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障害年金をもらいはじめたら確定申告をしなければならないの?【年金の常識15】

障害年金に個人所得税の確定申告が必要なのかを社会保険労務士が解説

オフィス北浦のブログサイトにようこそおいでくださいました。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第15回目の質問は、障害年金を受給した場合に個人の所得税の確定申告が必要なのかという問題です。

障害年金の受給を検討している人や、すでに受給をしている人のなかには、

  • 障害年金をもらったら確定申告をしなければいけないのか
  • 確定申告をしなかったら自治体から所得未申告の確認の手紙がきたけど、本当は確定申告をしなければいけなかったのではないか

このような疑問をお持ちの人がいらっしゃいます。

今回はそのような疑問にご回答します。

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質問:障害年金をもらいはじめたら確定申告をしなければならないのですか

回答

障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金、障害手当金)は非課税所得です。

障害年金以外に所得がないのであれば、確定申告は必要ありません。

ただし、国民健康保険等の保険料(均等割)の減額が必要な場合には、自治体に対して所得のないことを申告しなければいけません(自治体から確認のための文書が届くこともあります)。

 

解説

押さえておきたいポイントは2つあります。

  • 障害年金は非課税所得なので、確定申告は必要ない
  • 国民健康保険料等の均等割の減額を受けるには、自治体に対して所得がないことの申告が必要

順番にご説明していきます。

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  • 障害年金は非課税所得なので、確定申告は必要ない

障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金、障害手当金)は非課税所得です(国民年金法25条。厚生年金保険法41条2項)。

そのため、障害年金以外に所得がないような場合には確定申告は必要ありません。

これは障害年金の受給額の多い少ないには関係ありません。

また、障害年金は非課税所得ですので、所得税だけでなく住民税(所得割)も非課税です。

 

  • 国民健康保険料等の均等割の減額を受けるには、自治体に対して所得がないことの申告が必要

障害年金の確定申告は不要ですが、国民健康保険等の均等割の減額を受けるためには、各自治体に別途所得のないことの申告(住民税の申告)が必要になります。

自治体の把握した世帯の所得の有無や額などの情報を基準にして、一定の要件をみたせば国民健康保険料等の均等割が減額されます。

しかし、障害年金は非課税所得なので、ある人が障害年金を受給しているのかという情報は各自治体では把握できません(これに対して、給与や老齢年金のように所得税を源泉徴収されている人や事業所得などを自ら確定申告をしている人の情報は各自治体が把握しています)。

障害年金だけの所得の人が何もしなければ、所得未申告として扱われるということです。

所得未申告のままでは国民健康保険料等の均等割の減額を受けることができません。

そのため、これらの減額が必要な場合には、住民税に関して所得(所得がないこと)の申告が必要になります(保険料の算定のための申告の場合もあります)。

この申告の期限は確定申告と同じですが、それを提出していない場合には、5月ころに自治体から所得未申告の確認の書面が届くこともあります。

必要に応じて対応してください。

なお、自治体に所得未申告のままでは国民健康保険料等の均等割の減額は受けられませんが、所得のない人が所得の申告をしなかったからといって、それが違法ということではありません。

 

さいごに

今回は、障害年金を受給した場合に個人の所得税の確定申告が必要なのかという問題について、

  • 障害年金は非課税所得なので、確定申告は必要ない
  • 国民健康保険料等の減額を受けるには所得がないことの申告が必要

という2つのポイントを解説してきました。

障害年金は非課税所得ですが、何もしないでいれば思わぬ不利益をうけることもあります。

ここではふれませんでしたが、国民年金の第1号被保険者になっている場合には、保険料の免除の手続きというものもあります。

情報をしっかり収集して、ご自分に必要な手続きを行ってください。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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後の記事:障害年金を受給したら、健康保険はどうなるのか?

未納保険料を後から払えば障害年金はもらえるの?【年金の常識14】

国民年金未納保険料と障害年金保険料納付要件の関係を社会保険労務士が解説

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社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第14回目の質問は、障害年金を受給するためには、いつまでにどのくらいの保険料を納めていないといけないのかという問題です。

国民年金の第1号被保険者(自営業者やフリーランスなどの人)が国民年金保険料を納めるのは法律上の義務ですが、免除や猶予の手続きをとらずに、保険料を納めないままになっている人がいるのも現実です。

そういった保険料が(一部)未納になっている人が、病気やケガが原因で何らかの障害が残ったときに、障害年金を請求する段階になって、あわてて保険料を納めようとするケースがあります。

未納保険料を納めること自体は義務の履行として当然のことではありますが、はたして、未納保険料を納めれば障害年金はもらえるようになるのでしょうか。

今回は、そのようなお話です。

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質問「今は元気なので、国民年金(1号被保険者)の保険料を納めていません。病気がみつかった後に未納保険料を納めれば、障害基礎年金をもらうのに問題はないですか?」

回答:初診日以後に納められた未納保険料は、障害(基礎)年金がもらえるかどうか(保険料納付要件)の判定にあたっては、「未納」扱いになります

したがって、この場合には、未納期間があることを前提にして、障害(基礎)年金がもらえるかどうかを判定することになります。
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【解説】

障害年金をもらうためには、本日(2020年4月2日)現在、次の2つの「保険料納付要件」のうち、どちらか1つをクリアしなければなりません(1991年5月1日以後に初診日がある場合)。

  • 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること(これを「2/3要件」といいます)
  • 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(これを「直近1年要件」といいます)

この2つの保険料納付要件は、「2/3要件」が原則で、「直近1年要件」が特例という関係なのですが、実務上は、まず「直近1年要件」を検討して、それがダメな場合に「2/3要件」を検討するという順番で行っています。

そこで問題となるのは、いつの時点で「2/3要件」や「直近1年要件」をクリアしていないといけないのかという点です。

それは、

初診日の前日

です。

 

たとえば、2017年1月に20歳となり国民年金の被保険者(1号)になった人の初診日が2020年2月10日だったとしましょう。

その場合、初診日の前日である2020年2月9日の時点で、「2/3要件」や「直近1年要件」をクリアしているかどうかを判定することになります。

(図1)をご覧ください。

一度も保険料を払ったことがないケースです。

この場合、初診日の前日(2020年2月9日)において、その前々月2019年12月以前1年間(2019年1月~12月)の期間に未納があり(全部未納ですね)、「直近1年要件」(青の矢印部分)をクリアできません。

また、20歳になった月(2017年1月)以降2019年12月までの期間に2/3以上の納付済や免除の期間がないことも明白ですので、「2/3要件」(オレンジの矢印の部分)もクリアできません。

したがって、2020年2月10日を初診日とする障害年金の請求はできないことになります(保険料を納めていないので、当然といえば当然ですが)。

そしてこの結論は、あわてて2月10日以後に2019年12月以前1年間(2019年1月~12月)の保険料を納めた場合でも、変わりません(図2)。

一見すると、「直近1年要件」(青の矢印部分)をクリアできているようにみえますが、これはあくまでも、2020年2月10日以後の納付状況であり、納付要件の判定基準日である2月9日現在の納付状況(図1)を変えることはできないのです。

これは、2020年2月10日以後に申請免除や猶予の制度を使っても同じことです(法定免除の場合には初診日以後の手続きでも認められます)。

「後出しジャンケン」は認められないのです。

なお、後で納めた2019年12月以前1年間(2019年1月~12月)の保険料は、将来の老齢基礎年金の受給額には反映されますので、その意味では無駄にはなりません。
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ところで、もしも保険料の納付状況を確認したところ、2020年2月9日現在で(図3)のような状況だった場合はどうでしょうか。

たとえば、自分の知らないところで、親が払ってくれていたようなケースです。

この場合であれば、2017年1月から2019年12月の36月のうち、24月が納付済となっていますので、ちょうど全体の2/3の期間の保険料を納めていることになります。

そうすると、「直近1年要件」(青の矢印部分)はクリアできませんが、「2/3要件」(オレンジの矢印の部分)はクリアできているので、「保険料納付要件」を充たすことができます。

 

なお、今回問題とした「保険料納付要件」は、初診日が20歳前(厚生年金の被保険者ではない期間)にある傷病については、問題とされません(=保険料を納めていなくても、障害基礎年金がもらえます)。

 

以上のように、保険料を「後で納めればいいや」といった気持ちで後回しにしていると、もらえるはずの障害年金がもらえなくなるといった、とてももったいないことになりかねません。

保険料が払えないときには、免除や猶予の制度をうまく利用して、もしものときに損をしないようにリスクマネジメントを行っていただきたいと思います。

障害年金の場合には、「保険料納付要件」の期間に免除などの期間があっても、障害年金の受給額が減額されることもありません(=満額もらえます)。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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給料もらうと障害年金は減らされるの?【年金の常識13】

障害年金と所得制限について社会保険労務士が解説

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第13回目の質問は、障害年金の受給者が給与所得などの所得がある場合に障害年金の受給額が減額されるのかという問題です。

障害年金に所得制限はあるのでしょうか。

これは何度か聞かれた質問なのですが、いくつかの似たような制度と混同してしまうところですので、一度まとめたおいた方がよいと思って、今回のテーマに選びました。

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質問「障害厚生年金と障害基礎年金の2級の受給者です。就職が決まったのですが、給料をもらい始めると、障害年金の受給額は減らされるのですか?」

回答:障害厚生年金(+障害基礎年金)の受給者の場合、給料などの収入や所得があっても、そのことだけで受給額が減らされることはありません。ただし、障害の原因になった傷病の種類によっては、就労していることで、等級が下がったり支給停止になる可能性はあります。

なお、国民年金の「20歳前傷病による障害基礎年金」の場合には、受給者に一定の所得があると、一部または全部が支給停止となります。

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【解説】

「仕事をしてると年金が減らされる」という話を聞いたことはないでしょうか?

この内容自体も不正確なのですが、この言葉が独り歩きをして、障害年金の場合にも、仕事をして一定の収入や所得があれば、障害年金の受給額が減額されると誤解されている人が意外といらっしゃいます。

結論からいえば、障害厚生年金(+障害基礎年金)の場合にはそのような制度はありません。

では、なぜこのような誤解が生じるのか。

筆者は何人かの人から同じような質問を受けたことがあるのですが、誤解が生じた理由をよくよく聞くと、次の3つの理由があるように思います。

それは、

  • 老齢厚生年金の「在職老齢年金」制度と混同している
  • 国民年金の「20歳前傷病による障害基礎年金」の所得制限と混同している
  • 生活保護の収入認定と混同している

の3つです。

 

まず、老齢厚生年金の「在職老齢年金」の制度ですが、受給している老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額が一定の金額を超えた場合に、その金額に応じて年金額が支給停止となる制度です。

在職老齢年金は、60歳台前半と65歳以後で計算方法が異なりますが、ここでは詳しくはふれないでおきます。

この在職老齢年金の制度こそが、「仕事をしてると年金が減らされる」という話の元ネタだと思われます。

いずれにしてもこれは、「老齢」厚生年金の制度であって、「障害」厚生年金の制度ではありません。

なお、国民年金の「老齢」基礎年金にも在職老齢年金の制度はありません。

 

次に、国民年金の「20歳前傷病による障害基礎年金」の所得制限ですが、これは、20歳前に初診日のある傷病が原因で障害を負って、障害基礎年金を受給している人に対するものです。

「20歳前傷病による障害基礎年金」の所得制限は、扶養親族の数にもよりますが、たとえば1人世帯(扶養親族なし)の場合、所得額が360万4000円を超えると年金額の2分の1が支給停止となり、462万1000円を超えると全額支給停止となります。

20歳前に初診日のある傷病では国民年金保険料を支払っていないので、このような所得制限が設けられているのです。

これに対して、20歳以後に初診日がある傷病の場合には、保険料を支払っていますので、所得制限はありません。

また、20歳前に初診日のある傷病であっても、保険料を支払っているのであれば、この所得制限は受けません。

20歳前に保険料を支払う場合というのは、20歳前に厚生年金の被保険者である場合です。

高校卒業後すぐに就職した場合のように、20歳前に厚生年金の被保険者になっていれば、20歳前の厚生年金の被保険者期間に初診日があっても、所得制限は受けません(=給料をもらっても障害年金は減らされません)。

 

最後は、生活保護の場合です。

生活保護の場合、給料のような収入は申告する必要があって、収入認定に応じて生活保護費が減額されることがあります。

生活保護は、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提となっていますので、給料が収入として認定されて、その分が減額されるのも納得できるところです。

しかし、障害年金は社会「保険」の給付です(保険料を払っていない「20歳前傷病の障害基礎年金」を除きます)。

障害年金はあくまでもご自身が納めた保険料が前提ですので(そのために「保険料納付要件」というものがあり、保険料を納めていない人は障害年金をもらえない場合があります)、その点において生活保護の制度とは異なっています。

なお、障害年金がもらえることで、生活保護費が減らされることはありますので、その点も混同しないようにしてください。
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筆者の経験上、これら3つの制度と混同して、「仕事をしてると障害年金が減らされる」と誤解している人がいらっしゃいました。

20歳前傷病による障害基礎年金の場合を除いて、障害厚生年金にも障害基礎年金にも所得制限はありませんので、誤解のないようにしたいところです。

 

なお、障害の種類によっては、給料の所得や収入額というよりも、「就労をしている」という事実が原因で、障害年金の受給額が減らされる(またはもらえなくなる)場合もありえます。

「就労をしている=障害の程度が軽くなった」と認定されてしまい、等級が下がったり、支給停止になる可能性があるのです。

この話題は所得制限の話から逸れますので、ここでは深くはふれませんが、精神障害などの更新の際には気をつけたいところではあります。

 

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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厚生年金に入っていれば障害厚生年金はもらえますか?【年金の常識12】

障害厚生年金の受給について社会保険労務士が解説

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社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第12回目の質問は、どのような場合に障害厚生年金がもらえるのかについてのものです。

障害厚生年金には障害基礎年金にはない3級があったり、最低保障額制度があったりと働く人たちにとってありがたい制度が満載されています(障害厚生年金の特徴については、こちらの記事をご参照ください)。

どのような場合に、障害厚生年金がもらえるのかは気になるところではないでしょうか?
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質問「会社員として厚生年金に入っています。先日、人工関節置換術を受けたのですが、障害厚生年金(3級)はもらえますか?」

回答:手術日に厚生年金に加入していても、必ずしも障害厚生年金の対象になるとは限りません。初診日が厚生年金の被保険者である期間(加入してる期間)であれば、障害厚生年金の対象になりえます。

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障害厚生年金がもらえるかどうかは初診日次第です。

初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日をいいます。

障害厚生年金をもらうためには、少なくとも、厚生年金に加入している間に初診日がなければならないのです(他にも、障害の程度の要件や保険料納付要件などがあります)。

一般的にいうと、病気やケガは、①発症・受傷→②医師の診療→③治療(手術など)といった流れになると思います。

これらの流れのうち、障害年金で大切なのは、②医師の診療を初めて受けた日である初診日なのです。

この初診日を基準に色々なことが決まっていきます(保険料納付要件や障害認定日などが初診日を基準に決まります)。

次の(図1)をごらんください。

このケースでは、最初は学生で国民年金(第1号)に加入し、その後就職して厚生年金に加入、そして結婚後被扶養配偶者として国民年金(第3号)となり、再就職して厚生年金に加入したという年金の加入歴です(未納期間はありません)。

図1にはありませんが、手術は④から▲請求までの間に行われたとお考えください。

そして、現在は▲請求のところというイメージです。

そうすると、手術も障害年金の裁定請求も厚生年金の加入期間中に行われているので、障害厚生年金がもらえそうに思えます。

しかし、前述のように、障害厚生年金がもらえるかどうかは初診日で判断します。

だとすると、この人の初診日が②や④にあればいいのですが、仮に①や③にあった場合には、厚生年金加入期間に初診日がないため、障害厚生年金の対象外になってしまうのが原則です。

そして、人工関節置換術については、障害の程度は3級とされることが多いので(2級以上もありえなくはないのですが・・・)、初診日が②や④にあれば障害厚生年金3級が望めますが、①や③では無年金になる可能性が高いのです(国民年金の障害基礎年金には1級と2級しかないので、3級では何ももらえないのです)。

もっとも、①や③を初診日とした場合、手術までにかなりの時間を要しているので、その場合には、①や③を初診日として本当にいいのかを争ってもよいかもしれません(個別具体的な事情によりますので、一概にはいえませんが)。

 

この「初診日を基準とする」という考え方は客観的なのですが、ときに一般の人の常識的な感覚とずれてしまうこともありえます。

たとえば、会社勤めの間に心身に不調を感じていたものの、忙しくて病院に行けなかった人が、会社を辞めて初めて病院に行って病気が見つかったようなケースでは、障害厚生年金がもらえない可能性が高いのです。

心身の不調を感じている人が会社をお辞めになろうと考えている場合には、厚生年金に加入している間に病院に行っておかれることをおすすめいたします。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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夫の厚生年金の扶養に入っていれば、妻も厚生年金がもらえるのですか【年金の常識11】

厚生年金の被扶養配偶者の年金関係について社会保険労務士が解説

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社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第11回目の質問は、厚生年金の被扶養配偶者の年金関係についてのものです。

夫の厚生年金の被扶養配偶者となっている妻(その逆に妻の厚生年金の被扶養配偶者となっている夫の場合もあります)のなかには、自分自身の年金関係がよくわからないという人がいらっしゃいます。

基本的なことですが、まさに「いまさら聞けない」質問かもしれません。
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質問「夫の厚生年金の扶養に入っていれば、将来、妻も厚生年金をもらえるようになるのですか?」

回答:厚生年金の被保険者である夫に扶養されている妻は、「国民年金」の第3号被保険者ですが、「厚生年金」の被保険者ではないので、その期間については厚生年金(老齢厚生年金など)はもらえません。

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「厚生年金の被保険者に扶養される配偶者(被扶養配偶者)は、国民年金の第3号被保険者となります。」

このような話を聞かれたことはないでしょうか。

これは、「国民年金の第3号被保険者であれば、国民年金の保険料を払う必要がない」というような話の際に出てくるものです。

ただ、この内容をよく読むと、前半(「厚生年金の被保険者に扶養される配偶者(被扶養配偶者)は、」の部分)は厚生年金の話で、後半(「国民年金の第3号被保険者となります。」の部分)は国民年金の話をしています。

これでは、厚生年金の話なのか国民年金の話なのかよくわからないままになってしまう可能性があります。

そのため、結局どっちの年金がもらえるのかわからなくなる人がいてもおかしくはありません。

結論をいえば、この話は「国民年金」の話をしています。

この話は、「被扶養配偶者(主婦の人など)は、国民年金の保険料を払わなくても、国民年金(老齢基礎年金など)はもらえます」と言っているのであり、「厚生年金(老齢厚生年金など)がもらえます」とは言っていないのです。

もちろん、ご自身で働いて厚生年金の被保険者であった期間がある人は、その期間については厚生年金の対象になりますが、被扶養配偶者である期間については国民年金だけということです。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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後の記事:厚生年金に入っていれば障害厚生年金はもらえますか?【年金の常識12】

 

障害年金と老齢年金は同時にもらえるのですか【年金の常識10】

障害年金と老齢年金の併給の可否を社会保険労務士が解説

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社会保険手続を中心に弁護士業務や成年後見業務をサポートしている社会保険労務士の徳本博方です。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、「いまさら聞けない 年金の常識」として、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していきます。

第10回目の質問は、障害年金と老齢年金の併給(同時にもらえるのか)についてのものです。

この質問は、今までに何回か聞かれたことのある質問です。

たしかに、障害年金をもらっている人にとっては、自分が65歳になったとき、老齢年金が追加でもらえるのかどうかは、とても気になる問題だと思います。

今回は障害年金と老齢年金の併給の可否についてお話しましょう。
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質問「障害年金をもらっている人が65歳になったら、同時に老齢年金ももらえるようになるのですか?」

回答:年金は1人1年金の原則があるので、障害年金か老齢年金かを選択することになります。ただし、障害基礎年金と老齢厚生年金の組合わせは併給(同時にもらうこと)ができます。

 

この話は意外とわかりにくいので、事例を設定してご説明します。

図1をご覧ください。

Aさん、Bさん、Cさんは、図1のように、20歳から国民年金に加入し、その後就職して厚生年金にも加入していた(60歳で退職)とします。

そして、AさんとBさんは、60歳になるまでに2級相当の障害を負ったとしましょう。

ただし、Aさんの初診日は①、Bさんの初診日は②とします。

また、Cさんは②を初診日として3級相当の障害を負ったとします。

 

どのような障害年金をもらえるのかは初診日にどの年金に加入していたかによって変わりますので、Aさんたちの65歳になるまでの間の障害年金は次のようになります。

  • Aさんは①の時点では国民年金にしか加入していないので、障害「基礎」年金だけがもらえます。
  • Bさんは②の時点で国民年金と厚生年金に加入しているので、障害「基礎」年金だけでなく障害「厚生」年金がもらえます。
  • Cさんは②の時点で国民年金と厚生年金に加入しているのですが、障害「基礎」年金には3級がない(=3級では障害基礎年金はもらえない)ので、障害「厚生」年金だけがもらえます。

 

このような状況で障害年金を受給していたAさんたちが、65歳になったとします。

Aさんたちが65歳になったとき、Aさんたちには老齢「基礎」年金と老齢「厚生」年金の受給権が発生します。

では、全員が現在もらっている障害年金に加えて、新たに老齢年金ももらえるのしょうか。

答えはノーです。

年金には1人1年金の原則というのがあって、原則として種類の違う年金を同時にもらうことはできないのです。

つまり、Aさんたちの場合には、現在もらっている障害年金か、新たに発生した老齢年金かを選択することになります。

そうすると、Aさんたちの選択肢は次のようなものになるでしょう。

  • Aさんの場合には、障害基礎年金だけよりも老齢基礎年金+老齢厚生年金の方が受給額が多いと思われます(ただし、後述の例外があるので、後者を選択するとは必ずしもいえません)。
  • Bさんの場合には、障害基礎年金+障害厚生年と、老齢基礎年金+老齢厚生年金の受給額を比べてみることになりますが、障害年金の方が非課税であるというメリットもありますので、そのあたりを総合的に考慮することになるでしょう。
  • Cさんの場合には、障害厚生年金だけよりも老齢基礎年金+老齢厚生年金の方が受給額が多いと思われますので、後者を選択することが多いと思われます。

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ただし、例外もあります。

異なる種類の年金を組合せて併給することが可能になる場合があります。

この場合の組合せは、2パターン考えられます。

まず、Aさんの場合、障害基礎年金をもらいつつ、老齢厚生年金をもらえれば、非課税のメリットを活かすことができます(また、仮にAさんが障害基礎年金が1級だった場合には、障害基礎年金は2級の場合の1.25倍ですので、障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせが受給額が一番多くなるでしょう)。

また、Cさんの場合にも、老齢基礎年金をもらいつつ、障害厚生年金がもらえれば、非課税のメリットを活かすことができます。

つまり、Aさんのように障害基礎年金+老齢厚生年金と、Cさんのように老齢基礎年金+障害厚生年金という2つの組合わせが考えられるということです。

しかし、例外として認められるのは、Aさんのような障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせだけで、Cさんのような老齢基礎年金+障害厚生年金の組合わせは認められません。

つまりAさんは、障害基礎年金+老齢厚生年金か老齢基礎年金+老齢厚生年金かの選択となるので、この場合には前者を選択することが多いのではないかと思われます(また、障害基礎年金だけをもらいつつ、老齢厚生年金を繰り下げするという選択もありえます)。

なお、これはBさんにも当てはまります(2級の場合にはあまり問題にはならないのですが、Bさんが1級の場合、障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせの受給額が一番多くなることも考えられます。Aさんと異なるのは、障害厚生年金をもらえる人は老齢厚生年金の繰り下げはできないという点です)。

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以上をまとめると

  • 1人1年金の原則により、同じ種類の年金をもらうことになるが、例外として障害基礎年金+老齢厚生年金の組合わせは併給ができる(図2)

  • 老齢年金+障害年金を同時に合算してもらえることはないし、老齢基礎年金+障害厚生年金の組合わせも認められない(図3)

ということです。

いずれのケースにおいても、65歳になって老齢年金の受給権が発生した際には、それぞれの組合わせでの受給額を確認のうえ、さらに障害年金の非課税のメリットを活かせる方法を検討されることをお勧めいたします。

 

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を読んで、障害年金を申請してみようと思われたひともいるのではないでしょうか。

社会保険労務士の筆者がいうのも少しへんですが、筆者は障害年金は自分で申請できると思っています。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

よろしくお願いいたします。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

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前後の記事

前の記事:障害年金は何歳までもらえるのですか【年金の常識9】

後の記事:住民税非課税世帯から課税世帯になる場合の注意点(その1)

障害年金は何歳までもらえるのですか【年金の常識9】

障害年金がもらえなくなる場合を社会保険労務士が解説

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第9回目の質問は、障害年金の終期(いつまでもらえるのか)についてのものです。

この質問は、よく聞かれる質問のひとつです。

たしかに、老齢年金と異なり、障害年金はいつまでもらえるのかイメージがしにくいと思います。

失権事由に該当する場合だけなく、支給停止も含めてお話しようと思います。
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質問「現在、障害年金を受給しているのですが、障害年金は何歳までもらえるのですか?」

回答:障害年金の受給期間に年齢制限はありません。ただし、失権事由に該当するか支給停止になれば、障害年金はもらえなくなります。

 

障害年金には、何歳になるまでもらえるなどの年齢による制限はありません。

障害年金の失権(受給権の消滅)については、法律上、①死亡した場合、②3級に該当しない者が65歳になった場合(該当しなくなってから3年経過が必要)、③3級に該当しなくなって3年が経過した場合(65歳以上である必要)が規定されていますし、それ以外にも④併合認定によって新たな障害年金が受給できる場合には従前の受給権は消滅します。

これらのうち、3級に該当しなくなった場合を定める②と③についてはそれほどケースは多くはないですし(②と③は老齢年金がもらえる可能性が高く、経済的にも問題にはなりにくいのです)、④については併合後の新しい障害年金が受給できるので、実質的には①の死亡の場合以外にはそうそう問題になるケースは少ないと思われます。

その意味では、障害年金は終身年金(死亡するまでもらえる年金)といっていいでしょう。

 

しかし実際には、死亡するまでの期間に障害年金がもらえなくなる場合があります。

それが「支給停止」です。

前述の「失権」は受給権自体が消滅することですが、この「支給停止」は受給権は消滅せず何らかの事情によって支給が止まっている状態です(支給停止事由がなくなれば再開されます)。

このように「失権」と「支給停止」は厳密には内容は違うのですが、障害年金がもらえないという意味では同じことです。

では、どのような場合に支給停止になるのでしょうか。

主な支給停止の事由は、障害の程度が軽減して、障害「基礎」年金(国民年金)の場合には2級に、障害「厚生」年金の場合には3級に該当しなくなったと認定されることです。

つまり、障害の程度が軽くなったと認定されれば、支給停止になるということです。

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この点ついては、一般的に障害の程度が軽くなったことを自ら申告する人は多くありません。

そこで、障害年金には更新の制度が設けてあります。

障害年金の受給者は、一定の時期(障害のケースにより1~5年)に「障害状態確認書(診断書)」を日本年金機構に提出して、再認定を受けることになります。

ただし、症状が固定している場合には更新が不要なこともあり、その場合には「障害状態確認書(診断書)」を提出する必要はありません。

この更新の要否の違いで、更新が必要なケースを「有期認定」、更新が不要なケースを「永久認定」と呼ぶこともあります。

このように有期認定の更新の際に、障害の程度が軽減したと認定されて支給停止となり、障害年金がもらえなくなるケースがあるのです(逆に、障害の程度が悪化したと認定されれば、職権で障害年金の等級が上がり、年金額が増えるケースもあります)。

なお、このような支給停止の場合には、障害年金の受給権が失権したわけではないので、その後障害の程度が悪化すれば、「支給停止事由消滅届」を提出し、支給停止を解除することになります(支給停止が解除されても、それ以降の年金がもらえるだけで、支給停止時に遡って年金がもらえるわけではありません)。

この他、障害年金の支給停止事由には、老齢年金がもらえるようになったので、老齢年金を選択するような場合などもあります。
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以上の要点をまとめると、

  • 障害年金には年齢による受給期間は定められていない
  • 障害年金が「有期認定」の場合、更新の際に障害の程度が軽減したと認定されれば、支給停止になり、障害年金はもらえなくなる可能性がある

ということです。

更新の際に「障害状態確認書(診断書)」を提出する場合には、内容をしっかりチェックして(場合によっては医師に確認するなど)、十分に注意を払うことをお勧めします(個人的な感想ですが、この「障害状態確認書(診断書)」を内容すら確認することなく、安易に提出して後で慌てるというケースも散見されますので)。

さいごに

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

この記事を読まれたひとのなかには、まだ障害年金を受給していないひともいると思います。

もしかしたら、これから障害年金を申請してみようと思われたひともいるかもしれません。

社会保険労務士の筆者がいうのも少しへんですが、筆者は障害年金は自分で申請できると思っています。

そのようなひとに向けた記事も書いていますので、こちらにご紹介しておきます。

あわせて読んでいただければと思います。

よろしくお願いいたします。

障害年金は自分で申請できる【そのシンプルな理由】

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前の記事:遺族年金をもらっているのに年金生活者支援給付金がもらえないのはなぜですか【年金の常識8】

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遺族年金をもらっているのに年金生活者支援給付金がもらえないのはなぜですか【年金の常識8】

遺族年金をもらっている人でも年金生活者支援給付金がもらえる人ともらえない人がいる理由を社会保険労務士が解説

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第8回目の質問は、年金生活者支援給付金についてのものです。

年金生活者支援給付金は正確には「年金」ではないのですが、タイムリーな話題なので、ここで取り上げようと思います。
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質問「遺族年金をもらっている人でも年金生活者支援給付金がもらえる人ともらえない人がいるのはどうしてですか?」

回答:遺族年金の種類が遺族基礎年金であれば年金生活者支援給付金の対象となりえますが、遺族厚生年金だけの場合には「遺族」年金生活者支援給付金の対象ではありません。つまり、同じ遺族年金でも遺族基礎年金をもらっている人と遺族厚生年金だけしかもらっていない人では「遺族」年金生活者支援給付金の対象となるかどうかが分かれるということです。

ただし、遺族厚生年金と併せて老齢(基礎)年金や障害基礎年金を受給している場合には、「老齢」や「障害」の給付金がもらえる場合があります。いずれの場合も一定の所得要件を充たす必要があります。

 

この質問は、複数の成年被後見人を担当している成年後見人さんからの質問でした。

質問者さんによれば、遺族年金をもらっているAさんとBさんのうち、年金額がBさんより多いAさんの方には年金生活者支援給付金の対象者として通知がきたけれども、Bさんにはきていないというのです。

AさんもBさんも独居の単一世帯で、年金以外の収入や所得はないとのことでした。

同じ遺族年金をもらっている人でも、年金生活者支援給付金がもらえる人とそうでない人がいるのが不思議だというお話です。

そこで、AさんとBさんの最新の年金額改定通知書をみせていただきました。

すると、AさんもBさんも「遺族基礎年金」は受給しておられず、「遺族厚生年金」を受給しておられました。

前述の回答に記載のとおり、遺族年金生活者支援給付金の対象者は、遺族基礎年金の受給者である必要があります。

ですので、AさんやBさんのように遺族厚生年金だけで遺族基礎年金を受給していない場合には、遺族年金生活者支援給付金の対象ではないのです。

 

そうすると、AさんもBさんも両方とも年金生活者支援給付金の対象ではないのではないか(なぜAさんだけがもらえるのか)との疑問が生じます。

そこで再度年金額改定通知書を確認したところ、Aさんは遺族厚生年金と併せて老齢(基礎)年金を受給されていたのですが、Bさんは(加入期間の問題なのかどうかわかりませんが)何らかの理由で老齢(基礎)年金を受給されていませんでした。

つまり、Aさんは老齢(基礎)年金の受給者でもあるので、「老齢」年金生活者支援給付金の対象になっているということです。

これに対して、Bさんは老齢(基礎)年金の受給者ではないので、「老齢」年金生活者支援給付金の対象にもなっていないということなのです。

たしかに、年金の支給額だけをみれば、Aさんは遺族厚生年金+老齢年金なので、遺族厚生年金だけのBさんよりも多いのですが、老齢(基礎)年金を受けているので老齢年金生活者支援給付金がもらえるというわけです。

ちなみに、老齢年金生活者支援給付金の収入・所得要件には遺族厚生年金の収入額はカウントされません。

Aさんの場合には年金以外の収入・所得はないため、老齢年金の収入額が要件を充たすと判断されたものと思われます。

 

以上をまとめると、

  • 遺族「基礎」年金を受給していない人は、遺族「厚生」年金を受給していたとしても、「遺族」年金生活者支援給付金はもらえない
  • 遺族「厚生」年金を受給している人が、「老齢」基礎年金や「障害」基礎年金を併せて受給していれば、「老齢」または「障害」年金生活者支援給付金をもらえる場合がある

ということです。

 

今回のケースは、一見すると、同じ遺族年金をもらっている人なのに、年金の受給額が多い人が年金生活者支援給付金がもらえて、年金の受給額が少ない人はもらえないという不思議な現象にも思えます。

これは制度上仕方のないこととはいえ、老齢基礎年金の無年金者が今回の給付金の対象にされていないことが、このような違いを生む原因と思われます。

今回の給付金のそもそもの趣旨が消費税率アップに伴う低所得者対策ということであれば、無年金者こそ救済の対象なのではないかとも思われるのですが、あくまで「年金生活者」という線引きで外さざるをえないということなのでしょう。

ただ、これは他の社会保険労務士の先生の受け売りなのですが、「無年金者も消費税を払っていて、税率アップの負担をしているのだから、税金を財源にした救済ならば、対象を年金生活者に限るというのはいかがなものか」という意見もあります。

個人的には、年金生活者支援給付金は年金だけが頼りの低所得者にとってはとても助かる制度として評価できると思っていますが、それよりも困窮している無年金者の救済についても、どうにかしていただけないものかなと思うところではあります。

さいごまでお読みくださりありがとうございました。

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前後の記事

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後の記事:障害年金は何歳までもらえるのですか【年金の常識9】

専業主婦になれば、国民年金の保険料を払わなくていいって本当ですか?【年金の常識7】


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第7回目の質問はこちらです。

 

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質問「専業主婦になれば、国民年金の保険料を払わなくていいって本当ですか?」

回答:必ずしもそうとは限りません。国民年金の第3号被保険者になることができれば、国民年金の保険料を払う必要はなくなります(その期間は、保険料を全額払ったものとして、将来の老齢基礎年金の受給額が計算されます)。

 

国民年金の第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者(夫など)に扶養される配偶者の方(20歳以上60歳未満)が対象です。

また、第3号被保険者になるためには、いわゆる「130万円の壁」の収入要件もあります。

収入要件とは、年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ①同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満、または②別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であることが原則です。

つまり、夫が会社員(第2号被保険者)で、かつ収入要件を充たす場合には、専業主婦は第3号被保険者となり、国民年金の保険料を払わなくてもよいということなのです。

ですので、次のような人は専業主婦であっても第3号被保険者にはなれません。

  • 夫が、自営業やフリーランス、非正規社員などで、国民年金の第2号被保険者ではない(会社員や公務員で厚生年金の被保険者ではない)
  • 自分自身に在宅の事業収入があったり、不動産収入があったりして、収入要件を充たさない
  • 自分自身が、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金を受けていて、収入要件を充たさない

このように、夫がどのような形態で働いているか、妻がどのくらい収入があるかによって、第3号被保険者になれるかどうかが決まるというわけです。

なお、第3号被保険者制度は、妻の場合にのみ適用されるものではなく、夫であっても適用されます。

 
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国民年金保険料をアルバイト先に半分払ってもらえますか?【年金の常識6】

いまさら聞けない 年金の常識(6) ~国民年金保険料の事業主負担

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第6回目の質問はこちらです。

 

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質問「国民年金保険料をアルバイト先に半分払ってもらえますか?」

回答:当然にはできません。国民年金には、厚生年金のように労使折半の制度はありません

 

この質問は、「社会保険料は労使折半」という制度をアルバイトの場合でも使えるのかという趣旨だと思います。

「労使折半」の労使とは、労働者と使用者という意味です。

そして、労働者とは、色々な定義がありますが、働いて賃金をもらっている人というものが一般的ですので、アルバイトも労働者に含まれるのなら、アルバイトの場合でも年金保険料をアルバイト先と折半できるのではないのかと思われたのでしょう。

しかし、この場合の労働者は、厚生年金の被保険者(厚生年金に加入している人)という意味で、アルバイト(労働者)であっても厚生年金に加入していない人(=国民年金を払っている人)はこれには含まれません。

逆に言えば、アルバイトであっても厚生年金の被保険者であれば、法律上当然に保険料は労使折半になるということです。

つまり、同じアルバイトであっても、厚生年金の場合には、厚生年金保険料は労使折半になりますが、国民年金の場合には、国民年金保険料は、全額が自己負担ということです

なお、アルバイト先が国民年保険料の半額相当額を賃金に上乗せして支払ってくれる場合もあるかもしれませんが、それはあくまで任意なのであって、法律上当然に請求できるものではありません。

最後に少し余談ですが、厚生年金の被保険者であれば、会社の経営者(一般的には労働者ではなく使用者)であっても、社会保険料は会社と折半になります。

この場合「使使折半」という方が正しいのかもしれません(そもそも「労使折半」は法律上の用語ではないので、あまり正確な表現ではないということです)。
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厚生年金しか払っていませんが、将来国民年金ももらえますか?【年金の常識5】

いまさら聞けない 年金の常識(5) ~厚生年金保険料と国民年金受給金額の関係

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第5回目の質問はこちらです。

 

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質問「厚生年金しか払っていませんが、将来国民年金ももらえますか?」

回答:はい、もらえます(資格期間が10年以上必要です)。厚生年金の被保険者は、原則として国民年金の第2号被保険者となりますので、その期間(20歳以上60歳未満)は国民年金の老齢基礎年金の受給金額にも反映されます

 

会社員などの厚生年金の被保険者は、国民年金の第2号被保険者となりますが、国民年金保険料を別途支払う必要はありません。

厚生年金の保険料には、国民年金の保険料に相当する部分が含まれているとお考えください。

国民年金保険料を支払う義務があるのは、自営業者などの国民年金第1号被保険者です

ただし、将来老齢年金をもらうには、保険料納付済期間(国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含む)と国民年金の保険料免除期間などを合算した資格期間が原則として10年以上必要です(ちなみに、平成29年7月31日までは、この資格期間が25年以上必要でしたが、法律が改正されて同年8月1日から10年に短縮されました)。

ざっくり言えば、厚生年金に加入していた期間と、国民年金の保険料を支払った期間などが合わせて10年以上必要というわけです(正確には、国民年金第3号被保険者であった期間や、ちゃんと手続きをとって国民年金の保険料の免除や猶予を受けた期間なども、この10年間には含まれます)。

この点、厚生年金と国民年金の加入期間が、それぞれ最低10年必要と勘違いされている人がいらっしゃいますので、お間違えのないようにお願いいたします。

合わせて10年以上あれば大丈夫です(必ずしも老齢基礎年金を満額もらえるわけではありません)。

逆に言えば、資格期間が合わせて10年にも満たない場合には、老齢年金は原則もらえないというわけです。

たとえば、会社員(厚生年金の被保険者)を5年間続けた後、自営業を始めて国民年金の第1号被保険者となった場合には、最低あと5年間は国民年金保険料を納めないと、原則として、国民年金だけでなく厚生年金についても、一切老齢年金はもらえなくなります

その場合、かけた保険料はもどってくるのかといえば、原則として、そのような制度はありません。

もったいない話ですが、掛け捨てになります。

せっかくかけた保険料を無駄にしないためにも、国民年金の保険料はしっかり納めましょう。

経済的に国民年金の保険料を納めることが困難な場合にも、免除や猶予の制度が使える場合もありますので、あきらめずに行政機関の窓口などで相談してみてください。
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親が亡くなったら、子が成人していても遺族年金はもらえますか?【年金の常識4】

いまさら聞けない 年金の常識(4) ~成人の子の遺族年金受給の可否

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第4回目の質問はこちらです。

 

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質問「親が亡くなったら、子が成人していても遺族年金はもらえますか?」

回答:もらえません。遺族年金の対象者には、国民年金の場合でも、厚生年金の場合でも、成人(20歳以上)の子は含まれていません

 

国民年金(遺族基礎年金)の対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた、「子のある配偶者」、「子(子とは18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の障害者に限ります)」です。

厚生年金(遺族厚生年金)の対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた、「妻」、「子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)」、「55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できます。)」です。

つまり、遺族年金の対象になる「子」というのは、18歳到達年度の年度末を経過していない者(ざっくり言えば高校生以下)か20歳未満の障害者である必要があるのです。

かつては、公務員等の共済年金制度においては、障害者の場合20歳以上であっても遺族年金の対象になっていた制度もあったのですが、平成27年(2015年)10月1日以降は被用者年金一元化によって、厚生年金の制度に統一されました。

親の年金を生活の基礎にしている成人の子(引きこもりや障害者などさまざまな理由はあると思いますが)は、親が亡くなっても、親の遺族年金をもらうことはできませんので、早めに経済的な自立方法を模索しておく必要があります。
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未成年でも、厚生年金の保険料は払わなくてはいけないのですか?【年金の常識3】

いまさら聞けない 年金の常識(3) ~未成年の厚生年金保険料

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第3回目の質問はこちらです。

 

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質問「未成年でも、厚生年金の保険料は払わなくてはいけないのですか?」

回答:はい、そのとおりです。20歳未満であっても、会社員(厚生年金の被保険者)であれば、厚生年金の保険料を払わなくてはいけません

 

たとえば、高校卒業後すぐに就職をして厚生年金の被保険者となったような場合、20歳未満であっても、厚生年金の保険料を払わなくてはいけません。

ここで間違えやすいのは、国民年金(第1号被保険者)の場合、20歳になってから保険料の支払い義務が生じる(20歳未満の場合には保険料は払う必要がない)という点です。

たとえば、高校卒業後に短時間のアルバイト(厚生年金の被保険者になっていない)として働くような場合には、20歳になるまでは、国民年金の保険料は払わなくていいということです。

厚生年金の場合と国民年金(第1号被保険者)の場合で制度が異なりますので、注意が必要です。

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このように回答をすると、さらに「厚生年金の保険料には、国民年金の保険料(に相当するもの)も含まれているということですが、20歳未満の期間は国民年金(老齢基礎年金)の金額には反映されないと聞きました。もらえない年金の保険料を払うのはいやなので、20歳になるまで、厚生年金保険料がその分安くならないのですか?」という質問をされることがあります。

もっともな質問だと思います(かなりするどい質問です)。

ただ、残念ながら、保険料が安くなるような制度はありません。

20歳未満であっても、厚生年金の保険料は20歳以上の人と同じ方法で計算します

20歳未満であっても、厚生年金の被保険者は、「国民年金の第2号被保険者」になっているのです。

もっとも、ご心配のように、20歳未満の期間が老齢年金の金額にまったく反映されないというわけではありません(老齢厚生年金には20歳未満の期間も全額反映されます)。

たしかに、国民年金の老齢基礎年金の場合には、20歳未満の期間は金額に反映されませんが、その部分は別に厚生年金の経過的加算という制度で反映されることになっています(ただし、経過的加算には上限がありますので、すべてが反映されるとは言い切れません。これは少し難しい話になりますので詳細は省略します)。
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親の扶養に入れば、子の国民年金の保険料は払わなくていいのですか?【年金の常識2】

今さら聞けない 年金の常識(2) ~被扶養者である子と国民年保険料の関係

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第2回目の質問はこちらです。

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質問「親の扶養に入れば、子の国民年金の保険料は払わなくていいのですか?」

回答:そのような制度はありません。原則として、子が20歳になれば、子の国民年金の保険料の支払い義務が生じます。

 

解説

この質問は、会社員の妻などが被扶養配偶者として国民年金の第3号被保険者になった場合に、国民年金の保険料を払わなくていいという制度を、子の場合にも適用できるのではないかと勘違いされているものと思われます。

国民年金の第3号被保険者になれるのは、配偶者などの場合で、子の場合には適用されませんので、子が20歳になれば原則として子の国民年金の保険料を払わなくてはいけません。

なお、間違えやすい制度に、健康保険の被扶養者制度があります。

健康保険の被扶養者には子も含まれますので、子が被扶養者の要件を充たす場合には、親の(勤務する職場の)健康保険の被扶養者となれます。

子が親の健康保険の被扶養者になった場合には、子が国民健康保険に加入する必要はありません。

厚生年金と健康保険は、意外と混同しやすいので、注意が必要です。

 

経済的な理由などで国民年金保険料の支払いが困難な人には、免除や猶予という制度が用意してあります。

国民年金保険料が「未納」とならないように、積極的に免除や猶予の制度を活用していただければと思います。

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保険料を払いたくないので、年金を辞めることはできますか?【年金の常識1】

いまさら聞けない 年金の常識(1) ~保険料支払い忌避による公的年金の辞退(任意脱退)

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今回から「いまさら聞けない 年金の常識」シリーズをスタートします。

社会保険労務士である筆者が受けた相談や質問から、意外と間違えやすい年金の仕組みを回答していくという企画です。

第1回目の質問はこちらです。

 

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質問「保険料を払いたくないので、年金を辞めることはできますか?」

回答:できません(国民年金、厚生年金)。

 

国民年金にしても、厚生年金にしても、要件を充たす人は加入する義務が法律で定められています。

公的な年金は、民間の保険のように、任意で入ったり辞めたりすることはできないのです(強制加入です)。

国民年金の場合は、原則20歳以上60歳未満の日本国内に住む人であれば強制的に加入しなければなりません。

厚生年金の場合は、常時従業員を使用する会社などの適用事業所に勤務している70歳未満の人で、臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除いて、就業規則や労働契約などに定められた一般社員の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上ある従業員は原則加入義務があります(また、所定労働時間及び所定労働日数が4分の3未満の従業員でも「短時間労働者」として加入義務が生じる場合もあります)。

厚生年金の保険料は給料から控除されるのが一般的ですので、それほど問題にはなりませんが、国民年金の場合は保険料を滞納すると、将来の老齢年金の額が少なくなったり(もらえなくなったり)、障害年金をもらうための資格を充たさなくなったり、強制的に差押を受けたりといった様々な不利益が生じるおそれがあります。

国民年金の場合、経済的理由などで保険料を払えない人には、保険料の免除や猶予の制度が使える場合もありますので、あきらめずに行政機関の窓口などでご相談されることをお勧めいたします。
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