
<スポンサードリンク>
ボードゲーム系社労士&FPの「とっくんセンセ」こと徳本です。
「とっくんセンセの お金と仕事 ゆとりの学び舎」2回目は、ある学生さんと雑談してて気づいたことをネタにしています。
それは、「20歳未満でも社会保険料を払うかどうか」という問題です。
これは「年金の常識(3)」でも取り上げたネタですが、今回はもう少し深堀りしてみました。
今回の相談者はBさん(19歳の全日制の大学に通う1年生)です。
保険料、払ったり、払わなかったり、どっちなんだい?

とっくんセンセ、ちょっと聞きたいんですけど。この前、高校のときのクラスメイトと会ったとき、その人が「給料から年金とか健康保険とかがっつり引かれてて、正直しんどい」みたいなこと言ってたんです。その時は「たいへんだよね」って話を合わせていたんですけど、私、年金も健康保険もお金払ってないんですよ。これって違法なんですか?

大丈夫、心配しないで。結論から先に言うけど、違法でもなんでもないよ。Bさんはまだ19歳の大学生さんだから、国民年金は払わなくていいし、多分、健康保険も親御さんの扶養に入ってるはずだからね。

よかった。安心しました。
でも、私の友達は同じ19歳なのに年金も健康保険も保険料を払ってるんですよ。じゃあ、友達の方がおかしいんですか?

ううん、それもおかしいことではないよ。そのお友達のことを正確には知らないから仮定の話も入るけど。そのお友達は「給料から引かれていた」って言っていたんでしょう?そうすると、それは会社員の人の「厚生年金・健康保険」のことだと思うんだよ。

はい、その人は高校卒業してから就職して、地元で働いています。
じゃあ、大学生は年金や健康保険料を払わなくていいけど、社会人は年金や健康保険料を払わないといけないってことなんですか?

うーん、それも正確ではないかもね。
まあ、本当に社会保険は制度が複雑だから、大人でもよくわかってない人も多いんだよ。とっくんセンセも偉そうなこと言ってるけど、大学生のころに社会保険のことなんて考えたことなかったよ。Bさんはちゃんと知ろうとしてて、感心する。
話を戻すと、一口に「(公的)年金」や「健康保険(公的医療保険)」と言っても、いくつかの種類があるんだ。ここでは大きく分けて、年金は「国民年金」と「厚生年金」、公的医療保険は「国民健康保険」と「(会社の)健康保険」のそれぞれ2つを押さえておいてほしい。もっと正確に言うなら、公務員のケースや75歳以上の後期高齢者のケースなど別の種類もあるんだけど、まずはこの4つが基本だからね。
会社員なら「厚生年金・健康保険」

うーん、もう複雑になってきました。でも、大切なお金のことだから、教えてください。できれば、わかりやすく。

まかせて!
まずは、わかりやすい方から行こう。会社員のお友達の方からね。
ざっくりになるけど、一般に「社員さん」と言われている会社員の人たちは、「厚生年金」と「(会社の)健康保険」に加入している。で、この保険料は「標準報酬月額」に応じた保険料を毎月の給料から控除(天引き)されているんだ。「標準報酬月額」ってのは、ここでは毎月の基本給+手当だと思っていいよ(正確ではないけど)。また、ボーナスからもこれらの保険料は控除(天引き)されるんだよ。
お友達が「正直しんどい」っていうのは、会社員なら「あるある」の話なんだよ。
で、この会社員が加入する「厚生年金・健康保険」は年齢に下限がないから、19歳であっても、入らないっていう選択肢はないんだよ。
学生は「厚生年金・健康保険」には入れないという誤解

なるほど。19歳であっても、会社員になったら「厚生年金・健康保険」はマストなんですね。
ってことは逆に学生は「厚生年金・健康保険」に入ることはできないんですか?

いや、そうとも限らないんだ。むしろ、条件を満たしたら、大学生であっても「厚生年金・健康保険」に入らなきゃいけない。こういった公的社会保険は、こちら側が入る入らないを決めることができない「強制加入」だからね。
で、その条件というのは、ざっくり言うと正社員の人の勤務時間と比べて、4分の3以上働いている人。この場合には、大学生であっても「厚生年金・健康保険」に入らなきゃいけない。これを「社会保険の4分の3ルール」って言ったりする。正社員が週40時間勤務なら、週30時間働いているアルバイトさんってイメージでいいと思う。たとえば塾の講師なんかでがっつり働いている人なんかだと、学生さんでもこれくらい働いていることがあるかもね。

そうなんですか。最近、大学生のアルバイトはアルバイト先の年金とかに入らなくていいってどこかで聞いたことがあるような・・・

それは、今話題の「106万円の壁」の撤廃ってやつかな? これは、厚生年金・健康保険の適用拡大といって、パートさんやアルバイトさんのような短い時間しか働いていない人であっても、収入を問題にせずに厚生年金・健康保険に加入してもらおうっていう制度のことなんだ。4分の3ルールに当てはまらない人たちだね。
で、たしかに、この「106万円の壁」の撤廃によって厚生年金・健康保険が適用される人には「学生ではない」って条件が入ってる。でも、これは「4分の3ルール」とは別の話。さっき4分の3ルールが週30時間勤務のイメージって話をしたけど、この「106万円の壁」撤廃の件は「週20時間勤務」というさらに短い勤務時間でも厚生年金に加入するって話なんだよ。
ついでにいうと、通信制や夜間の学生さんなどは「106万円の壁」撤廃の対象になるから、学生なら誰でも対象外ってわけでもないんだ。
まとめると、学生であっても4分の3ルールは適用されるし、通信制や夜間などの学生なら「106万円の壁」撤廃の適用もありうるってことだね。

いろいろ複雑ですね・・・まあ、私はそんなにたくさんアルバイトもしていないから、今のところ「厚生年金・健康保険」に入ることはなさそうです。
「国民年金」と「国民健康保険」は必ずしもセットではない

そうだね。じゃあ次に、Bさんのように「厚生年金・健康保険」に入っていない人のケースを考えてみよう。
まずは、年金から。
「厚生年金」ではないとすると、問題になるのは「国民年金」の方だね。
ところが、国民年金は「日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方」に加入が義務付けられているんだ。つまり、19歳のBさんはまだ国民年金に加入できないんだよ。

なるほどです。同じ19歳でも、会社員なら「厚生年金」に入らなきゃいけないけど、そうでないならまだ「国民年金」には入れないということなんですね。
じゃあ、同じように「国民健康保険」も19歳の私は加入できないのですか?

いや、そこは違うんだ。「国民健康保険」には年齢の下限はないんだよ。
ただ、Bさんの場合には、親御さんの会社の健康保険の「被扶養者」となっていると思われる。世間では「親の扶養に入る」なんて言い方もするね。
つまり、国民年金と国民健康保険は必ずしもセットではないってことだね。
そして、健康保険の「被扶養者」には保険料は発生しない。もちろん、親御さんはご自分の保険料をお給料から天引きされているんだけど、「被扶養者」が何人増えたとしても追加の保険料を支払うことはないんだよ。

え、親の保険料が上がるとかもないんですか? すごくお得な感じがします。

うん、そうかもしれないね。
ただ、扶養に入るためには、収入制限があったりといろいろな条件をクリアする必要がある。それに親御さんが会社員でない場合もあるだろうから、大学生なら誰でも親の健康保険の扶養に入ってるなんて単純に考えることはできないんだよ。
国民年金に被扶養者制度はない

わかりました。
まとめると、私が国民年金の保険料を払っていないのは19歳だからで、健康保険の保険料を払っていないのは親の扶養に入っているからなんですね。
あ、でも私、来年20歳になるんですよ。そしたら、国民年金はどうなるんですか? あ、もしかして、国民年金も「親の扶養に入る」ことができるんですか?

いいところに気づいたね!
そう、先ほど出たように国民年金は日本に住む「20歳以上60歳未満」の人に加入義務があるんだけど、国民年金には「厚生年金の被扶養者」といった制度はないんだ。ここが健康保険との大きな違い。
だから、大学生であっても20歳になったら国民年金には入らなきゃいけないし、保険料も払う必要があるんだよ。
ちなみに、とっくんセンセが大学生のころにこの制度が変わったんだ。とっくんセンセが大学に入ったころには大学生は20歳以上でも国民年金は任意加入(入りたい人だけが入れる制度)だったんだけど、平成3年4月からは大学生も強制加入になった。ってこんな思い出は話はどうでもいいね(笑)

そうなんですね。私、国民年金の保険料ちゃんと払っていけるんでしょうか・・・いくらくらいなんですか?

令和7年度は、1ヶ月あたり1万7,510円だね。
国民年金保険料、ちょっときついなと感じたらやること

わ、毎月1万7,510円ですか・・・払っていけるかな。

うん、決して安くはない保険料だよね。だから、ちゃんと払えるか不安に思う人は多いと思うよ。むしろ、ちゃんと払おうって思ってるBさんはしっかりしてる方だと思う。
でも、そのあたりは、国もちゃんと考えてくれていて、「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」というものを用意してくれてるんだ。特に学生さんには「学生納付特例制度」というのもあるからね。こういったことは大学でも対応窓口があると思うので、積極的に活用しよう。もちろん親御さんともしっかり相談してみてね。
絶対にダメなのは「放置」! せっかくいろんな制度があるんだから、ちゃんと賢く使っていってね。

とっくんセンセ、いろいろ教えてくださって、ありがとうございます。
正直言って、年金とか全然実感がわかないけど、私と同い年でも会社員の人は「厚生年金・健康保険」の保険料を払ってるんだってわかって、私ももっとしっかりしたいなって思いました。

Bさんは充分しっかりしているよ。
ほんと、若い時のとっくんセンセをタイムマシンで連れてきて、「Bさんを見習いなさい」って説教したいくらい。
社会保険は毎年のように何らかの改正もあるし、大人でも完全に理解できているって人は少数派だと思う。でも、社会保険はお金の問題として生活に直結する問題だから、もっとアンテナをはって、情報をアップデートしていかないといけないと思う。これからもわからないことがあったら、遠慮なく聞いてね。

(とっくんセンセが若い時のとっくんセンセに説教しているとこはちょっと見てみたいかも・・・)あ、はい、もっと勉強してみます!
さいごに
今回は、基本的なことを中心に国民年金、厚生年金、国民健康保険、(会社の)健康保険と4つの社会保険についてみてきました。
社会保険制度は本当に複雑で、専門家の社労士であっても毎年アップデートに追われるのですから、そうでない人たちがついてくるのは大変だろうなと思います。
なので、Bさんにはわかりやすさ優先で説明したつもりです。
その分、必ずしも正確ではない表現もありますが。
もしも山口県萩市・長門市・阿武町にお住まいか通学されている学生さんで、社会保険のこともっと知りたいって人がいらしたら、気軽に相談してもらえればと思います(もちろん無料ですよ)。
それではこれにて、とっくんセンセのお金と仕事 ゆとりの学び舎 その2 「20歳未満でも社会保険料を払う人、払わない人の違い」閉講といたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
<スポンサードリンク>

ボードゲーム系社労士&FP
とっくんセンセ
(徳本 博方)
ボードゲーム系社労士&FP
50代おひとりさま予備軍
「ゆとり・つながり・まもり」の3つの「り」メイクでおひとりさまのシングルライフステージをサポート
ボードゲームで楽しく「つながり」をつくり、キャリア相談・資産形成相談と年金サポートで「ゆとり」を、成年後見で最終的な「まもり」をお届けします
- 資格
- 社会保険労務士
- ファイナンシャルプランナー(2級ファイナンシャル・プランニング技能士・AFP)
- 宅建士
- 経歴
- 一般社団法人萩長門成年後見センター事務局長(現)
- 弁護士事務所パラリーガル(勤務17年以上)
- 山口県萩市出身
- 萩高校、慶応義塾大学文学部