ支給されるもの)

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障害基礎年金と障害厚生年金の金額のイメージ

ここまでのことをまとめて、障害基礎年金と障害厚生年金の金額をイメージしてみましょう。

(表1)をご覧ください。

これは、2020年度の障害年金の金額(配偶者及び子なし)の場合のイメージです。

障害厚生年金の受給額(グレーの部分)は報酬によって人それぞれなので、ここでは2003年4月以後に厚生年金に加入した人で平均標準報酬額30万円、被保険者期間300ヶ月みなしと設定して、ざっくりと本来水準で計算したものです。

その結果、障害厚生年金3級と障害手当金は最低保障額になっています。

なお、障害基礎年金に上乗せされる障害年金生活者支援給付金はこの(表1)には入っていません。

障害基礎年金1級または2級の人で、障害年金生活者支援給付金がもらえる場合には、1級に7万5456円(年額)=6288円(月額)、2級に6万0360円(年額)=5030円(月額)を加算してください

 

障害の程度が1、2級であっても、障害厚生年金がなければ月額10万円を超えることはむずかしいことがわかります。

仮に障害基礎年金に子の加算がついたとしても、子が高校を卒業してしまえば、加算はなくなります。

障害基礎年金だけだと経済的には少し心配な金額かもしれません。

 

また、障害厚生年金であっても、3級の場合には障害基礎年金を併せてもらえません。

その場合、月額は5万円程度です。

高給の期間が長い人であれば、3級の障害厚生年金の額はもっと増えるでしょうが、若い人の場合にはこのように最低保証額になることも多いです。

ですので、3級の場合には短時間勤務にするなど工夫をして、就労を継続するこも検討すべきでしょう。

 

請求方法によって、最大5年分さかのぼって一括でもらえる場合とこれからの分しかもらえない場合がある

障害年金は請求の方法によって、さかのぼりができるかどうかが分かれます。

さかのぼりができれば、これまでの最大5年分が一括して最初に支給されます。

2級の障害基礎年金だけの場合であっても、約78万円×5年分=約390万円です。

けっこう大きな額になります。

 

どのような場合にさかのぼりができるのでしょうか。

  • 認定日請求(≒遡及請求):できる(障害認定日の翌月までさかのぼって支給。最大5年)
  • 事後重症請求:できない(請求日の翌月から支給)
  • 基準障害による請求(「初めて2級」といったりもします):できない(請求日の翌月から支給)

このようにさかのぼりができるのは、認定日請求(≒遡及請求)だけなのです。

 

これらの請求方法の違いについてざっくりと説明すると次のとおりです。

  • 認定日請求(≒遡及請求):障害認定日に障害等級に該当している場合
  • 事後重症請求:障害認定日には障害等級に該当しておらず、その後に(症状が悪化して)障害等級に該当した場合
  • 基準障害による請求(初めて2級):既に3級以下の「他の障害」のある人が、新たな傷病による障害(基準障害)が発生した場合に、それらを併合して2級以上になった場合

 

とくに障害認定日から1年以上経過して障害年金を請求するような場合には、認定日請求によってさかのぼりができるかどうかがとても重要になります。

最初に一括でまとまった金額がもらえると、かなり経済的にありがたいです。

このような場合には、医師(障害認定日当時の医師が望ましい)と綿密に相談して、不備のない適正な診断書を作成してもらわなければいけません。

自分だけで対応が難しいような場合であれば、障害年金を扱っている社会保険労務士や弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

 

まとめ

今回は、障害年金の受給金額について概要を解説してきました。

もういちど、ポイントをまとめると、

  • 障害基礎年金は定額制
  • 障害厚生年金は給料に比例して増えていく(報酬比例)
  • 請求方法によって、最大5年分さかのぼって一括でもらえる場合とこれからの分しかもらえない場合がある

の3点です。

ざっくりとではあっても、障害年金の受給金額のイメージをつかんでもらえればと思っています。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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国民年金未納保険料と障害年金保険料納付要件の関係を社会保険労務士が解説

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第14回目の質問は、障害年金を受給するためには、いつまでにどのくらいの保険料を納めていないといけないのかという問題です。

国民年金の第1号被保険者(自営業者やフリーランスなどの人)が国民年金保険料を納めるのは法律上の義務ですが、免除や猶予の手続きをとらずに、保険料を納めないままになっている人がいるのも現実です。

そういった保険料が(一部)未納になっている人が、病気やケガが原因で何らかの障害が残ったときに、障害年金を請求する段階になって、あわてて保険料を納めようとするケースがあります。

未納保険料を納めること自体は義務の履行として当然のことではありますが、はたして、未納保険料を納めれば障害年金はもらえるようになるのでしょうか。

今回は、そのようなお話です。

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質問「今は元気なので、国民年金(1号被保険者)の保険料を納めていません。病気がみつかった後に未納保険料を納めれば、障害基礎年金をもらうのに問題はないですか?」

回答:初診日以後に納められた未納保険料は、障害(基礎)年金がもらえるかどうか(保険料納付要件)の判定にあたっては、「未納」扱いになります

したがって、この場合には、未納期間があることを前提にして、障害(基礎)年金がもらえるかどうかを判定することになります。
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【解説】

障害年金をもらうためには、本日(2020年4月2日)現在、次の2つの「保険料納付要件」のうち、どちらか1つをクリアしなければなりません(1991年5月1日以後に初診日がある場合)。

  • 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(これを「2/3要件」といいます)
  • 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(これを「直近1年要件」といいます)

この2つの保険料納付要件は、「2/3要件」が原則で、「直近1年要件」が特例という関係なのですが、実務上は、まず「直近1年要件」を検討して、それがダメな場合に「2/3要件」を検討するという順番で行っています。

そこで問題となるのは、いつの時点で「2/3要件」や「直近1年要件」をクリアしていないといけないのかという点です。

それは、

初診日の前日

です。

 

たとえば、2017年1月に20歳となり国民年金の被保険者(1号)になった人の初診日が2020年2月10日だったとしましょう。

その場合、初診日の前日である2020年2月9日の時点で、「2/3要件」や「直近1年要件」をクリアしているかどうかを判定することになります。

(図1)をご覧ください。

一度も保険料を払ったことがないケースです。

この場合、初診日の前日(2020年2月9日)において、その前々月2019年12月以前1年間(2019年1月~12月)の期間に未納があり(全部未納ですね)、「直近1年要件」(青の矢印部分)をクリアできません。

また、20歳になった月(2017年1月)以降2019年12月までの期間に2/3以上の納付済や免除の期間がないことも明白ですので、「2/3要件」(オレンジの矢印の部分)もクリアできません。

したがって、2020年2月10日を初診日とする障害年金の請求はできないことになります(保険料を納めていないので、当然といえば当然ですが)。

そしてこの結論は、あわてて2月10日以後に2019年12月以前1年間(2019年1月~12月)の保険料を納めた場合でも、変わりません(図2)。

一見すると、「直近1年要件」(青の矢印部分)をクリアできているようにみえますが、これはあくまでも、2020年2月10日以後の納付状況であり、納付要件の判定基準日である2月9日現在の納付状況(図1)を変えることはできないのです。

これは、2020年2月10日以後に申請免除や猶予の制度を使っても同じことです(法定免除の場合には初診日以後の手続きでも認められます)。

「後出しジャンケン」は認められないのです。

なお、後で納めた2019年12月以前1年間(2019年1月~12月)の保険料は、将来の老齢基礎年金の受給額には反映されますので、その意味では無駄にはなりません。
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ところで、もしも保険料の納付状況を確認したところ、2020年2月9日現在で(図3)のような状況だった場合はどうでしょうか。

たとえば、自分の知らないところで、親が払ってくれていたようなケースです。

この場合であれば、2017年1月から2019年12月の36月のうち、24月が納付済となっていますので、ちょうど全体の2/3の期間の保険料を納めていることになります。

そうすると、「直近1年要件」(青の矢印部分)はクリアできませんが、「2/3要件」(オレンジの矢印の部分)はクリアできているので、「保険料納付要件」を充たすことができます。

 

なお、今回問題とした「保険料納付要件」は、初診日が20歳前(厚生年金の被保険者ではない期間)にある傷病については、問題とされません(=保険料を納めていなくても、障害基礎年金がもらえます)。

 

以上のように、保険料を「後で納めればいいや」といった気持ちで後回しにしていると、もらえるはずの障害年金がもらえなくなるといった、とてももったいないことになりかねません。

保険料が払えないときには、免除や猶予の制度をうまく利用して、もしものときに損をしないようにリスクマネジメントを行っていただきたいと思います。

障害年金の場合には、「保険料納付要件」の期間に免除などの期間があっても、障害年金の受給額が減額されることもありません(=満額もらえます)。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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障害年金と所得制限について社会保険労務士が解説

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第13回目の質問は、障害年金の受給者が給与所得などの所得がある場合に障害年金の受給額が減額されるのかという問題です。

障害年金に所得制限はあるのでしょうか。

これは何度か聞かれた質問なのですが、いくつかの似たような制度と混同してしまうところですので、一度まとめたおいた方がよいと思って、今回のテーマに選びました。

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質問「障害厚生年金と障害基礎年金の2級の受給者です。就職が決まったのですが、給料をもらい始めると、障害年金の受給額は減らされるのですか?」

回答:障害厚生年金(+障害基礎年金)の受給者の場合、給料などの収入や所得があっても、そのことだけで受給額が減らされることはありません。ただし、障害の原因になった傷病の種類によっては、就労していることで、等級が下がったり支給停止になる可能性はあります。

なお、国民年金の「20歳前傷病による障害基礎年金」の場合には、受給者に一定の所得があると、一部または全部が支給停止となります。

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【解説】

「仕事をしてると年金が減らされる」という話を聞いたことはないでしょうか?

この内容自体も不正確なのですが、この言葉が独り歩きをして、障害年金の場合にも、仕事をして一定の収入や所得があれば、障害年金の受給額が減額されると誤解されている人が意外といらっしゃいます。

結論からいえば、障害厚生年金(+障害基礎年金)の場合にはそのような制度はありません。

では、なぜこのような誤解が生じるのか。

筆者は何人かの人から同じような質問を受けたことがあるのですが、誤解が生じた理由をよくよく聞くと、次の3つの理由があるように思います。

それは、

  • 老齢厚生年金の「在職老齢年金」制度と混同している
  • 国民年金の「20歳前傷病による障害基礎年金」の所得制限と混同している
  • 生活保護の収入認定と混同している

の3つです。

 

まず、老齢厚生年金の「在職老齢年金」の制度ですが、受給している老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額が一定の金額を超えた場合に、その金額に応じて年金額が支給停止となる制度です。

在職老齢年金は、60歳台前半と65歳以後で計算方法が異なりますが、ここでは詳しくはふれないでおきます。

この在職老齢年金の制度こそが、「仕事をしてると年金が減らされる」という話の元ネタだと思われます。

いずれにしてもこれは、「老齢」厚生年金の制度であって、「障害」厚生年金の制度ではありません。

なお、国民年金の「老齢」基礎年金にも在職老齢年金の制度はありません。

 

次に、国民年金の「20歳前傷病による障害基礎年金」の所得制限ですが、これは、20歳前に初診日のある傷病が原因で障害を負って、障害基礎年金を受給している人に対するものです。

「20歳前傷病による障害基礎年金」の所得制限は、扶養親族の数にもよりますが、たとえば1人世帯(扶養親族なし)の場合、所得額が360万4000円を超えると年金額の2分の1が支給停止となり、462万1000円を超えると全額支給停止となります。

20歳前に初診日のある傷病では国民年金保険料を支払っていないので、このような所得制限が設けられているのです。

これに対して、20歳以後に初診日がある傷病の場合には、保険料を支払っていますので、所得制限はありません。

また、20歳前に初診日のある傷病であっても、保険料を支払っているのであれば、この所得制限は受けません。

20歳前に保険料を支払う場合というのは、20歳前に厚生年金の被保険者である場合です。

高校卒業後すぐに就職した場合のように、20歳前に厚生年金の被保険者になっていれば、20歳前の厚生年金の被保険者期間に初診日があっても、所得制限は受けません(=給料をもらっても障害年金は減らされません)。

 

最後は、生活保護の場合です。

生活保護の場合、給料のような収入は申告する必要があって、収入認定に応じて生活保護費が減額されることがあります。

生活保護は、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提となっていますので、給料が収入として認定されて、その分が減額されるのも納得できるところです。

しかし、障害年金は社会「保険」の給付です(保険料を払っていない「20歳前傷病の障害基礎年金」を除きます)。

障害年金はあくまでもご自身が納めた保険料が前提ですので(そのために「保険料納付要件」というものがあり、保険料を納めていない人は障害年金をもらえない場合があります)、その点において生活保護の制度とは異なっています。

なお、障害年金がもらえることで、生活保護費が減らされることはありますので、その点も混同しないようにしてください。
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筆者の経験上、これら3つの制度と混同して、「仕事をしてると障害年金が減らされる」と誤解している人がいらっしゃいました。

20歳前傷病による障害基礎年金の場合を除いて、障害厚生年金にも障害基礎年金にも所得制限はありませんので、誤解のないようにしたいところです。

 

なお、障害の種類によっては、給料の所得や収入額というよりも、「就労をしている」という事実が原因で、障害年金の受給額が減らされる(またはもらえなくなる)場合もありえます。

「就労をしている=障害の程度が軽くなった」と認定されてしまい、等級が下がったり、支給停止になる可能性があるのです。

この話題は所得制限の話から逸れますので、ここでは深くはふれませんが、精神障害などの更新の際には気をつけたいところではあります。

 

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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障害年金と老齢年金は同時にもらえるのですか【年金の常識10】

障害年金と老齢年金の併給の可否を社会保険労務士が解説

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社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第10回目の質問は、障害年金と老齢年金の併給(同時にもらえるのか)についてのものです。

この質問は、今までに何回か聞かれたことのある質問です。

たしかに、障害年金をもらっている人にとっては、自分が65歳になったとき、老齢年金が追加でもらえるのかどうかは、とても気になる問題だと思います。

今回は障害年金と老齢年金の併給の可否についてお話しましょう。
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質問「障害年金をもらっている人が65歳になったら、同時に老齢年金ももらえるようになるのですか?」

回答:年金は1人1年金の原則があるので、障害年金か老齢年金かを選択することになります。ただし、障害基礎年金と老齢厚生年金の組合わせは併給(同時にもらうこと)ができます。

 

この話は意外とわかりにくいので、事例を設定してご説明します。

図1をご覧ください。

Aさん、Bさん、Cさんは、図1のように、20歳から国民年金に加入し、その後就職して厚生年金にも加入していた(60歳で退職)とします。

そして、AさんとBさんは、60歳になるまでに2級相当の障害を負ったとしましょう。

ただし、Aさんの初診日は①、Bさんの初診日は②とします。

また、Cさんは②を初診日として3級相当の障害を負ったとします。

 

どのような障害年金をもらえるのかは初診日にどの年金に加入していたかによって変わりますので、Aさんたちの65歳になるまでの間の障害年金は次のようになります。

  • Aさんは①の時点では国民年金にしか加入していないので、障害「基礎」年金だけがもらえます。
  • Bさんは②の時点で国民年金と厚生年金に加入しているので、障害「基礎」年金だけでなく障害「厚生」年金がもらえます。
  • Cさんは②の時点で国民年金と厚生年金に加入しているのですが、障害「基礎」年金には3級がない(=3級では障害基礎年金はもらえない)ので、障害「厚生」年金だけがもらえます。

 

このような状況で障害年金を受給していたAさんたちが、65歳になったとします。

Aさんたちが65歳になったとき、Aさんたちには老齢「基礎」年金と老齢「厚生」年金の受給権が発生します。

では、全員が現在もらっている障害年金に加えて、新たに老齢年金ももらえるのしょうか。

答えはノーです。

年金には1人1年金の原則というのがあって、原則として種類の違う年金を同時にもらうことはできないのです。

つまり、Aさんたちの場合には、現在もらっている障害年金か、新たに発生した老齢年金かを選択することになります。

そうすると、Aさんたちの選択肢は次のようなものになるでしょう。

  • Aさんの場合には、障害基礎年金だけよりも老齢基礎年金+老齢厚生年金の方が受給額が多いと思われます(ただし、後述の例外があるので、後者を選択するとは必ずしもいえません)。
  • Bさんの場合には、障害基礎年金+障害厚生年と、老齢基礎年金+老齢厚生年金の受給額を比べてみることになりますが、障害年金の方が非課税であるというメリットもありますので、そのあたりを総合的に考慮することになるでしょう。
  • Cさんの場合には、障害厚生年金だけよりも老齢基礎年金+老齢厚生年金の方が受給額が多いと思われますので、後者を選択することが多いと思われます。

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ただし、例外もあります。

異なる種類の年金を組合せて併給することが可能になる場合があります。

この場合の組合せは、2パターン考えられます。

まず、Aさんの場合、障害基礎年金をもらいつつ、老齢厚生年金をもらえれば、非課税のメリットを活かすことができます(また、仮にAさんが障害基礎年金が1級だった場合には、障害基礎年金は2級の場合の1.25倍ですので、障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせが受給額が一番多くなるでしょう)。

また、Cさんの場合にも、老齢基礎年金をもらいつつ、障害厚生年金がもらえれば、非課税のメリットを活かすことができます。

つまり、Aさんのように障害基礎年金+老齢厚生年金と、Cさんのように老齢基礎年金+障害厚生年金という2つの組合わせが考えられるということです。

しかし、例外として認められるのは、Aさんのような障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせだけで、Cさんのような老齢基礎年金+障害厚生年金の組合わせは認められません。

つまりAさんは、障害基礎年金+老齢厚生年金か老齢基礎年金+老齢厚生年金かの選択となるので、この場合には前者を選択することが多いのではないかと思われます(また、障害基礎年金だけをもらいつつ、老齢厚生年金を繰り下げするという選択もありえます)。

なお、これはBさんにも当てはまります(2級の場合にはあまり問題にはならないのですが、Bさんが1級の場合、障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせの受給額が一番多くなることも考えられます。Aさんと異なるのは、障害厚生年金をもらえる人は老齢厚生年金の繰り下げはできないという点です)。

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以上をまとめると

  • 1人1年金の原則により、同じ種類の年金をもらうことになるが、例外として障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせは併給ができる(図2)

  • 老齢年金+障害年金を同時に合算してもらえることはないし、老齢基礎年金+障害厚生年金の組合わせも認められない(図3)

ということです。

いずれのケースにおいても、65歳になって老齢年金の受給権が発生した際には、それぞれの組合わせでの受給額を確認のうえ、さらに障害年金の非課税のメリットを活かせる方法を検討されることをお勧めいたします。

 

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を読んで、障害年金を申請してみようと思われたひともいるのではないでしょうか。

社会保険労務士の筆者がいうのも少しへんですが、筆者は障害年金は自分で申請できると思っています。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

よろしくお願いいたします。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

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障害年金がもらえなくなる場合を社会保険労務士が解説

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第9回目の質問は、障害年金の終期(いつまでもらえるのか)についてのものです。

この質問は、よく聞かれる質問のひとつです。

たしかに、老齢年金と異なり、障害年金はいつまでもらえるのかイメージがしにくいと思います。

失権事由に該当する場合だけなく、支給停止も含めてお話しようと思います。
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質問「現在、障害年金を受給しているのですが、障害年金は何歳までもらえるのですか?」

回答:障害年金の受給期間に年齢制限はありません。ただし、失権事由に該当するか支給停止になれば、障害年金はもらえなくなります。

 

障害年金には、何歳になるまでもらえるなどの年齢による制限はありません。

障害年金の失権(受給権の消滅)については、法律上、①死亡した場合、②3級に該当しない者が65歳になった場合(該当しなくなってから3年経過が必要)、③3級に該当しなくなって3年が経過した場合(65歳以上である必要)が規定されていますし、それ以外にも④併合認定によって新たな障害年金が受給できる場合には従前の受給権は消滅します。

これらのうち、3級に該当しなくなった場合を定める②と③についてはそれほどケースは多くはないですし(②と③は老齢年金がもらえる可能性が高く、経済的にも問題にはなりにくいのです)、④については併合後の新しい障害年金が受給できるので、実質的には①の死亡の場合以外にはそうそう問題になるケースは少ないと思われます。

その意味では、障害年金は終身年金(死亡するまでもらえる年金)といっていいでしょう。

 

しかし実際には、死亡するまでの期間に障害年金がもらえなくなる場合があります。

それが「支給停止」です。

前述の「失権」は受給権自体が消滅することですが、この「支給停止」は受給権は消滅せず何らかの事情によって支給が止まっている状態です(支給停止事由がなくなれば再開されます)。

このように「失権」と「支給停止」は厳密には内容は違うのですが、障害年金がもらえないという意味では同じことです。

では、どのような場合に支給停止になるのでしょうか。

主な支給停止の事由は、障害の程度が軽減して、障害「基礎」年金(国民年金)の場合には2級に、障害「厚生」年金の場合には3級に該当しなくなったと認定されることです。

つまり、障害の程度が軽くなったと認定されれば、支給停止になるということです。

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この点ついては、一般的に障害の程度が軽くなったことを自ら申告する人は多くありません。

そこで、障害年金には更新の制度が設けてあります。

障害年金の受給者は、一定の時期(障害のケースにより1~5年)に「障害状態確認書(診断書)」を日本年金機構に提出して、再認定を受けることになります。

ただし、症状が固定している場合には更新が不要なこともあり、その場合には「障害状態確認書(診断書)」を提出する必要はありません。

この更新の要否の違いで、更新が必要なケースを「有期認定」、更新が不要なケースを「永久認定」と呼ぶこともあります。

このように有期認定の更新の際に、障害の程度が軽減したと認定されて支給停止となり、障害年金がもらえなくなるケースがあるのです(逆に、障害の程度が悪化したと認定されれば、職権で障害年金の等級が上がり、年金額が増えるケースもあります)。

なお、このような支給停止の場合には、障害年金の受給権が失権したわけではないので、その後障害の程度が悪化すれば、「支給停止事由消滅届」を提出し、支給停止を解除することになります(支給停止が解除されても、それ以降の年金がもらえるだけで、支給停止時に遡って年金がもらえるわけではありません)。

この他、障害年金の支給停止事由には、老齢年金がもらえるようになったので、老齢年金を選択するような場合などもあります。
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以上の要点をまとめると、

  • 障害年金には年齢による受給期間は定められていない
  • 障害年金が「有期認定」の場合、更新の際に障害の程度が軽減したと認定されれば、支給停止になり、障害年金はもらえなくなる可能性がある

ということです。

更新の際に「障害状態確認書(診断書)」を提出する場合には、内容をしっかりチェックして(場合によっては医師に確認するなど)、十分に注意を払うことをお勧めします(個人的な感想ですが、この「障害状態確認書(診断書)」を内容すら確認することなく、安易に提出して後で慌てるというケースも散見されますので)。

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を読まれたひとのなかには、まだ障害年金を受給していないひともいると思います。

もしかしたら、これから障害年金を申請してみようと思われたひともいるかもしれません。

社会保険労務士の筆者がいうのも少しへんですが、筆者は障害年金は自分で申請できると思っています。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

よろしくお願いいたします。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

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障害厚生年金のここがありがたい!

社会保険労務士が紹介する障害厚生年金のありがたい5つのポイント

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。

今回は「障害厚生年金のここがありがたい!」というテーマで、障害厚生年金のありがたいポイントを5つご紹介したいと思います。

障害年金は、障害基礎年金(国民年金)と障害厚生年金に大きく分かれますが、弁護士の先生方や法律事務職員のみなさまとお話していると、意外とこの2つの違いを意識されていない場合があります。

障害の程度を確認した際に「厚生年金加入期間中だったらよかったのですけどね・・・」などと申し上げても、ピンとこない人もいらっしゃいます。

障害厚生年金のポイントをご紹介しながら、できるだけ障害基礎年金との異同もご説明できればと思っていますので、ご参考にしていただければ嬉しいです。

※年金額について令和7年(2025年)度のものに書き換えました(2025.6.20)

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障害厚生年金が支給されるのはどんな人?

障害厚生年金のポイントを知る前に、まず障害厚生年金はどのような人に支給されるのかを確認しておきましょう。

それは、初診日が厚生年金に加入している間にあるかどうかで判断されます。

初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。

発症した日を基準にするのではなく、初診日を基準にするという点は注意が必要です(知的障害のように生まれながらの障害の場合には出生日を初診日として取り扱う場合もありますが、原則として初めて診療を受けた日が初診日となります)。

たとえば、厚生年金に加入している人が、会社に勤めている間は何となく体調が悪いと思いつつ、忙しくて病院に行けなかったような場合で、退職後に初めて病院に行って診療を受けたという場合には、初診日が厚生年金に加入している間にないことになり、障害厚生年金の対象にならないケースも考えられます(このような場合でもすぐに諦めるのではなく、厚生年金に加入している間に何とか初診日として認めてもらえる日がないか探すことをお勧めします)。

この他にもいわゆる保険料納付要件も必要となりますが、これは障害厚生年金だけでなく障害基礎年金にも共通しています。

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ありがたいポイント1 障害厚生年金には3級・障害手当金の制度がある

障害厚生年金最大の特徴は、3級と障害手当金の制度があることです。

障害厚生年金は、障害の重さによって1~3級と障害手当金に区分されています(重い方が1級)。

これに対して、障害基礎年金(国民年金)は1級と2級しかありません。

つまり、障害厚生年金の1級・2級に該当した場合には、併せて障害基礎年金の1級・2級が支給されるのですが、障害厚生年金の3級や障害手当金に該当した場合には、障害厚生年金(3級・障害手当金)だけが支給されるということです。

これは裏を返せば、障害基礎年金しか該当しない人(初診日が厚生年金の加入期間にない人)が3級や障害手当金相当の障害を負った場合には、障害年金はまったくもえらえないということを意味します。

この違いは大きいです。

たとえば、交通事故などで下肢の3大関節の1つに人工関節をそう入置換することになったような場合であれば、障害年金の等級は3級に該当するのが原則です。

そうすると、被害者が障害厚生年金に該当する人(初診日が厚生年金の加入期間にある人)であれば、3級が認定されて障害厚生年金が支給される可能性が高いのですが、障害基礎年金しか該当しない人の場合(初診日が厚生年金の加入期間にない人)には、3級では障害基礎年金が支給されないので、より重い2級以上に該当するかどうかが問題になってきます(2級以上に該当しなければ障害年金はまったくもらえないということです)。

なお、人工関節=3級というイメージが強いですが、機能障害の状態などによっては2級以上に認定される場合もありますので、諦めずにしっかりと確認されることをお勧めします。

 

ありがたいポイント2 障害厚生年金は初診日が65歳以上であっても可能性あり

障害厚生年金は、初診日が厚生年金に加入している間にあるかどうかで判断すると先ほど述べましたが、厚生年金は原則70歳まで加入できますので、その期間内に初診日があれば障害厚生年金を受給できる可能性があるということです。

これに対して、障害基礎年金(国民年金)の場合には、原則として、少なくとも65歳までに初診日がなければいけません(65歳以上でも国民年金に任意加入している場合や2号被保険者になっている場合には例外的に障害基礎年金の対象になる場合もありますが、このようなケースでは65歳以上の時点で老齢年金の受給期間を充たさないことが前提ですので、現実問題としてはこのような場合に障害年金の保険料納付要件をクリアできるのかはかなり厳しいところです)。

つまり、障害年金がもらえる可能性のある年齢が障害厚生年金の方が有利になっているということです。

もっとも、65歳以上の厚生年金加入期間内の初診日の場合、老齢年金の受給資格を有している人については障害基礎年金の支給はありません(つまり、この場合、1級や2級に該当しても、障害基礎年金は支給されず、障害厚生年金だけが支給されるということです)。

また、年金には1人1年金の原則がありますので、老齢基礎年金と障害厚生年金は併給できません(これに対して、例外的に障害基礎年金と老齢厚生年金は併給できます)。

ですので、このような場合には老齢基礎年金や老齢厚生年金の額と障害厚生年金の額を比べてみることになるでしょう(また、受給額だけでなく、老齢年金は課税対象ですが、障害年金は非課税なので、この点も考慮することになります)。

 

ありがたいポイント3 障害厚生年金には配偶者の加給年金がある

次に障害厚生年金の支給額についてみていきましょう。

支給額に関する障害厚生年金のありがたいポイントとしては、配偶者の加給年金があります。

障害厚生年金の支給額を簡単に説明すると、

【1級】(報酬比例の年金額) × 1.25 + (配偶者の加給年金額)

【2級】(報酬比例の年金額) + (配偶者の加給年金額)

【3級】(報酬比例の年金額)

のようになります。

このように、1級と2級には配偶者の加給年金が認められています(残念ながら3級にはありません)。

この配偶者の加給年金は、障害年金の受給者に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されるものです(その配偶者が障害年金を受給している場合など一定の場合には支給停止になります。令和4年4月以降に支給停止になる条件が改正されていますので注意が必要です(経過措置あり))。

配偶者の加給年金の額は令和7年(2025年)度で年額23万9,300円です。

これに対して、障害基礎年金(国民年金)の場合には子の加算が認められています。

ところで、この配偶者の加給年金に関して、「自分は独身だからあまり関係ない」と思われた人もいるかもしれません。

しかし、この配偶者の加給年金は、受給権取得時に対象となる配偶者がいる場合だけでなく、受給権取得後に婚姻して、新たに対象となる配偶者が生じた場合でも、手続きをすればもらえるようになります。

そのような場合には、手続き忘れのないようにご注意ください。

 

ありがたいポイント4 障害厚生年金には300月みなし制度がある

支給額に関する障害厚生年金のありがたいポンイントはまだあります。

それは300月みなし制度です。

前述のように、障害厚生年金の受給額は「報酬比例の年金額」が基本です(1級の場合には報酬比例の年金額は1.25倍で計算されます)。

この「報酬比例の年金額」の計算は少し複雑なので省略しますが、年金額計算の基礎とされる被保険者期間が長ければ長いほど年金の金額は多くなるのが原則です(障害認定日(原則として初診日から1年6月経過日)の属する月後の被保険者期間は年金額計算の基礎とはされません)。

逆にいえば、障害認定日の属する月までの被保険者期間が短い人の場合、それほどの金額にはならないということです。

そこで、この300月みなしが効いてきます。

これは、被保険者期間が300月未満の場合は、300月とみなして計算する制度です。

300月=25年です。

極端な例でいえば、仮に1ヶ月しか働いていなくても、その間に初診日があれば、25年間働いたものとみなして障害厚生年金の「報酬比例の年金額」を計算するということです(この場合にはもらえる金額は300倍になるということです)。

なお、障害手当金の場合には「報酬比例の年金額」の2年分が一時金として支給されます(一時金というのは、定期的・継続的にもらえる年金とは異なり、1度しかもらえないという意味です。簡単に言えば、一括払いということです)。

これに対して、障害基礎年金(国民年金)の場合には、被保険者期間に関係なく、一律の定額制(生まれた生年月日によって多少の差があります)です。

参考までにあげると、令和7年(2025年)度現在の障害基礎年金の額は、年額で1級103万9,625円(昭和31年4月2日以後生まれの方)/103万6,625円(昭和31年4月1日以前生まれの方)、2級83万1,700円(昭和31年4月2日以後生まれの方)/82万9,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方)です(1級2級ともに対象となる子がいる場合には子の加算もあります)。

 

ありがたいポイント5 障害厚生年金には最低保障額制度がある

支給額に関する障害厚生年金のありがたいポンイントはさらにあります。

それは最低保障額制度です。

この最低保障額制度は障害厚生年金の受給権者が障害基礎年金(1級・2級)をもらえない場合(主に障害厚生年金3級や障害手当金の場合)に認められています。

その最低保障額は、障害基礎年金2級の3/4に相当する額とされ、令和7年(2025年)度は62万3,800 円(昭和31年4月2日以後生まれの方)/62万2,000 円(昭和31年4月1日以前生まれの方)です(障害手当金の場合の最低保障額はそれぞれの2倍の124万7,600円/124万4,000円です)。

一般的に、若いころの給与や賞与は安く抑えられていることが多いので、300月みなしで計算したとしても、障害厚生年金の額が障害基礎年金2級の額の3/4にすら満たない場合もあります(若い人だけに限りませんが)。

障害基礎年金がもらえる1級や2級の人であればまだいいのですが(令和7年(2025年)度現在の障害基礎年金の額は、年額で1級103万9,625円(昭和31年4月2日以後生まれの方)/103万6,625円(昭和31年4月1日以前生まれの方)、2級83万1,700円(昭和31年4月2日以後生まれの方)/82万9,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方))、そうでない人であれば障害厚生年金だけではもらえる金額が少なすぎるということもありえます。

そこで、障害基礎年金をもらえない人(主に障害厚生年金3級や障害手当金の人)に関しては、最低保障額を設けて救済をしているというわけです。

 

さいごに

以上「障害厚生年金のここがありがたい!」というテーマで、障害厚生年金のありがたいポイントを5つご紹介いたしました。

この他にも、障害厚生年金3級の場合には、精神障害などの場合に就労していても比較的認められやすい傾向もあり、これもありがたいポイントの1つです。

繰り返しになりますが、障害厚生年金がもらえるかどうかは、初診日が厚生年金加入期間内にあるかどうかで判断されます。

ですので、会社の健康診断で引っかかった場合や、心や体に不調を感じた場合などには、できるだけ速やかに医療機関を受診されることをお勧めします(受診時には確定的な診断が出ていなくても、後になってその日が初診日と認められることもあります)。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事がみなさまのお役に立てれば幸いです。

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「第8回法律事務職員勉強会」開催のお知らせ

第8回法律事務職員勉強会のご案内

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

今回は、勉強会のお知らせです。

筆者は、オフィス北浦代表者として、偶数月に勉強会を開催しています。

その勉強会ですが、

日時:2018年4月13日(金) 18時00分~19時30分

場所:山口県萩市内 ※場所の詳細はご参加者に追ってご連絡いたします

参加料:無料

のとおり行います。

今回からは、この勉強会を「法律事務職員勉強会」として、法律事務職員さん向けに実務で役立つ内容に特化していこうと思っています(弁護士の法律事務所の職員さんに限らず、司法書士や行政書士の事務所の職員さんも歓迎します)。

今回のテーマは「障害年金の精神障害等級判定ガイドラインを読む」です。

平成28年9月から実施されている「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、精神障害及び知的障害の認定が障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするために定められたものです。

法律事務職員の皆さまにとっても、精神障害者などの成年後見業務において、障害年金の請求に関わることがあると思いますが、その際に等級認定の仕組み(診断書のどの欄を確認すべきかなど)を知っておくことは有用なことではないでしょうか。

この機会に一度ガイドラインをちゃんと読んでみませんか?

勉強会の参加費用は無料です。

なお、勉強会の後に飲み会を開きますので、よろしければ、こちらにもご参加いただければと思います(飲み会は、会費として3000円をいただきます)。

興味のある方やご参加希望の方は、

info@officekitaura.jp

まで、メールでお問い合わせくださいませ。

お申し込みの締め切りは3月30日(金)までといたします。

よろしくお願いいたします。